第68話エリザベス マッシュモット
「あの男、まったくもって不愉快ですわ!」
ーー登校初日にダイという気に入らない男に話しかけた。
少し脅してやろうと思っていたが、強力な闇属性の魔力にあてられ一時撤退を強いられた。
今は王宮にあるわたくしの部屋で反省会をしている。
「落ち着いて下さい! エリザさま!」
レーズンさんがわたくしをなだめようとする。
「わたしたちがついていながらこの有り様……申し訳ありません……。」
ビアンカさんが頭を下げながら言った。
ーー入学式の日ーー
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「入試で満点を出した男。どんなやつなのか、わたくしが見極めてさしあげますわ!」
「代表挨拶は本来ならエリザさまが行うはずだったのに。悔しいです……。」
わたくしは小さい頃から英才教育を受けてきた。
合格することはわかりきっている。
そのため入試用の勉強を怠ってしまった。それでも入試で一番をとれると思っていたのだが、一人だけ満点を出した男がいた。わたくしは数学の交換率を求める問題を間違えてしまい、二番手となってしまった。
「エリザさま! あの男ですわ!」
ビアンカが指差す方を見ると、壇上に上がろうとしている男がいた。
「なんですの? あのぱっとしない男は。」
見ると猫背でぶつぶつ一人ごとを言いながら歩いている。緊張しているのか、手はぐっと握られ、震えているように見える。
「まるで子鹿のような震えようですね。代表挨拶は期待できそうですわ!」
レーズンが悪い笑みを浮かべた。
「そうですわね。どんなスピーチをみせてくれるのかしら?」
失敗すればいい。自分を恥じてそのまま不登校になってしまえ。
ーー男の挨拶が始まった。
「な! なんですの!?」
なんと男は急に歌い出した。
しかも卑猥な言葉で韻を踏んでいる。
緊張のあまり気が触れたのか?
「ウオオォォォォッ!」
挨拶が終わるとスタンディングオベーションが起こった。殆んどがバカそうな男たちだったが。
ーー訳がわからない。こんなこと、許されるものか!
「あの男、絶対に退学させてやりますわ!」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「あなたたちのせいではありませんわ。全てはあの変態のせいですわ……。」
ダイとかいう気持ち悪い男のせいでわたくしの輝かしい学生生活が狂ってしまった。
「こんなことなら、もっと数学に力を入れておけばよかったわ……。」
「わたしたちがエリザさまをお慰め致します。どうか、ご自分をお責めにならないで下さい。」
そう言うとレーズン、ビアンカの二人がわたくしにしなだれかかってきた。
「そうですわね。あんな男、すぐに退学になるに決まっているわ。気にすることでもないわね。」
ーー
三人でキスをした。
「今日はわたしたちがご奉仕致します。」
レーズンとビアンカが身体を優しく撫でまわす。
「ぁん……こういうのも、新鮮でいいですわね。」
いつもはわたくしが二人を攻めている。
これからはたまに二人に任せるのもいいかもしれない。
「乳首をお舐め致しますね。」
上半身を裸にされ、二つの乳首を同時に舐められる。
「あっ……気持ちいいですわ……。」
「エリザベスさま、お股からいやらしい汁があふれています。」
ビアンカがパンツの中に手を入れて付いた愛液をわたくしにみせてきた。
「ビアンカさん、恥ずかしいですわ……。」
顔が赤くなるのが自分でもわかる。
「三人で舐めあいっこしましょう?」
その後レーズンとビアンカも裸になり、三人で輪になって恥部を舐め合った。
「はぅ!……あんっ……あぁああっ!」
誰のものともわからぬ猥声が部屋の中に響き渡った。
ーーーーーー
「それじゃ、今から魔力測定するぞ! 一人ずつ計測器に触れてくれ!」
今日は能力測定の日だ。
一日かけて魔力、体力、知力を数値化するのだ。
「ついにこの日が来ましたわね! わたくしの輝かしい学生生活は今日この時からはじまるわ!」
わたくしには王族の血が流れている。王族は生まれつき魔力が高いのだ。しかも小さい頃から受けてきた英才教育には剣術や武術も含まれていて、体力も一流冒険者に引けをとらない。知力など入試を見れば一目瞭然だ。
ーーここでみなさんの注目を一身に浴びてわたしの存在を世に知らしめてやりますわ!
「つぎー! ダイ、早くしろ!」
「うぃ……。」
なんですの? あのやる気の無さは。もしや、勉強以外に取り柄がなく、数値化されるのが恐いのかしら?
「な!? なんだ、この数値は!?」
急にギャラリーが騒ぎ出した。
ーーぷふっ! そんなに悲惨な結果でしたの?
わたくしは冷やかしてやろうとギャラリーの後ろから測定値を覗き見た。
「さ、三十万!?」
計測器が壊れた? あんな数値見たことが無い。普通の魔法使いでも一万出せばいい方だ。
ーーわたくしの家庭教師の先生でも三万くらいと言っていたのに、十倍の差があるではないですか!
しかし、エイオングループの測定器に不具合が出たなど聞いた事がない。
「つぎー! エリザベス様! どうぞこちらに手を。」
先生に促されて計測器に手を触れた。
「エリザベス様、五万、と。つぎー! ニタフィー! さっさとこい!」
ーー誰も反応しない!? わたくしの魔力は五万よ!? あり得ないくらい高いのよ?
どうやらみんなダイの数値に驚き他の人に興味がいかなくなっているようだ。
「ニタフィー、五百、と。つぎー!」
ーー
「また、あの男のせいで!」
「落ち着いて下さい! まだ次の種目がありますわ!」
レーズンさんとビアンカさんになだめられ、冷静になれた。
「そうですわね。次こそは、必ず!」
ーー
「今からこの測定器に拳を叩き込んでくれ! まずはサトーからな!」
バシン!
「サトー、七百ね。つぎー! ダイ! おもいっきりいけよ!」
「……うす。」
パシッ!
「ダイ、五十ね。まじめにやれ! 次ふざけたら退学だからな!」
「僕はいつも本気っす。」
ーーな!? 五十!? あり得ない。普通の女の子でも二百は出る。逆をいうと五十なんて数字、力を制御
しないと出せないはずなのだ。計測器は五十以上の値を表示する。つまり、ちょうど五十を出さないと測定値はゼロと表示されてしまう。
「す、すげぇ力の制御だ! 五十ぴったりなんて達人でもなかなか出せないぞ!」
ギャラリーが熱を持ち始めた。
ーーく、悔しい!
「つぎー! エリザベス様、どうぞお願いします。」
ガシンッ!
「エリザベス様、千二百、流石ですね! つぎー! ニタフィー! 早くしないと退学にするぞ!」
またしてもやられた。わたくしの値は女子にしたら歴代最高値のはずだ。でも、ダイのせいで誰も注目してくれない。
「流石ですわね。自分の本当の実力は見せず、強い事だけは周りにわからせる。その狡猾さだけは認めてあげますわ。」
「エリザベスさま、まだ! まだ知力測定が残っております!」
わたくしは神童と呼ばれ、四歳の頃には魔法書を理解していた。
当時、光属性魔法のキュアーを使い教会で治療の手伝いをした事もある。
そのわたくしが知力で負ける訳がない。
「有終の美を飾るのはわたくしですわ!」
ーー
「それじゃ、この箱の中に顔を突っ込んでくれ!」
知力測定は箱の中にある絵を見て、一瞬で思考できた情報量で知力を数値化するものだ。
「ダイ、十万飛んで五百、と。つぎー! エリザベス様!」
「十万!? 聞いた事ないぞ!?」
またしてもギャラリーがざわついた。そう、万物の天才と言われたレ・オナル・ドダヴィンチでさえ八万と少しだった。
「僕としては、もう少しお尻が小さい方が好みかな。」
あの男が意味のわからないことを言っている。
ーー負けられないわ!
わたくしは箱の中に顔を入れた。
中には有名な絵画、ミロさんの描いたビーナスが見えた。
全裸の美しい女性が描かれている。
ーー性別は女、ミロさんの処女作、値段にして金貨四十枚……。
「エリザベス様、六万五千、流石神童と呼ばれた天才ですね! 感動しました!」
負けた。完敗ですわ。
「なぜ、あんな変態が……!」
わたくしは今日、初めて他人に負けを認めた。
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