第17話 決着

餓鬼を一刀両断したライコウは高笑いした。


「くくく・・・」


「くはっは!!」


「俺様ふっか~~~つ!!!」


「『伊邪那岐』のジジイ共め!」


「よくも俺様をはめやがったな・・・!」


「復讐だ・・!」


タクマはライコウを見上げた。


「・・は!? 復讐って?」


ライコウは刀を天に突きつけて言った。


「この世の全てを駆逐し!」


「俺様が何者かを天下に知らしめてやる!」


「そうだ!全ての頂点!」


「俺は天下人になってくれるわ~~~!!」


『ボン!』


雄叫びの途中で、『ポン』と気の抜けるような音と共に、ライコウは白いモヤっとしたものに変わった。


その後ろに呆然としたミナトが立っていた。


「な・・・何が起きたの?」


ミナトは無意識に祝詞を唱え、体中に力は沸いてきて刀を抜いたところまでは覚えているようだった。


『な、何で俺様が『俺の躯(からだ)』からはじき出されるんだよ!』


『小僧、もう一回刀を抜け!』


「いやいや、これは俺の体だから・・」


『違う!お前は俺の『転生体』だ!』


『俺様のモンなんだよ!!』


ツナがライコウ(白いモヤっとしたもの)にもとにやってきた。


『弾き出されたのは、『堂本ミナト』が、『霊力』を持たない体だからですよ。』


『ぼくたちは、その躯の持つ『霊力』の強さや大きさが十分にないと転生していられないんだ』


『昔の最初の躯は陰陽の戦士だったから、常に転生できたけど、もうその躯は存在しないから仕方ないんだ・・』


『な!? ・・・難しくて良くわからないが、わかったふりをしとこう・・・』


ライコウはその武力ほかに敵うものがいない程だが、難しいことを理解することは苦手であった。


ツナは改まってライコウに挨拶をした。


『御久しゅう御座います、ライコウ様、封印が解けて何よりです』


ライコウは間髪いれずに、


『お久じゃねえ!!』


『テメエさっきから無視しやがって!』


『俺様が何度言ってもアドバイス聞きゃしねぇで!!』


『それもこれも『堂本ミナト』が力を持たぬから、聞こえなかったんです!』


ツナは必至に答えた。


『下僕のくせに、口答えすんな!!』


勇ましい言い争いだが、はたから見たら、白いモヤっとしたかわいい動物がじゃれあっているようにしか見えなかった。


「タクマ・・・何あれ!?」


「お!見えるようになったのかミナト」


「これは『ライコウ』・・・」


「『もう一人』のお前だ!」


「ライコウ・・・」


「これが・・・もう一人の俺?」


ミナトはツナをいじめているライコウを見つめていた。


ミナト兄ィ!!タクマ兄ィ!!」


遠くから、クミとマユリがやってくる。


「お!無事だったか!」


「!」


クミの声に反応するタクマとミナト。


「やったよ兄ぃ!」


「みんな『氏神祭り』を楽しんでくれてまた来るって!」


ガンと、クミの頭を殴るタクマ。


「て!、なにすんのタクマ!クミちゃん頑張ったのに!」


タクマにキレるマユリ。


「痛い・・・」


クミは頭を押さえる。


「頑張ったじゃねぇ!」


「『勾玉』無しで『神楽の舞』するなってあれほど言ったろうが!」


「ごめん・・」


「まあまあ、みんな喜んでくれたみたいだし」


ミナトが間に入る。


ミナトはクミの首に『勾玉』をかけた。


「今度は忘れるなよ!」


「・・ありがとう、ミナト兄ィ」


「たく、ミナトは甘ぇ!」


「まあまあ、タクマ、やっかまない!」


「とにかく。うちへ帰ろう!」


クミはあることに気ずいた。


「ところで、ミナト兄ィその刀どうしたの?」


「あっ! ・・・これは・・・祠の近くに落ちていたんだ・・ 警察に届けないと・・ あっははは」


「後ね、私の学校の先生が祭り来てくれていて、ミナト兄ィにお願いがあるから一緒にきて!」


桜吹雪の中、みんな楽しそう。その横では、ライコウがツナをまだいじめている。


「あのー。私はどうしたらよいのでしょうか・・・」


意識が戻った、あの男の存在はもう忘れられていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ニュースの番組の音声。


『本日、日本全土で突然桜が開花するという、摩訶不思議の現象が起こりました』

『気象庁でも今までに無い事例とされ、いまだ原因がわからないとのことです』


桜の花びらが舞うビルの屋上。二人の男が通りに連なる桜並木を見つめていた。


「『生命の息吹』・・・」


「喜びが大気にあふれ出している」


「あんたの言った通りだな。西園寺晶・・・」


「これが、『国生み』の力なんだよ」


西園寺は隣にいる男に言った。その男の名前は九条紫郎くじょうしろう。白銀の長い髪、上下白色の衣装を纏っている。あの遺物を受け継いだ1人である。


「俺には『国生み』などどうでも良い。この遺物が言うんだよ。『千年前のカリが返せれば・・・』ならば俺が代わりに、奴ら無に帰してやるよ」


九条は額に手を当てて言った。


 そして・・・


源頼光ライコウ・・・どんなに強いんだろう・・・戦ってみたいな・・」

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