第24話
……な、何だったんだ?
パタンと閉じたドアを
「はぁ〜……」
「お疲れ」
流は苦笑いをしながらポンと由稀の肩を叩いた。
「悪かったな。騒がせちゃって……」
「いや、別に……。むしろ、見たことない由稀見れてちょっと面白かったぞ?」
笑いながら流が言うと、由稀は眉間に皺を寄せて渋い顔をする。それを見て、
「面白いって……」
はぁーと大きく溜息を吐いて、由稀はソファにどっかと座る。すっかり冷めたコーヒーに口をつけて、由稀は吐き出すように言う。
「
めんどくせーと呟きながら由稀は、少し伏せていた目線を流に向ける。
「
続けて、頭をガリガリと掻きながら「詳しい理由はわかんねーけど」と零す。
確かに。朔月のあの態度は『敵視』とみていいだろう。流や亜輝に対する態度とは明らかに違っていた。
「へー……?」
誰にでもなくつぶやくように言う由稀に、流は重くならないように相槌を打つ。
「顔合わせるとさっきみたいな言い合いになってさ……めんどくせぇ……」
心底嫌そうな声音で言って、由稀は再び深い溜息を吐く。
「まぁ……クラス違うし、学内で会うことも少ないんじゃないか?」
「……だと良いけど」
ふと目を向けた窓の外は、もう日暮れに近付いているようだった。
「流……そろそろ……」
「あぁ……」
翼に声をかけられて、流も頷く。。時刻は十八時を過ぎようとしているところだった。それを見て由稀も声をあげる。
「もうそんな時間かー」
「長居して悪かったな」
「んにゃ、むしろ助かった。亜輝に会うのもすげー久しぶりだったんだ」
由稀は苦笑いを浮かべて言う。
「一人だと何していいかわかんないとこだった」
その表情はどこか悲しい。事情はあるにせよ、由稀自身は弟である亜輝を決して嫌ってはいないようだ。
「知ろうとすることが、大事なんじゃないか?」
誰だって、人の心は分からない。だからこそ、知りたいと思って知っていくことが、お互いの距離を縮めることになるんだと思う。
……
そこまで考えて、流はふと翼の顔を見た。
……相変わらず、何を考えてるかわかんない顔してるな……
それでも何となく機嫌が良さそうなことがわかるのは、長い間側で見てきているからだろう。由稀と亜輝ももっと一緒にいる時間が増えれば、より分かり合えるだろう。
「あと、合わないヤツとはどうやっても合わないモンだよ」
流の脳裏に同じ寮生として一年以上を共にしつつも、顔を合わせると何やかんや突っかかってくる男の顔が浮かぶ。悪いヤツではないとはわかっていても、どうにも仲良くはできそうにない。
……
兄と比べられる弟の苦悩は流にもわかるつもりだけれど、
「そっか……まぁ……そうだよな」
上を向いて「ふぅーっ」と大きく息を吐いた由稀は、流に顔を向けるとニカッと笑った。
「ありがとな。月曜からは学校行くわ」
「ん。じゃあ、また学校でな」
「おう」
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