第28話 横浜事件4

燃え盛るような赤い髪、あらわにされた締まった筋肉質の上半身、純白のと漆黒の裾の広がった2層の行燈袴あんどんばかま、外側の漆黒の袴には十数本の剣が装着されている。左腕にはクワガタの顎を模したプロテクトアーム。身長程あろう大鉈おおなた状の刀を右腕一本で軽々振り下ろす。


「この数きりないな・・・ 本来純血種は害がない限り切らないんだが、この密度魔物だけを斬るのは無理だな」


「悪いレイナ、まとめて斬らせてもうよ」


覚醒ツナは刀を下方に持ち替え低い体勢に構えた。


鬼切丸おにきりまる 壱の業火ごうか 飛炎連撃ひえんれんげき


地面を蹴り上げると同時に刀から後方へ激しくジェットエンジンの如く炎が噴き出し推進力をなし一気に加速。次々に魔物、鬼を斬っていった。刀を振る度に炎が噴出し、さらに加速やターンをしていく。


「一つ、二つ、三つ、四つぅ・・・」


この技は敵の配置や、移動、攻撃を俯瞰的に瞬時に予測、把握し一筆書きのように切れ目なく敵を倒していく覚醒ツナの必殺技である。


「ほぉー さすが俺様の筆頭家臣。“飛炎連撃”、いつ見てもその速さ、切れ味見事なもんだ。小僧も良く見とくんじゃぞ」


ライコウに引っ張られて無理やり連れてこられたミナトは気を失ったまま呆然と立ちつくしていた。そもそも魂は躯を制御しているので繋がっていので躯は魂について行ってしまう。

※タクマのように躯の陰陽力が高ければ、魂とは別行動はとれる。


「ちょっと何で入ってくんのよ!待ってて言ったでしょ」


レイナはライコウを睨みつけた。


覚醒ツナは魔物、鬼を壊滅させ、地面を滑るように反転しレイナやミナトのいる場所へ戻った。

その瞬間、覚醒ツナに衝撃が襲った。瞬時に左腕のアームプロテクタでブロックはしたが、その腕の骨は砕かれていた。覚醒ツナが苦悩の表情で前を上げると数メートル先に九条が立っていた。九条は不適な笑みを浮かべていた。


「さすが四天王筆頭渡辺綱」


九条は覚醒ツナの強さを褒めた。


「お前、何者だ!?」


「お忘れですか? とても残念ですよ。ツナさん。あなた方が現れてから、頭がガンガンするんですよ。頭の中の遺物アレが暴れだして」


九条は頭を押さえながらささやいた。


「貴方の意志は私が引き継ぎます。私に貴方の力をお預けください」

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