第24話 タクマの決意

ミナト宅の居間。6畳ほどの広さで6人ほどが食事ができるようなローテーブルにミナトとレイナは正座して向かい合っていた。年期の入った腰高の茶箪笥ちゃだんすの上に20インチほどのテレビが、その横には小さ目の仏壇があった。レイナが出されたお茶を飲もうとした時、居間の扉が“バンっ”と開き魂のツナが入ってきた。


「おーレイナ。来てたんだ」


「あれー? タクマと一緒じゃないの?」


「そうなんだよ。なんか用事があって2,3日帰らないから、ここに居ろっていわれたんだ。ライコウも戻ってきたから、この世の先輩として色々指導してるところよ!」


「誰が先輩だとぉおお?」


ライコウも部屋に入ってきた。


「ツナ、このねぇちゃんと知り合いなのか?」


ここでミナトが言葉を挟んだ。


「レイナさんはタクマ兄ィとはどういう知り合いなんですか?この前タクマの電話から変なお経みたいの流して男の人を鬼から人間に戻したのレイナさんですよね?それに何でこの魂が見えるんですか?」


「質問が多いわね。タクマと私は『五行陰陽師』という組織に属してるの。もう見たと思うけど、鬼とか魔物とか異形の物を追っているの。私はミナトくんと同じで神社の娘で、生まれた時から人には見えないものが見えていたんだ。タクマはね、ある事件をきっかけで組織に関わることになったの」


そのある事件についてレイナは語った。

タクマが6歳のころ事故で両親が亡くなりミナトと妹のクミの二人は施設に引き取られ、タクマは父親が生前お世話になっていた人の家でに引き取られることになった。子供のいなかったその夫婦はタクマの事を我が子の如く可愛がり、タクマも親同然に思うようになり、父さん、母さんと呼ぶようになっていた。

ある日、タクマが帰宅するとそこに無残にも殺された母の遺体と、母をかばうかのように立ち向かう父の姿。父は鋭い爪で引き裂かれたような傷を全身に追っていた。タクマは“父さん、父さん、何があったんだよー 母さんが 母さんが・・”と叫ぶが、父はすでに絶命していた。

“びーびぃーびーびぃーうるせぇなぁ”

部屋の奥に何かが鎮座していた。その姿、腕が異様に長く、爪は鋭く長く、頭部には突起物、あきらかに人間ではなかった。

“お前が父さんと母さんを殺したのか・・・”

“初対面でお前呼ばわりとはずいぶん失礼じゃない? 俺にだってちゃんと名前があるんだよ。この状況誰がみてもやったのはこの十鬼じゅっきの内殺人担当の殺鬼さっき。覚えといてね。あっ安心してキミを殺す命令は受けてないから”

“俺もう帰るからさ、このこと誰にもいっちゃだめだよ。言ったら殺すからね”

恐怖のあまり身動きできないタクマに声が聞こえた。

“タクマ、タクマ、父さんの持っている刀を取るんだ。そして思いっきり鞘からぬいて!”

“父さんと母さんの仇をとるんだ!! タクマ!!」

その声は殺鬼にも聞こえていたようだった。

“あれっ?もしかして、キミが転生躯からだだったの?やべー間違ってお父さん殺しちゃっ・・“

“ドゴォーン”

もの凄い轟音と炎と共に殺鬼は一瞬で灰になった。


タクマは気を失い数日後目覚めた。そこは『五行陰陽師』の拠点であった。彼らは世に蔓延る鬼や魔物を退治している退魔師の組織で、タクマは父や母の復讐、十鬼を滅ぼすため組織に入り、陰陽力を鍛えツナと共に活動し退魔師として行動しているのであった。


「ビービービービー」


突然レイナの携帯から警告音が鳴った。

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