王都で嘔吐し王と会う

第60話クズ人間 ダイ

クルム領を南下すること二ヶ月、僕たちは王都に着いた。

マッシュ王国の初代国王は『ペニス』で遊ぶのが好きだったそうだ。

『ペニス』とは二人または四人でやる遊びで、硬くしたペニスをぶつけあったり、軟らかいペニスをぶつけあったりするらしい。

勝敗はラブの数が多かった方が勝ちときいた。金玉ペニスボールをぶつけ返せないと相手にラブがカウントされる。

ーー王侯貴族は変態が多いと聞くが、まったくもってその通りだと思う。


ーー


僕たち三人は王都の安宿を借りて住んでいる。


「姉さん、今日も帰って来ないですね。」

カナンはマァムさんのことを姉さんと呼ぶ。


「……」

最近僕は情緒不安定だ。

王都に来てから、マァムさんは毎日のように朝帰りするからだ。


「あああああっ!」

ボクはベッドにうずくまり、マクラを殴りつけた。


「兄さん、落ち着いて下さい! 兄さんにはわたしがいるじゃないですか!」

ボクは手を止め、カナンを見る。

カナンは僕の頭を優しくナデナデしてくれた。


「カナン! カナン! はあはあっ!」


「はぁんっ……! 兄さんダメです! わたしの身体が壊れてしまいます!」

ーーカナンにボク(の息子)を慰めることは出来ない。なぜならまだ身体は子どもだからだ。

カナンは今年で千八歳になる。おばあちゃんだ。

法律的には僕たちは結ばれる事が出来るが、実用性が無いのでどうする事も出来ない。


「仕方ない兄さんですね……わたしがイヤなこと、ぜんぶ忘れさせてあげます……」

そう言ってカナンは小さいお口で僕(の息子)を慰めてくれる。


ーー最近は毎日こんな感じだ。


次の日の朝ーー


「ただいまー。今もどりましたー。」

マァムさんが帰って来た。

目の下に隈を作っている。


「マァムさん。もう夜に働くの、止めて下さい。」

僕はマァムさんを睨みつける。


「いいですよ。でも、生活費はどうするんです?」

マァムさんが笑顔で首をかしげる。


ーー僕たちはマァムさんの稼ぎで生計を立てている。

夜の店で働いているのだ。

マァムさんは、いわゆる人気嬢だ。

なんでも『貪欲な蜜壺』なんて二つ名がついていて、卒業請負人と呼ばれて童貞のお客さんがあとをたたないらしい。

聞いただけで頭がおかしくなりそうだ。

しかし、物価の高い王都で生活するには金がいる。

カナンは子どもで仕事をしても二束三文だし、僕は今勉強で忙しい。


「僕がお金を稼ぎます! だから!!」


「受験はあきらめるんですか? わたし中途半端な人、好きじゃないなぁー……」


ーー止めてくれ! そんな目で見ないでくれ!


ーー王都に来てから三ヶ月、僕は必死に勉強してきた。

その間マァムさんは身体を売り、僕を支援してくれた。今投げ出せば、全てが水の泡となる。

受験まで一ヶ月、もう引くことは出来ないのだ。


「じゃあ、疲れてるのでもう寝ます。お休みなさい。」


ーー三ヶ月前、王都に着いてすぐーー


「王都に着いたのはいいですが、これからどうしましょう。」

僕たち三人は遺跡調査の一件があった後、安全な王都に行くことにした。


「ボク、受験しようと思います! 魔法学校に行って強くなりたいです!」

渡邉が言い残したことが頭から離れないーー

僕は世界を救わないといけないらしい。

しかし、今の僕は弱い。


ーー強くなりたい


それは当初の目標でもある。


「いいと思います。でも、お金はどうするんです?」


ーーコツコツ貯めていた金はたった二週間で底をついた。

教材が予想以上に高かったのも要因の一つだ。

しかも、日中勉強するため、僕は仕事をしていない。

この世界で学校に行く事が出来るのは、一部の富裕層だけだ。


「しかたない、わたしが一肌脱ぎましょう。 ちょうどたまっていたところですし。」

最初はマァムさんも知り合いのお店の手伝い等をしていた。王都の近郊は魔獣が少ない。

元々そういう場所に王都が作られたからなのだが、冒険者は儲からない。

僕がネズミ駆除をしようと考えた事もあったが、エイオングループの新商品『ネズミコロリ』の登場により、都市部のネズミは殆んど姿を消した。


「ダメです! 身体を売るなんて! 僕が許しません!」

僕がそう言うと、マァムさんは悲しそうな顔で笑った。


「他に方法がないんです。諦めて下さい。」


「マァムさん! ボク! マァムさんの事がス……!?」

マァムさんがボクの口に人差し指を当てた。


ーー告白もさせてくれないのか……


「汚らわしい身体です。わたしの貰い手が見つからなかったら、ダイさんが貰って下さいね?」

マァムさんはそう言い残し、夜の街に消えて行ったーー


ーー


ーーそれから僕は必死に勉強した。嫌なことを考えられないくらいに。このまま行けば合格は間違いないだろう。


「ーークズ野郎だ……ボクは!!」

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