第9話 餓鬼

ざわつく祭りの舞台会場。


「遅いな~・・今年の『神楽の舞』」


「もう開演時間回ってんだろ?」


「おいまだかよ!」


「何もったいぶってんだよ!」


さわつく観客達。


マユリが心配そうに、


「本当二人ともまだかよ?」


「このままじゃ、客が帰ちゃうよ?」


「なんか時間稼ぎしないと~・・・」


クミはどうしてよいかわからず黙ってしまっている。


「仕方ない!アタシがちっと人肌脱いでやろうか~w」


と、軽く肌をはだけるマユリ。


「あれ?クミちゃん?」


今までここにいたクミがいない。


「おお!出てきた!」


「待ってました舞姫!」


クミ舞台中央に立っていた。


「あ、あの・・!」


「少し準備が遅れてます。ごめんなさい!」


「だから・・・あの・・・」


「?」


観客が少しざわつく。


「じゅ、準備が出来るまで!歌います!!」


恥ずかしそうに顔を真っ赤にして覚悟を決めるクミ。


クミは舞台で歌い始めるが、すごい音痴でみんな耳をふさいで焦る。


「お~い。」「二人とも早く帰ってこ~~い・・・」


呆れるマユリ。


清めの場の近くの林の中。


ガシンと激しく噛み付く男。それを刀で防ぐタクマ。


「ゲゲ・・凄い・・『みこと』の躯がいっぱい」


よだれをたらしながら醜く笑う男。


「タクマ!」


ミナトが叫ぶ。


「ち!仕事後だから、思うように力が入らねぇ!」


「仕方ねぇ、な!」


と、おもむろに携帯電話をかけるタクマ。


「もしもし!レイナちゃん? ちょっとヤバいことになってるんだけど・・・」


「ゲゲ・・力がもっと要る。」


「『みこと』を喰う力・・」


男の『気』が変わって行く。


ザザザと男の足元の草が枯れる。


「!?」


タクマは構えた。


男を中心に草木がどんどん枯れていく。


同時に、男の額の角のようなこぶが成長していく。


ミナトはタクマに近ずいた。

「タクマ兄ィ 草木が枯れていく・・・何なんだこいつ!?」


「鬼だよ」


「鬼・・・!?」


「そう。この世のあらゆる生命を喰らう鬼」


男の皮膚が変色し、異形のものへと姿を変えていく。


そして突き出る角。


「『餓鬼』だ!!」


タクマの表情が変わった。

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