無能の烙印

 そこから一週間。

 少しずつ内容の密度と練度の高さを増していきながら、七夜たち異世界召喚者は、『勇者軍』編制を目標として訓練を重ねた。


 訓練の内容は様々であり、宮廷魔導師団の団員による魔法理論の習得を目的とした座学に始まり、王国騎士団の団員による実践を想定した戦闘訓練まで。


 教官を担当した人間は誰しもが優秀だった。

 それまで平凡平和な生活しか送ってこなかった生徒達でも問題なく付いて来れるようなレベルで、それでいてきちんと能力が鍛えられるメニューを訓練に組み込んでくれた。


 そのお陰で誰一人としてリタイアする事などなく、最初の一週間を無事に乗り切れそうな具合であった。

 しかし訓練の日数を重ねる毎に、生徒の中で少しずつ練度に差異が出始めた。


 現在、最も飛び抜けた資質を見せ、他の生徒や訓練教官を驚かせていたのは、言わずもがな、光聖だった。


「――ハァッ!」


 裂帛の声と共に、光聖は右手に握る長剣を振り下ろす。

 刃の先にいた訓練相手の騎士は、愚直に迫る刀身に向けて己の剣を構える。

 二本の剣が激突し、火花が散った。直後、弾き飛ばされたのは騎士の持つ長剣であった。


 僅かの拮抗すら見せなかった。

 加えて光聖と相手の騎士にはかなりの対格差があり、中学生とは言え高身長の光聖が小さく見えてしまう程の巨躯だ。

 にも関わらず、光聖の振るった剣は騎士のそれを容易く弾き飛ばした。


「……流石ですね、クジョウさま。力比べには自信があったのですが、こうも簡単に圧されてしまうとは。たった数日で『原初の色ブラッド』の力を十全に扱えているとは、驚くばかりです」


 光聖の相手をしていた騎士が兜を外して、素顔を見せながらそう言った。

 それに対して、驕る事なく礼儀正しい物腰で首を横に振る光聖。


「いえ、まだまだだと思います。武器に魔法を纏わせる術は確かに会得しましたけど、今のままじゃ三分ももちません。それに、俺はまだ身体強化の魔法を覚えてはいないので、何だか武器に振り回されてる感が抜けませんし」


 そう答える光聖の長剣は、黄金色の粒子を帯びていた。

 これは光聖が会得した固有技能、『ルア』の魔法による効果だ。『原初の色ブラッド』と呼ばれるこの技能が発現した段階で、既に光聖は幾つもの魔法を使用できた。


 その中で、本来は使い勝手が悪いとされている魔法を、宮廷魔導師団の長であるフィルヴィスが、武器に纏わせれば良いのではないかと提案したのだ。


 聞くところによれば、かつて同様に『ルア』の資質を有していた王国最強の騎士、アルヴァ・ディ・ロンギネメアスも多用していた応用技法だと言う。


「……『悉くを浄化する黄の魔法フレイディーラ』。本当なら、精神汚染や悪性魔力の瘴気を消し去るくらいにしか使い道がない魔法です。それを武器に纏わせる事で、持ち主の力を何倍にも増幅させる。先代騎士団長のアルヴァさまが独自に見出した戦法が、斯様な形で役に立つとは……あの方も、きっと喜ばれるでしょう」


 憂うような表情を見せる騎士に、光聖は僅かに同様の色を顔に表し、しかしすぐに真剣な面持ちに切り替えた。


「ガレンさん、教えて下さい。そのアルヴァさんと今の俺じゃあ、どのくらい実力に差がありますか?」


 ガレンと呼ばれた巨漢の騎士は、その言葉に驚きを見せるが、光聖が至極真っ当な志で訊ねているのを理解すると、真面目な顔で思案した。


「そうですね……単純に数字で比較するならば、アルヴァさまは過去に行われた大戦にて、『悉くを浄化する黄の魔法フレイディーラ』を少なくとも半日以上は行使し続けていました。魔力の総量で言えばクジョウさまの方が上ですが、あの方は騎士であるにも関わらず、とにかく魔力の効率的な運用が得意だった。もし仮にクジョウさまがアルヴァさまと同じ領域に達したのならば、恐らくその魔法を一日近く使い続ける事が出来るのではないでしょうか?」


 使いこなせたのなら、一日。

 しかし今は、たったの三分。

 余りにも巨大な壁を眼前に見たような気がして、光聖は思わず気圧されかける。

 だが、ごくりと生唾を呑み込み、怯みかけた心を固定すると、雑念を振り払って瞳に強い光を宿した。


「分かりました! 俺、絶対にアルヴァさんと並べるくらいに強くなります! なのでもう一度、手合わせをお願いします!」


 一度、長剣の金光が途切れる。

 再び魔法を行使し、先程よりも強い光の粒子を刀身に纏わせ、光聖は力を込めて言った。

 まだ覚えたてで余裕のない構えを取る彼に、ガレンは弾き飛ばされた剣を拾い上げながら、困ったように笑う。


「はっはっは、強さに邁進まいしんするその姿勢は感服しますが、あまり謙遜をなされば、今のクジョウさまにすら勝てない私の面目がありません。あまり焦らず、ゆっくりと力を身に着けていれば宜しいでしょう」


 そう言いながらも、巨漢の騎士は臨戦態勢に入る。


「ですがまぁ、調子を見る為と言って手加減をするような真似はしないので、悪しからず。次は私が様々な搦め手を含めて襲い掛かりますので、それを全て対処して頂けますか?」


「はい!」


 そうして光聖とガレンは再びぶつかり合った。

 既に周囲とは別次元の戦闘を繰り広げる二人に、周囲の生徒達は呆気に取られて眺めるばかりだ。誰しもが訓練用の木剣を使用しているのに、彼等だけ当たり前に真剣を使用している点だけで、光聖の突出ぶりが窺えるというものである。


 ――七夜もまた、訓練場の端で地面に座り込み、苛烈な訓練をする光聖を遠目から見ていた。

 近くに生徒や教官の姿はない。彼はただ一人、訓練を積むクラスメイトから離れて皆の様子をじっと眺めていたのだ。


「いやぁ、何か皆すごいなぁ。あんなバンバン魔法使って、剣振り回して……何でそんな早くに順応しちゃうんだろ。僕達、まだここに来て一週間だよ?」


 誰にともなく独り言を呟く。

 彼の傍には質素な木剣が転がっており、他の生徒達が使っているものと比べて、損傷や汚れの程度が少ない。

 それはつまり、この木剣を使用した回数が、周りの者達よりも少ないという事だ。


「……僕、この訓練に参加する意味あるのかな。昨日も今日もずっと端っこで座ってるだけ……午前中の座学はまだ楽しいんだけどなぁ」


 七夜はここ数日、一日の後半に行われる戦闘訓練を休んでいた。

 別に、彼としても休みたくて休んでいる訳ではない。これにはきちんとした理由があった。

 その理由とは――、


「あっれぇ? 斯波くんってばそんなとこで何してんのぉ? 皆が頑張って訓練してんのに自分だけサボりとか、秀才の斯波くんがワルになっちゃった~! きゃははは!」


 甲高い声が聞こえてきて、七夜はとことんまで嫌な顔を浮かべた。

 声の方へ視線を向ける事はしない。

 その場に座り込んだまま、あくまで皆の訓練する姿を眺めているような姿勢を貫く。


 素知らぬふりを続ける彼の許へ、複数名の女子生徒がぞろぞろとやって来た。

 いつも光聖の後ろをついて回っている取り巻き達だ。


「なぁ斯波さぁ、やる気ないならどっか行ってくんない? 全員頑張って強くなろうとしてんのに、お前がやる気ない顔してそこに座ってると気合い入らねぇんだわ。正直目障りだから今すぐ消えろよ」


「違うよ玲香~、斯波くんはやる気がないんじゃなくて、やる気があっても全部空回りしちゃうだけなの~! だって一週間経っても簡単な生活魔法一つ覚えらんなくて、体力も無いから碌に剣も振り回せないんだよ? 訓練頑張ろうとしても無理だって事、斯波くんが一番よく分かってるんだから~」


「てかさ、低ランクの魔法一つ覚えられないとかヤバくない? どんだけ才能無いんだって話だわ。馬鹿でいっつも赤点だった佐伯さえきも、カースト最底辺のオタクだった長内おさないだってもう幾つも魔法覚えてんのよ? なのに斯波くんだけ一つも魔法使えないとか、一蹴回ってウケてくるんだけど」


「ウケんのは当たり前っしょ! ドデカイ魔力持ってるくせに何の使い道も無いとかマジウケる~! アンタってお勉強得意じゃなかったの? 自慢のお勉強でいい加減何か魔法覚えなよ~、何なら私達が教えてあげよっか~?」


 そう言って取り巻きの一人が、七夜以外は全員覚えている魔法の一つ、『火を灯す魔法フィエラ』を唱えた。

 術者が思い浮かべる任意の箇所に、蝋燭の先程度の火を出現させる魔法だ。


 殺傷能力はゼロ。使用魔力は最低量だが、極小の火を生み出すだけの魔法なので、碌に魔法を使えない者が焚火を起こすような時にしか使えない。


 とは言え、小さくとも火である以上、人体に触れれば間違いなく火傷を負ってしまう。


 女子生徒が掲げる右手の人差し指に小さな炎が灯った。それを七夜に対して近付けながら、分かりやすく嘲るような笑顔を向けてくる。


「色々勉強するより身体で覚えた方がいい事もあるもんね~? 一回自分で魔法受けてみたら、どんなのか分かってあっさり覚えちゃうかもよ~?」


「きゃははっ、杏奈あんなそれグッドアイデアー! ほらほら皆ぁ! 期待外れで無能な斯波くんが魔法を覚えられるよう、全員で協力したげよー!」


「はーい!!」


 取り巻きの一人が発した台詞を合図に、その場にいた全員がそれぞれ魔法を詠唱し始めた。


 火の玉、水の鞭、風の刃、石の礫。

 使用されている魔法はどれも最低ランクで、例え人間に向けて放ったとしても死ぬ事は無いが、簡単な防御魔法すら覚えていない七夜がその全てを身に受ければ、少なくとも無傷では済まないだろう。


 流石の七夜も狼狽える。

 この数日、こうして彼が訓練場の隅でする事も無く休んでいると、決まって彼女達が侮蔑と嘲りの表情で以て絡んできていた。


 今まではひたすら言葉で罵ってきてばかりだったが、日本にいた頃には持っていなかった魔法という超常の力を得た所為だろう、まるで冗長したかのように苛烈な行為に及び始めたのだ。


 生身の人間に対して魔法を放つ行為に、彼女等は何の疑問も躊躇いも抱いていない。

 平気で人を傷付けようとするその姿を見て、七夜は恐ろしいと感じた。


 他のクラスメイトは訓練に夢中で、こちらの様子に気付いていない。

 逃げようとしてももう遅いだろう。

 狼狽する七夜の見据える先で、少女達が笑い声と共にそれぞれの魔法を容赦なく放つ。


 出来た事と言えば、己の身を守るように身体を丸める事だけだった。

 刹那の後に襲い来る衝撃や激痛を予感して、無意識に全身へ力を込める。

 しかし、放たれた火球や風刃が七夜に直撃する事はなかった。


 直撃の寸前、七夜と魔法の間に、突如として土の壁が形成されたからだ。


 ガアアァァンッ!! という轟音を伴い、全ての魔法がその土壁へと激突する。激しい土煙が生じるが、相当な厚さを持つ壁は全くとして壊れる事無く、取り巻き達の放った魔法を尽く防いで見せた。


「はぁ……!?」


 取り巻きの一人が驚愕の顔を顰める。

 複数人の魔法を同時に受けても、あの土壁はビクともしなかった。それはつまり、あれは彼女達の行使する魔法よりも上級のレベルにある代物だという事だ。


 困惑する彼女達の耳に、一人の少女の声が入り込んできた。


「そこまでにして。流石に魔法をクラスメイトに向けて使うのはやりすぎ。遊び半分でもやっちゃいけない事だと思うよ」


 取り巻き達と、そして七夜も、声のした方向を向く。

 そこにはいつも寝惚け眼で無表情な少女、蘇芳奏が立っていた。


 この世界では使える筈もないのに、それでもトレードマークのようにヘッドホンを首に提げている彼女は、両手を地面につけた姿勢から立ち上がりながら、相変わらず無感情な声で続けた。


「斯波くんは防御魔法も使えないんだから、例え生活魔法一つでも、取り返しのつかない怪我をする事だってある。もしも火の魔法が目に当たったりでもしたら、斯波くんは失明しちゃうんだよ? そんな事も分からないの?」


 無機質で淡々とした口調の言葉は、聞いていると少しだけ、相手を煽っているようにも思えてしまう。

 ゆえに集団の一人が、奏に対して憤るように叫んだ。


「う、うるさいなぁ! 横からしゃしゃり出てきてあんまり調子乗らないでくんない!? 失明したからってそれが何よ! この王宮には回復魔法が得意な人がいっぱいいるんだし、目が潰されたってちゃんと治してくれるでしょうが!」


「だとしても」


 奏が被せるように言葉を返す。


「その魔導師さんが治癒してくれるまで、斯波くんは痛みで苦しむ事になるよね? あなたは目を焼かれた経験でもあるの? ないからそんな事言えるんだよね? だったら自分で試してみれば? そうすればそんなふざけた事なんて言えないと思うから」


 彼女の言葉、そして目には不思議な圧があった。

 取り巻きの少女達が、それに気圧されるように数歩後ろに下がる。それでも歯向かおうとして口を開きかけた者に対して、奏はちらりと視線を横に逸らして言った。


「とりあえず、貴女たちはすぐにでも何処か言ったら? さっきの爆音で他の皆もこっちの様子に気付いたみたいだし」


「っ!?」


「大好きな王子さまはまだ気づいてないみたいだからいいけど、時間の問題。大ごとになる前に早く引き下がったらどう」


 先程、少女達の魔法と奏の土壁が激突した際に生じた轟音により、訓練に集中していた生徒達の大半がこちらの様子を窺っていた。


 最も離れた位置にいる光聖だけは、未だ苛烈な戦闘訓練を続けている。

 それを見て、先ほど奏に噛み付いてきた少女は強い歯軋りの音を鳴らした。


「……いくわよ!」


 一度奏に向き直って、彼女がずっと無感情に自分を見据えている事に気付くと、その女子生徒は周囲の者達にそう告げて、逃げるように訓練場を後にした。


 勿論、立ち去るその寸前に七夜を射殺さんばかりに睨み付ける事も忘れずに。


 彼女に引き連れられて、女子生徒の集団は訓練場からいなくなった。

 無事に嵐が去ってくれて、七夜は深い嘆息を洩らした。


「助かったよ、蘇芳さん。魔法で防いでくれなかったら、僕は今ごろ痛みにのた打ち回ってただろうね」


「……君はもっと自分を大切にするべきだと思うよ」


 言いながら、彼女は両手に嵌めたグローブを気怠そうに外した。グローブの表面、手の甲の部分には魔法陣が描かれている。


「あの子たちが斯波くんのところに行くのを偶然見てたの。念の為、魔力増強のグローブを嵌めてて良かったよ」


 奏の言う通り、彼女の持つ指抜きのグローブは、装着者の魔力を一時的に増強する能力を備えた魔道具であった。


 ――そもそも。

 蘇芳奏に発現した固有技能は、『錬成アルキミスタ』。


 任意の対象を思うがままに変形させる事が出来るだけの能力だが、似たような魔法を会得している者ならば王国内に数百人単位で存在する。


 しかし、彼女のように技能としての『錬成アルキミスタ』を会得している者は、片手で数えられる程度。希少の度合いで言えば、光聖の『ルア』に匹敵するとさえ言われているのだ。


 劣化版の魔法を持つ者は、どれだけ極めても最上級の魔剣を鍛造出来るのが関の山であり。

 しかし、『錬成アルキミスタ』の技能を持つ者が真髄を極めれば、


 本来であれば職人系の非戦闘魔法。

 しかし固有技能として発現したその魔法は、完全なる殺傷系統魔法に分類されている。

 それを、この蘇芳奏という少女は会得したのだ。


 とは言え、未だ能力に魔力の総量が追い付いておらず、魔力増強の魔道具を使用しなければ満足に魔法を行使できない始末。

 先ほど見せた土壁も、魔道具による補助を受けてようやく形成出来たのだろう。


「……何か、ごめん。貴重な魔道具を使わせちゃって。それ、一回使う度にちゃんと魔力を充填しなきゃいけないんでしょ?」


 七夜がそう言うと、奏はきょとんとした顔を見せた。


「え? 別にそれくらい簡単だからいいよ。そんな事で謝るなんて、やっぱ斯波くんって優男なんだね」


 魔道具のグローブを仕舞い込みながらそう答えた彼女は、相変わらず茫洋とした瞳を訓練場の中央で訓練をしているクラスメイトに向ける。


 とうに七夜達から興味を無くして自分達の鍛錬に集中している彼らを眺めながら、不意に奏はこんな事を行ってきた。


「あ、じゃあね。助けたお礼って訳じゃないんだけど、今日の夕食後に私の部屋まで来て。癖でずっと鍵は開けてるから、もし私がいなくても勝手に入ってていいからね」


「えっ!?」


「じゃあよろしく」


 それだけを告げて、奏は訓練に戻っていった。

 七夜に何かを言う時間すらなかった。唖然とする彼の視線の先で、奏が訓練を再開した。


 錬成の技能を用いて周囲の地形を次々に隆起させてゆく様は、とうに彼女が、遠い存在になってしまったのだと七夜に痛感させた。



     *



 訓練が始まってからの一週間。

 その数日は、七夜も他のクラスメイトと同様に懸命に訓練へと励んだ。

 魔法が発現するきっかけは様々だった。

 少しだけ走力が上昇した事で新たな魔法を会得した者もいれば、限界近くまで呼吸を止めただけで希少魔法に目覚めた者もいた。


 そんな中で、七夜だけは何故か、何一つとして魔法を会得出来なかった。

 クラスメイト数名に聞いて、その者に魔法が発現した状況を焼き直ししても、七夜が魔法を習得する事はなかったのだ。


 簡単な生活魔法一つすら会得出来ない。

 加えて、訓練に伴って上昇する筈だった魔力の数値も、ずっと停滞したままだった。


 魔力の初期値が〝3100〟だった光聖は、一週間もの訓練を経て、〝3600〟にまで数値を増やしていた。

 にも関わらず、七夜はどれだけ訓練を重ねても初期値の〝6400〟。


 何らかの魔法的作用が阻害して、七夜の成長を止めているのかという意見も出た。

 しかし、王国最高峰の魔導師が検査しても、七夜の中に魔法的要因は何ら見つからなかった。

 それゆえに、一切として成長が見られないのは、七夜自身に素質が無い為との判定が下されたのである。


 一週間訓練を重ねても、何一つとして魔法を覚えられなかった事。

 そして本来であれば徐々に上昇し続ける魔力値が、ずっと不変であった事。


 それらの事実が、斯波七夜という少年の蔑称を、〝期待外れ〟から〝無能〟へと変えた。

 既にクラスメイトどころか王宮内で、斯波七夜は無能だという噂が広まってしまっていた。

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