第8話 刀

男は裂けてしまうほど口を大きく開けながらミナトに襲いかかる。


口からは大量のよだれ。


ミナトはカウンター気味に男の左顔面を殴打。


「おっ 小僧、やればできるじゃねぇか!」


ライコウは感心する。


「うぉおおおお」


男は叫びながら大きく後ろへのけぞるも、またミナトに襲いかかる。


「ぎゃぁぁーーー!!」


ミナトの叫び声。腕にか噛みつかれた状態で、振り飛ばされた。


ドシャリと倒れるミナト。目の前にはライコウと刀。


『抜け小僧・・・』


食いちぎられた腕を押さえ悶絶するミナト。


ライコウは男に向かって、


『テメエごとき三下が、俺様に楯突こうなんて百年早ぇ!』


『見せてやるよ・・『才能』の違いって奴を!』


「抜いたぞ!」


ズボッと刀を地面から抜くミナト。


『違ぇよ!鞘から抜け!鞘からボケるな!!!』


「うるさいな! 一々命令ばっかり!」


「言ったからには見せろよ? この男倒せるんだろうな!」


『誰に物言ってやがる!』


両手を前に刀を持ち左右に鞘から刀を引き抜こうとするミナト。


「うお・・・!!」


両手に力を入れるミナト


「おおおおおおおおおぉぉぉおおお!!!!」


力強く吼えるミナト。


「はあ~。錆びてて抜けない・・・」


あきらめるミナト。


『お前本当に才能がねぇ~~~!!!!』


「馬鹿にしやがって・・・喰ってやる・・!」


「『命(みこと)』の躯・・・!」


男がゆっくり近ずいてくる。


「うわああ!!なんかあっちも怒った!! 警察行こう警察!!」


『ちょっと待て!逃げるな!刀を抜け!! もう一回だけ!』


しかし、洞窟から抜け出るために穴を登ろうとするミナト。


ライコウは思った。


『ちょっと待って!落ち着け俺!』


『何で俺のからだなのに刀が抜けねぇ!?』


『俺のからだじゃねぇのか!?』


『いや声は聞こえてる。』


『千年以上も経ってるから、『力』が消えた・・!?』


『仕方ねぇ、ここは最後の手段を使うしかねぇ・・』


『だ・誰か助けて~~~!!』


ミナトも一緒に。


「本当に助けて~~!!」


林に木霊する二人の声。


ミナトは何とか穴から這い出て、林の中を逃げる。


「!何やってんだ?ミナトの奴・・」


そこに探しにきたタクマがいた。


『!タクマ!あれ!』


肩にいるモヤっとしたツナが言う。


ミナトを追いかける男を見るタクマ目線。


額から『鬼の角』のようなこぶが出ている男。


「あれは・・『餓鬼』!!」


タクマはハッとする。


「助けて~~!!」


涙ながらに逃げるミナト。


「待て・・・!『みこと』の躯!!」


よだれをたらしながら迫る男。


タクマは身を一瞬かがめ、数十メートもの距離を瞬間的に移動した。


「ドスッ!」


男の口にタクマが持つ刀の鞘が下から打ち込まれる。


下段から男の身体を打ち上げるタクマ。


「待つのは・・・お前だ!」


ミナトはその音に振り返った。


「タクマ兄ィ!」



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