第四話

 金曜日に出された課題を忘れていたのは俺だけではなかったようで、頼之も朋英もその存在を思い出したのは土曜の深夜になってからだった。一人で進めても良かったのだけれど、今回の課題は何人かで共同提出しても良いとのことだったので翌日三人で集まって何とかすることになった。きっと、何とかならないんだろうなとは思うんだけど、やるだけの事はやっておくことにしよう。


 翌日、空には薄い雲が多く広がっていたのだけれど天気は崩れ無さそうな感じで涼しく、課題をこなすにはちょうど良い陽気のように感じていた。


「なあ、今回の課題って何すればいいんだっけ?」

「この町の成り立ちとか調べるやつじゃなかったっけ。どっかの丸パクリでいいんじゃね」

「どうだろ。そんなことしたら他の人と被ってバレたりしそうじゃね?」

「確かにな。かと言ってこの町ってそんなに歴史があるわけでもないんだろうし、調べるにしても限界があるんじゃね?」

「それだよな。ただ、先生も言ってたけど地元を知るために調べる事に意味があるって言ってたし、丸パクリでもいいんじゃね?」

「それな。じゃ、良さそうなの探して三人の混ぜてみようぜ。でもさ、なんで手書き限定なんだろうな」

「それは、コピペしたら覚えないからじゃないか?」

「お、信寛って意外と真面目に考えているよな。俺はめんどくさいなってしか思ってなかったわ」

「俺も面倒だなって思ってたけど、頼之よりは真面目にやろうと思ってたぜ」

「お前らな、真面目にさっさと終わらせてゲームやりたい俺の気持ちも考えろよな」

「何だよ、信寛は真面目に課題をやりたいのかと思ってたら、ゲームやりたいだけじゃん。俺もやりたいけどさ」

「じゃあさ、俺んちでスマブラやろうぜ。今日は絶対に負けないからな」

「頼之ってゲーム好きなのに弱いもんな。今日もどうせボコボコにしてやるよ」

「あ、そう言えばさ、男子LINE見た?」

「見た見た。アレってどうなんだろうな」

「え、何かあったっけ?」

「おいおい、信寛ってホントLINE見ないよな。既読つけてないのはお前だろって思ってたけど、ちゃんと見といた方がいい事もあると思うぜ」

「え、どういうやつ?」

「なんでもさ、この前西森たちが山口と揉めてたじゃん。それで信太たちが男子全員で山口を無視しようみたいなこと書いてたんだよ」

「何だよそれ。人間としてクズ過ぎるだろ」

「そうだよな。俺もそう思って止めろよって書こうとしたんだけどさ、俺ら以外の男子は皆それに乗ってる感じだったんだよな。俺も朋英も良くないってわかってるんだけど、あいつらが盛り上がりすぎてて止められないんだわ」

「マジかよ。課題どころじゃないじゃん。それはさすがに何も悪くない山口が可哀そうすぎるだろ」

「まあ、何も悪くないってのは言い過ぎだと思うけど、確かにクラスの男子全員でいじめるのって良くないよな。早坂先生に言ったところでどうにもならないだろうし、生徒指導の寺田に言ったって意味ないもんな」

「とりあえず、さっさと課題を終わらせてゲームやってから考えようぜ」

「いやいや、ゲームよりそっちの方が重要じゃん」

「そうだよな。信寛と山口って幼馴染だから気になるよな」

「俺も美少女の幼馴染がいれば良かったんだけどな」

「あれ、頼之って山口の事を美少女だと思ってんの?」

「違う違う、“美少女の幼馴染”が欲しいって話だからな」

「ま、山口は小さい時から可愛いって感じではなくてカッコイイって感じだったからな。小学生の時は俺よりたぶん強かったと思うよ」

「強かったってゲームやりすぎてる奴の表現じゃん。でもさ、今でもメンタルは誰よりも強そうだよな」

「な、俺が山口の立場だったら西森をあんなにバカにした感じでいじったり出来なかったと思うわ」

「でもよ、アレはまじウケたな。西森が能力者とかありえないだろ。早坂先生も他の先生たちも戸惑ってたって聞いたもんな」

「え、アレって受け狙いだったの?」

「何だよ、信寛ってアレが本当だと信じてたんか?」

「いや、俺は単純に西森ってスゲーなって思っただけでさ、山口の事を信じたとかじゃないよ」

「また始まったな」

「ああ、信寛って山口の言ってることは真に受けるもんな」

「ホントホント、そういうところはまじウケる」

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