第五話

 課題の発表も無事に終わったのだけれど、意外とグループでやっている人は多くなかった。山口は当然一人だと思っていたのだけれど、宮崎も一人で課題をやっていたというのは意外だった。山口は若林や河野と普段から一緒にいて仲がいいので一緒にやっているのだと思っていたけれど、若林と河野は西森たちと一緒のグループで課題をやっていたのだ。


「なあ、宮崎って一人でやってたみたいだけどあいつら喧嘩でもしたのかな?」

「さあな。宮崎の家だけ逆方向だから集まりにくかったとかじゃないか」

「そんな事ってあるかな。きっと喧嘩でもして落ち込んでるんだぜ。俺が後で泉ちゃんの事慰めたら今よりも仲良くなれそうじゃね」

「朋英って本当にブレないよな。宮崎は可愛いと思うけどそこまで熱中するほどのもんかね」

「馬鹿だな。泉ちゃんの良さは見た目だけじゃなくてその性格よ。信寛から聞いたけど、小学生の時も中学生の時も一人でいじめ問題を解決したって話だぜ。普通だったらそんな事は出来ないし、俺さったらいじめっ子に立ち向かったりしないもん。あんなに綺麗なのに心まで綺麗だなんて完璧すぎて俺はどうにかなっちゃいそうだ」

「すでにお前はおかしいよ。でもさ、そんな風に言っているけど宮崎って胸小さいじゃん。お前って巨乳好きなんじゃないの?」

「おいおい、女の価値を胸で判断するなんて頼之は失礼な奴だな。そんなものを越えた魅力が泉ちゃんにはあるってだけの話だよ。頼之は女を見た目で判断しないで中身も見た方がいいと思うぞ」

「俺も性格がいい方がいいと思うけどさ、若林みたいに胸が大きいのも魅力的じゃないか。顔はそこそこだけど、それを補って余りあるくらいの破壊力があの胸にはあると思うんだよ。この学校に水泳の授業があったら大変なことになってたと思うぜ」

「そうだな。若林って泉ちゃんの隣にいっつもいるから目立たないけど、あれはモテルタイプだと思うよ。それにさ、河野もギャル好きにはたまらない感じなんだろうな。俺は苦手だけど」

「朋英は昔から明るいやつが苦手だもんな。俺もあんまり得意じゃないけどさ」

「そうなんだよな。なんか無理してテンション合わせることも出来ないし、一緒にいると疲れちゃうんだよな。俺は頼之も信寛も陽キャじゃなくて良かったって思うよ。そんなんだったら俺は別のグループで行動してそうだしな」

「そうかもな。でもさ、信寛は陽キャでも俺たちの相手をしてくれそうだよな。それで、俺達も陽キャになってたりして」

「その可能性はあるな。信寛って頭は悪いけど性格は良いし、見た目だっていいもんな。もしかしてさ、俺たちの事を下に見てて引き立て役だとか思ってないよな?」

「そんなわけないだろ。引き立て役だったらもっと変なやつを選ぶだろ。お前らは十分にかっこいいと思うよ」

「何言ってんだよ。お前ってやつは」

「そうだな。お前は良いやつだよ。女だったら抱かれてもいいわ」

「俺の事も抱いていいぜ」

「あのな、俺はお前らが女だったら仲良くしてないと思うわ。やっぱり男と女じゃ付き合い方も違うだろ。お前らみたいに気楽に付き合える女はなかなかいないと思うし、お前らが男で良かったと思うよ」

「そうだよな。冷静に考えてみたら、俺みたいな女ってちょっと嫌かも。ごめんな」

「いや、そういう意味じゃなくて、お前らは今のままで良いってことだよ」

「ところでさ、信寛って宮崎の事がタイプじゃないとしたら、どんな感じの女が好きなのよ?」

「え、別にそういうのはいいだろ。特に無いよ」

「でもさ、泉ちゃんみたいに見た目も性格も良い女もダメで、若林みたいな巨乳もダメで、河野みたいなギャルもダメで、西森たちもダメって事は、もしかして早坂先生?」

「いやいや、それは無いでしょ。早坂先生が好きだったら信寛の事軽蔑しちゃうかも」

「うーん、考えてみたけど早坂先生は教師としか見てないな。一人の女として見ても、私生活がわからないから何とも言えないけど、無いわ」

「だよな。何となくダメな男に引っかかってそうな感じがするよな。優しすぎるし人を信じすぎるところがありそうだもんな」

「そうだよな。西森の話だって渡辺と吉井の話は聞いて山口の話はちゃんと聞いてないっぽいもんな」

「でもさ、山口が言ってることって真面目に聞いても意味わかんないし、ふざけてるんじゃないかって思われても仕方なくね」

「俺は西森を庇った時の言葉は噴き出しそうで焦ったわ。アレを他の先生の前でも言ったせいで学校中に広まっちゃったしな、それは西森に同情するけどさ、叩いたのは良くないよな」

「だよな。西森が山口を叩いたのは事実だし、その事実をかき消すためとはいえあんなことを言うのは良くないと思うよな。でもさ、それで西森が退学とかにならなかったんなら結果的にいい事したんじゃないかなって思うけどね」

「お、さすがは幼馴染だな。信寛って山口の事になると熱くなるところがあるな」

「そうだな。俺たちの知らない山口を知ってるってことだし、もしかして、信寛って山口の事を好きだったりしないよな?」

「そんなわけないだろ。もしそうだったとしても、山口が俺を好きになることは無いと思うし、俺はそんな報われない恋はしないよ」

「まるで山口の気持ちを知っているかのような発言。確かめたことがあるのか?」

「そんな事ないよ。ただ、そう思っただけだ」

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