第5話 舞の準備

ボロボロの神社だが、みんなの頑張りで小さいながらも美しく舞台が作られ、参拝客


がぼちぼち現れる。


「なんとか間に合ったな!」


「そういや、クミちゃん見てねぇけど、用意出来てんのかい?」


地元の人がミナトに尋ねた。


「そろそろしたく出来てると思うんですけど」


「見てきます!」


ミナトはそう言ってクミを探しに行った。


「頼むぜ?メインが居なきゃ」


「俺ら頑張った意味がねぇんだからよ!」


「頼むぜ!おれらの楽しみなんだ!」


地元の人達は舞台の準備を続けた。


ミナト自宅は境内のすぐ脇にあった。田舎にあるような古い家屋で広い縁側が雰囲気を出していた。


「クミ!準備は出来てるか!?」


と、ふすまを開けるミナト。


そこには煌びやかな巫女の姿のクミがいた。


クミの胸元の装飾がチリンと鳴った。


クミの美しい巫女の姿にミナトは見とれてしまった。


「どう?ミナト兄ィ!」


嬉しそうに微笑むクミ。


照れながらミナトは答えた。


「うん!すごいかわいいよ」


そこにマユリが登場。


「アタシが着付け手伝ったの~。アタシの実家呉服屋だし」


「ねぇお礼に童貞頂戴~~!」


と、ミナトに抱きつくマユリ。


ミナトは慌てた。


「ミナト兄ィ・・やっぱり・・・!」


泣きそうなクミ。


「違う違う違う!!!」


焦って取り乱すミナト。


「♪♡♪♡」


と、抱きついているマユリ。


ミナトはクミ見て気ずく。


「あれ?」


「クミ・・・『勾玉まがたま』は?」


見ると勾玉が無い。


「あれ!?あれ!?? いつも身に着けてるハズなのに!?」


「『勾玉』が無いと『神楽の舞』が出来ないよ!?」


慌てるクミにマユリは、


「え?飾りの一つぐらい無くたってかわいいじゃん」


クミは、

「ダメですよ!『神楽の舞』は氏神様に捧げる舞なんです!」


「失礼の無いようにしないとダメなんです!」


「あ!」


「『禊ぎ』をしたときに外したんだ!」


「どうしよう!」


「『禊ぎ』・・・裏の滝か?」


ミナトはクミに聞いた。


「私とって来るね!」


と言うクミに対してマユリは言った。


「ちょい待ち!着物が汚れる!」


クミは、

「でも脱いだら着付けに2時間かかるし!」


マユリは、

「だからいいじゃん。神様もかわいいから許してくれるよ」


クミは、

「でも・・・!」


ミナトそこで言った。


「クミは待ってろ、俺が取ってくるから!」


「裏の滝だな?」


「ゴメン、ミナト兄ィ・・!」とクミ。


「待ってろよ!」


「うん!」とクミ。


「いってらっしゃ~~い」


「あんたの兄貴本当真面目君だね~」


とマユリ。


「はい!ミナト兄ィはいい人です!」


というクミに、マユリは、


やっぱ彼女になろっかな~かわいいし!」



ミナトが裏山に向かう姿が見える。

そこに、男の人影。


鼻をクンクンと鳴らす男。


「匂う・・・」


口元からよだれを流す男。


「『みこと』の匂い・・・」

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