第36話 共同壊滅作戦4

口鬼は腕からは大量の出血をしており、このままでは数分で意識がなくなると判断した。


「タクマ、確かお前炎を使うよな。出血が酷くこのままじゃ後数分しかもたねえ。お前の炎で傷口を焼いてくれ」


「そんなことしたら、痛みでショック死するかもしれないよ」


ツナが心配そうに言った。


「お前この状況見ろよ。バカでかい餓鬼1体と、無数の雑魚餓鬼、出血で瀕死の俺とお前、ほっとけば俺は死ぬ、出血を止めれば戦えるかもしれない。生き残るためにはどっちをセン選択するかはバカでもわかるだろ?それにガスレンジでも温度調節ぐらいできんだから、」


「わかったよ。やればいいんだろ! 後で文句言うなよ」


「ツナ、やるぞ」


タクマは背中の刀を抜くと、ツナが炎となり、刀に炎が纏う。タクマが刀のを傷口に押し付けた。口鬼はかつて経験したことのないほどの痛みを堪えた。


「大丈夫か口鬼・・・」


「ちったー痛かったけど、出血さえとまりゃ問題ないさ。雑魚は俺が一掃するから、タクマはあのデカ物なんとかしてくれ」


「OK! 俺の心に火がついたぜ」


口鬼の攻撃は蹴りである。その動きはカポエラに似ていて、流れるように繋がり、どこから飛んでくるか予測できない攻撃であった。通常の肉体であれば一撃で肉片になるほどの威力である。


「うりゃりゃりゃりゃりゃー」


口鬼は止まることなく、餓鬼を粉砕していった。


「やるじゃねえか」


タクマは口鬼を横目に、巨大餓鬼の前で構えた。巨大餓鬼は咆吼ほうこうを発し鋭い爪を振り下ろす。タクマは上手くタイミグを図り懐に入り込み一瞬にして炎を纏う刀で斬り上げた。巨大餓鬼は大きく後方へのけぞる、続いて上空で反転落下しながら、肩口から切り下ろすも、皮膚すらも傷ついていなかった。


「なんて硬さの皮膚だ。この巨体になると、このにんげんのからだでは無理かぁ。どう思うツナ?」


「やっとボクの番がきたの?最初からそうすればいいのに」


刀に纏っていた炎がすっと消え、タクマは刀を鞘に納め、一呼吸間を置いた刀を抜いた瞬間、炎の竜が舞い上がるようにらせん状の炎がタクマを包んだ。


「業火ヲ纏イ、無二帰ス。ライコウ四天王筆頭 ワタナベノツナ覚醒」


炎を纏った巨大な鉈状の刀を右肩に担ぎ、左手のひらの上には炎の玉が浮いていた。


「やっと出てきたね、渡辺綱。今この手で殺して上げるから。お前は絶対許さない」


タクマを監視し追ってきた謎の人物は新宿中央公園を見下ろすことができるビルの屋上で餓鬼との闘いを傍観していたが、ワタナベノツナ覚醒の姿を見て、両先端が鋭い刃になっている弓矢を構えようとしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る