第14話 祝詞

境内から離れた林の中では餓鬼に追い詰めらるタクマとミナト。


境内では、興奮した観客が暴れだし巻き込まれるマユリとクミ。


「何やってるミナト!!早く逃げろ!」


タクマが叫ぶ。


『ほら、さっさと逃げろ小僧!』


ライコウが叫ぶ。


「クミちゃん早く逃げてー!」


マユリの悲鳴。


「逃げろ!!」


みんなが一斉に叫んだ。


ミナトとクミが両手が振り上げる。


「パァン!」


と、大きな音が響く。二人が拍手を打った。


その音は、周囲の騒々しさをも打ち消すほど響いた。


タクマ、ライコウが一瞬気を取られた。


喧嘩をしている人たちの手が止まる

「なんだ?」


高天原たかあまのはら神留坐かむつまります!」


高天原たかあまのはら神留坐かむつまります!」


ミナトとクミは同時に唱えた。


祝詞のりと!?」


タクマに嫌な予感が走った。


二人とも手を合わせ拝む態勢で交互に唱える。


神漏岐かむろき神漏美かむろみみこともちて、

皇親神伊邪那岐すめみおやかむいさなき大神おほかみ!」


筑紫つくし日向ひむかたちばな小門をと

阿波岐原あはきはら禊祓みそきはらたまとき

生坐あれませる祓戸はらへと大神等おほかみたち!」


諸々禍事罪穢もろもろまかことつみけかれはらたまひ、

きよたまふとまをことよしを」


天つ神あまつかみ地つ神くにつかみ八百万神等共やほよろつのかみたちともに、天の斑駒あめのふちこま耳振立みみふりたて、

聞食きこしめせと、かしこかしこみももまをす!」


神楽鈴がシャリンと鳴らし、舞を始めるクミ。


観客が喧嘩している形のまま見とれる。


「クミちゃん・・・」


マユリが見とれる。



クミは安らか表情で舞続ける。そして鈴をもう一度鳴らす。


境内の桜がつぼみをつける。そして桜が咲いた。


なぜか涙が出る街の人々


「すごい・・・」


「これが・・・『神楽の舞』


マユリも涙が溢れていた。

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