第30話 紅い龍と老人

新横浜上空、紅い龍は何かを確認するかのように2回ほど旋回し、北方向へ向かった。紅い龍は4本の手足で器用にミナト達を掴んでいたが、あまりの恐怖のためミナトはまた気絶していた。しばらくすると紅い龍は降下し、全員をミナトの神社である神鳴氷川神社へ降ろした。タクマは受けたダメージが大きく、しゃがみ込んだ。

ミナトはタクマの姿を前に、自分が強ければタクマを助けられたと、自分を責めた。


「ボクが強ければタクマ兄ィを助けられたかもしれない・・・」


「お前、かっこよかったぞ。あんな化け物を前にして俺を守ったじゃないか」


「タクマ兄ィ・・・」


ミナトは半べそをかいた。


紅い龍はゆっくり地に足を付けると、一瞬にして1人の老人に姿を変えた。それを見たミナトはもう何がなんだか分からなくなっていた。


老人はニコニコしながら、ツナとタクマに声をかけた。


「酷くやられましたな」


タクマは助かったと礼を述べた。


「ジジイ、まだ生きていたのか?」


ライコウは、乱暴な言葉使いで、老人に,嬉しそうに言った


ミナトは老人に誰なのか問うと。

老人は名を紅龍厳端こうりゅうげんぱ、今は自分1人になった龍の一族、かつてはライコウ殿とともに鬼と戦ったものと話した。


「おじいちゃん。久しぶりね」


「おぅレイナ、わしももう年じゃそろそろ戻ったらどうじゃ?」


レイナは慌てて咳払いをし、続けた。


「ところで、なんであんなグッドタイミングで現れたわけ?」


紅龍はある男を追っていたら、偶然にもあの現場に遭遇したと話した。レイナがすかさず先ほど拾った紙の破片を紅龍に渡した。


「これ、さっき覚醒ツナが魔物を斬ったときに落ちてきた破片なんだけど。おじいちゃんなんだか分かる?」


紅龍はそれを見るなり“やはり”、と険しい顔になった。


「最近多発する邪気や餓鬼の出現、先ほどの事件といい、あの御方が関係しているのは間違いない」


ミナトは何のことかさっぱりわからない表情していた。


「それ式神だろ? それも悪業罰示式神あくぎょうばっししきがみ。晴明の仕業か...」


ライコウはつぶやいた。


タクマはゆっくりと立ち上がりながら言った。


「先ほどのくじょうの力は姿は違えど、酒呑童子の力だ。俺やミナトのように、最凶最悪の神鬼が復活していてもおかしくはないが、晴明と奴らが繋がっているとは信じられない」


「そのことについてじゃが、お主たち話しておきたいことがあるのじゃ。すでに知っていることもあるかと思うが真実を聞いてくれ」


紅龍は1000年前のある盟約とその後の世界、晴明と最後に交わした話をし始めた。

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