第45話 授業

数か月前、クミの通う千鳥ヶ淵学園1年A組の言語文化の授業中。


「…いいですか、今日は平安時代の文化について授業をしていきます」


赤木ルナ23才、独身、職業教師、茶系の長い髪とかわいい顔で生徒から大人気である。高校で国語特に言語文化という科目の教師をしている。といっても産休代替教員さんきゅうだいたいきょういん

歴史、特に平安文化が大好きで、その頃の文学や風俗に触れるのが大好きな女子である。学生時代は弓道部に所属し、大学時代には全日本で優秀な成績を上げるほどの弓の名手でもあった。


「この平安時代中期に紫式部、清少納言、紀貫之など、優美で技巧的な作品が多く生まれました」

「これらは貴族世界を優美に彩り、現代における『バブル時代』を彷彿させる『時代背景』を画いているのですが、果たしてそれは、事実だったのでしょうか?」


黒板・歴史背景における文化とその指向性についてと書いてある。


「では、この時代背景を見てみましょう」

『摂関』や『関白』地位を独占した『摂関政治』は結果、貴族の独占社会となっていきました。」

「豪族は土地などを『賄賂』として『寄付』し、その地位の確立に躍起になり、各貴族は先祖を英雄化し、自分の血を高めるために眉唾物の物語性の強い武勇伝を作り上げ、その行いの正当性を主張しました」

「ここで登場するのが『鬼』という創造生物です」


「ここで例に挙げるのは大江山の鬼退治で有名な『源頼光みなもとのよりみつ』という人物です」

「彼は庶民の間の英雄ともなり、歌舞伎、著書など多くの作品が作られてきました」

「彼の作品は『政治』をより円滑に動かすための役割として大いに役立ったとされています」


「ではそれを作り上げなければいけなかった理由は何でだったのでしょう?」

「敵の認識、人でない何かを作り上げることにより『外交』工面に配慮し、なおかつ国民の不平不満を反らす口実が必要だった事に他ならなかったのです」

「想像された物語は、自国の『血の正当性』を信じ、政治を『神の言葉』と受け取り、疑問を打ち消しました」


「ねえ・・・クミ」

「起きなさいよ!」


「これは『古事記』や『日本書紀』の創造から始まり、目に見えぬ『不可思議』は説得力を得ていたのです」

「いわゆる国民の『マインドコントロール』がかつての政治の不可欠要素であり、それは今だに現代にも残っているということです」


「クミってば!」

「ウ~~ん。もう食べれない・・」


「何寝ぼけてんのよ!」


「・・・では『堂本クミさん』」


「政治と宗教の関係性とそれによって起きた文化の発展を述べてください」


「ひあ!?」


起きるクミ。


「あ~~~と・・・。わ、わかりません。」


「ばか・・・」


夢珂ゆめか、何でしてくれないのよ!」


夢珂とはクミのクラスメイトで親友の如月夢珂きさらぎゆめかである。

実は五行陰陽師に属する月の四女の一人であり、クミを守る任務に就いているであったのだが、本当に親友になってしまい、任務を忘れてしまうことが多い。


「歴史の授業は好奇心と創造で読み解くものです」

「夢見ていたあなたはざぞかし創造力が豊富だと見込んだのだけど・・・」

「平常点マイナスになるとテストが大変ですよー」


周囲のクラスメイトが大笑いした。


「ちょっとー!みんな笑わないで!」


クミは恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になっていた。


「ところでクミさぁ、さっき先生が言っていた源頼光って人の絵ってクミの神社に奉納されてるんだよね?」


「あつ、聞いたことあるよ。私は見たことないんだけど、たしか・・今度の氏神祭りの準備の時にミナト兄ィが焦がしちゃったやつかも」


「なんですってー!!!!!」


赤木ルナ先生が鬼の形相でクミに向かってきた。


「堂本さん、後でお話があります」

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