第41話マ○コ・○○ックス

「あなた、何でそんなところで寝てるのよ?」


「だって、ベッド一つしかないし、他に横になれる場所が見つからなかったんです。」


ーー僕たちは朝になり目が覚めた。

丸まって寝ていたので身体がバキバキだ。

眠りが浅かったせいか、マイさんが起きる音でほぼ同時に起きる事が出来た。


「ならベッドに入ればよかったじゃない。」

なんと一緒にベッドで寝ても良かったらしい。

勿体ない事をした。

しかし、マイさんと同じベッドに入っていたら息子が暴れ出したかも知れない。結果オーライだ。

軽く準備を整えると、僕達は宿を出た。

誰もいないが、誰かに「こいつらヤったんだな」と思われたい。


「早く行くわよ!」

僕は松風を連れて朝御飯を食べに出かけた。


ーー市場についた。

朝から人で賑わっているが、お祭りみたいで楽しい気分になる。

僕達は一軒の食堂に入り朝食を食べる事にした。



「ご馳走様でした!」

僕はお店でフルーツジュースだけを頼んだ。

ジュースは直ぐに届けられたので、僕はそれを一気飲みした。

店に入って約一分で朝食を終わらせた。

自分史上最速だ。


「あなた、それで足りるの?」


「はい! もうお腹パンパンです! なので先に教会に行って来ますね。マイさんはごゆっくりどうぞ!」

マイさんのご飯はまだ出来ていない。

これで単独行動ができるぞ!


「待ちなさい! あなたそんなにわたしと居るのが嫌なの?」

マイさんが少し寂しそうな顔をした。

心が痛む。


「その逆ですよ。いつも一緒に居たい女の子に内緒でプレゼントを用意したかったんですよ。僕の熱い気持ちを伝えるために、ね。」

キザッたらしくマイさんに嘘を言った。


「え?」


ーートゥンク…


マイさんがときめいているのが僕にはわかる。


「だから、マイさんはゆっくりご飯を食べていて下さい。お昼の鐘がなるタイミングで、広場の噴水前で待ち合わせしましょう! では!」

「あ、ちょっと待ちなさい!」

僕は振り向かずに店を出た。


「あ、ジュース代払ってないや。」

最近は全ての出費をマイさんにお願いしていた。

なので自分のお金を使う意識が無くなっていた。

ヒモ男一歩手前だ。


ーー教会に着いた。

松風を教会の横に繋いで中に入った。

教会の中は静謐な空気が漂っている。

正面には大きな彫像が立っており、その像の前で人々が片膝をおり祈りを捧げている。

向かって右側には人の列があり、その先を見ると相談所と書かれた看板があった。

おそらくそこで悩み相談や、病気の治療をして貰えるのだろう。

相談所は二ヵ所あり、どちらにも人が並んでいる。

明らかに人が多い列と、二、三人しか並んでいない列だ。

取り敢えず時間もないので、僕は人が少ない方に並んだ。


「あの、すみません。」


「ん? どうした少年」

僕は前に並んでいる人に声をかけた。

スキンヘッドでごつい身体をしており、上半身裸で手にはグローブをしている。冒険者かなにかだろう。


「ここの列も隣の列も、病気の治療はして貰えるんですよね?」


列が先に進み、次はスキンヘッドの人の番だ。


「ああ。どちらでも大丈夫だぞ!」


「なら、どうして向こうの列は混んでるんですかね?」


「次の方、どうぞー」


「神官の好みだな。対応する人が二人いるんだ。俺はこっちの方が好きだけど。じゃあ呼ばれたから行くわ。」

スキンヘッドは手を上げて行ってしまった。

ふむーー神官の好みか。

そんなの初見では判断出来ない。

気にする必要は無いだろう。


「次の方、どうぞー」


「あ、はい!」

僕は相談所のカウンターで治療目的だと伝えると、そのまま奥の部屋に通された。



「こんにちは。そこの椅子に座って」

部屋の中には神官がいた。


「よろしくお願いします」


「私は神官のマリコよ。よろしく」

マリコさんと言うのか。

それにしてもこの人、化粧をしているが、どう見ても男だよな?

そう、マリコさんの口の周りにはヒゲを剃った跡がある。

それだけではない。

マリコさんはでかいのだ。身体が。


「マリコさん、とても身体が大きいですね」


「実をいうと私はゴリラの獣人なの。多分その影響よ」


「そうですか……」


「みんなには、マリコ・デラックスって呼ばれてるわ。あなたも好きに呼んでいいわよ」


「はい、よろしくお願いします、マリコさん……」

この人の列に人が少ない理由がわかった。

ガチムチばかり並んでいたことも。


「それで今日はどんな要件かしらん?」


「はい、実は僕、エイズにかかってまして。治せますか?」


「ええ、ここで治せるわ。そこのベッドにズボンを脱いで横になりなさい」

僕は言われた通りにした。

マリコさんは棚から桶を取り出し、その中にヌルヌルの液体を入れて水と混ぜ合わせはじめた。


クチュクチュクチューー


卑猥な音がたっている。


「あ、あの、何をしてるんですか?」


「クスリを処方してるのよ。ちょっと待ってなさい」

少しして処方出来たのか、マリコさんが僕の横まで来た。


「じゃあ、オパンツを脱いで」

僕は仕方なしにパンツを下ろした。


「ひゃっ! つめたい!」

マリコさんが僕の患部ムスコにクスリを垂らした。


「そのまま動かないでね」

するとマリコさんが僕のムスコを握り、上下にこすり始めた。


「ま、マリコさん! どういうことですか!?」


「今、あなたの患部にクスリを浸透させているの。そのうち腫瘍が体外にでてくるわ」

訳がわからないーーしかし、僕のムスコがクスリの影響か腫瘍を出したがっているのがわかる。


「もう少しね。ちょっと速めるわよ?」


クチョクチョクチョクチョーー


「マリコさん! 腫瘍が出そうです!!」


「いいわ! そのまま出して!」

マリコさんが空いている手を僕の亀頭に当てた。

おそらく腫瘍が飛び散らないための処置だ。


「うっ!」


ドビュッ、ビュッ!!


「終わったわ、腫瘍は全て取り除いたわよ。」

マリコさんが手の中の腫瘍を見せてくれた。

まっ黒な液体が手からこぼれそうになっている。


「僕、治ったんですか?」


「もちろんよ。安心して使いなさい」

よかったーー僕は遂にこの呪縛から解放されたのだ!


「ありがとうございました。ほんとうに、ありがとうございました!」


「ええ。あなたにも主の加護があらんことをーー」



僕は部屋を出た。

隣のは更に人が増えているようだ。


「ん?」

よく見ると、隣の相談所には『休憩』の看板が立て掛けてあり、奥の部屋から神官が出てきた。


「はあ……今日も人が多いわね」

その神官は、オッパイのデカい美人のお姉さんだった。


「なんて事だ……向こうに並べば、あのお姉さんが治してくれたのか……」

僕はやりきれない気持ちを抱えつつ教会を出た。


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