第17話 JKガチバトル

 根自子は悩んでいた。

 UFOというお題で何か書かねばならない。

 得意のバズーカで、ぶっ飛ばせるほどUFOがやわだとは思えない。そもそも、Sfぽい話は苦手だ。

 それより戦う女子が書きたい、といいながらいまだに果たせていないし。

 女の闘いというと、真っ先に思い出すのが紫式部と清少納言だ。

 これでも根自子は国文科を出ている。

 二人はライバルだったらしいが、ご主人筋がライバル関係だったのだ。

 紫式部が仕えた中宮彰子しょうしと、清少納言が仕えた中宮定子ていしが一条天皇の愛を争った。結局、「源氏物語」があまりに面白く、続き読みたさに彰子の元に一条天皇が通い、定子は敗れた。

 この話にUFOを絡ませるのは無理がある、舞台を現代に移してみよう。


 彰子女学院と、定子女子高等学校。同じ区にあり、レベルも拮抗する二つの女子高は長年のライバル、毎年、何かの分野で勝負してきた。

 しかし、スポーツはもちろん、囲碁将棋に至るまで、思いつくものは全てやってしまった。残りは何があるだろうか。両校の生徒会長は話し合うことにした。

 彰子側はゆかり、定子側が、せい。いろいろ検討した結果、今年はUFOキャッチャーで争うと決定。

 実は清は、これがめっちゃ得意なのだ。言葉巧みに採用する方向に誘導したのだった。


 当日。紫は悔しさに唇をかんだ。UFOキャッチャーに青春をかけている、と豪語する朋美が高熱を出し、リタイア。代わりに紫が出ることになってしまったのだ。

「私はちょっと」

 と渋ったが、清に、生徒会長で争うのがフェアじゃないの、と正論を吐かれ、仕方なく応じることに。

 ジャ二男子ぬいぐるみを制限時間内にどれだけキャッチできるかの争いになったが、勝負は、無残な結果となった。

 ほとんど経験がない紫は少しもゲットできないのに、清は次々と獲得。「はにわ男子」「すこーんず」など、続々キャッチしては、ぬいぐるみの山を築き上げていく。

 紫は、負けを認めつつ、新たな提案をした。

 お互い、先祖は有名な歌人でもあり、百人一首に歌が載っている。ここは、かるたで勝敗を決しよう、と。

 清は、ギクッとした。

 実は、百人一首は苦手なのである。

 絵札の歌を詠み、下の句が書かれた札を取る、しっかり覚えていないと難しい。

 しかし、歌人の子孫である自分が、苦手ですとは言えない。苦肉の策で、「坊主めくり」で決着をつけようと言ってみた。

 始めはごねていた紫だが、結局は同意した。


「坊主めくり」は、歌とは全く関係がない。

 絵札には、男性、女性、僧侶、の三種類がある。

 逆米をシャッフルして積み上げ、一枚ずつめくっていく。

 男性の札が出たら、そのまま手元に置ける。

 女性(姫)の札が出たら、相手の持ち札を全部ゲットできる。

 しかし僧侶、つまり坊主の札をめくってしまったら、今まで取った札をすべて相手に没収される。単純にして、なかなかスリリングなゲームだ。

「ねえ。蝉丸せみまるの扱いを、ちゃんと決めておこう」

「蝉丸?」

「これだよ」

 清は、その札を見せた。帽子のようなものを被っていて、他の男性や坊主野津だとは明らかに違う、これが終盤に出てきたら、オセロ同様、形勢逆転となるから、きちんと決めよう、と

「視覚障害で琵琶を弾いてたっていうから、坊主だよね」

「耳なし芳一みたいなもんかな。わかった、蝉丸は坊主ね」

 両校の生徒たちが見守る中、運命の「坊主めくり」が始まった。

 札を取ったり取られたり、行き詰る攻防が続く。

 蝉丸は、なかなか出てこない。ついに残り数枚になってしまった。

 紫と清の持ち札は、ほぼ同数に見える。さあ、蝉丸を引くのはどちらなのか!


<以下、次回に続きません>


【お詫び

あたがも決着が次回に続くような結末で、決着を楽しみにされてた方々に深くお詫び申し上げます。

根自子はもう、へろへろです。なじみのないUFOキャッチャーの描写ができず、坊主めくり対決に逃げたものの、どちらに勝たせるべきか悩んでしまい、思わせぶりな結果となりました。

勝敗は、皆さま、ご自由に想像していただければ幸いです。本当に申しわけありませんでした。】

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