第22話 帰路

タクマは三翁さんのうと共に新幹線で帰路に向かっていた。


「クミの学校を世話してもらった上に、あつかましいんだけど・・・」


タクマは考え込んだ様子で三翁に話しかけた。


「なんでしょう」


三翁はいつでも穏やかな表情と口調である。


「しばらくの間でいいんだけど、クミが学校にいる間、誰か護衛をつけてもらうことはできないか・・・」


「クミの奴、この前『勾玉』なしで神楽を舞やがって、餓鬼に存在を嗅ぎつけられたんだ」


「偶然なのか。必然なのか分かんねぇけど、ライコウが現れクミが無事だったけど、『生命の息吹』は一目にさらしてしまった」


「伊邪那岐の連中も、だから俺を呼びつけたんだと思う・・・あいつら信用できねぇから・・」


「先ほどのタクマの対応は私も同意です。今しばらくクミさんのことは内密にしておきましょう」


「学校の件ですが、安心してください。すでに護衛のため、月の四女つきのよんじょを送りこんであります。同じクラスには、如月夢珂きさらぎゆめかがいて、親友になったそうよ」


「ありがてぇ。あいつらがいてくれれば安心だぜ」


クミの通う学校『千鳥ヶ淵学園』は中高一貫校であり、明治初頭に皇居近くの千鳥ヶ淵に設立された学校である。

実はこの学校は帝が遷都に合わせて、帝を守るため伊邪那岐が設立し五行陰陽師の拠点でもあった。今はすでにその役目は終えているが、五行陰陽師との関係は続いていた。

 

三翁が月の四女を学園に送り込んだのはクミの護衛の他にも任務があった。設立当時の千鳥ヶ淵学園は五行陰陽師の影響もあり、祈りや儀式や術式等、陰陽道の教育が含まれていた。特に術式レベルの高い生徒は陰陽占術士おんみょうせんじゅつしという位が与えられ、人の行く末を占っていた。次第にその活動は大きくなり政界や経済界にまでも大きな英影響を与えるまでにもなっていった。昭和に入り、軍部にまでもその影響力を及ぼし、我が国は誤った選択をし続けたのであった。敵軍の空爆により学園は失われ陰陽占術士もその姿を消し、戦後復興に伴い学園は再興され今は陰陽の面影はなくなっていた。

しかし、最近になって政界や経済界を裏で操っている存在の影があり、それが陰陽占術士ではないかという噂があった。千鳥ヶ淵学園に関係している可能性もあるため、月の四女はその調査任務に就いていた。


「学園内にそれらしい人物はいたのか?」


「はい。藤那蓮樺ふじなれんかという生徒が・・・」


二人を乗せた新幹線は新横浜に到着しかけた頃、後方の座席の男の電話が鳴った。男は席を立ち、連結部分で電話に出た。


「はい。金山です・・・その件は後ほどご報告いたします・・・」


男は少し会話をすると、新横浜駅で降車した。

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