第40話 貢ぐ君と最高の妹

「ただいまー、百合ちゃーん! 寂しくなかったかーい!?」


「お帰りなさい、大さん。別に寂しくないです。」

今日は百合が目覚めて一ヶ月記念日だ。

そう、僕は記念日を大事にする男なのだ。


「今日は百合ちゃんに、プレゼントを買って来ましたー!」

そう言って僕は百合にラッピングした箱を渡す。


「あの、昨日もプレゼント貰いましたよね? 毎日貰っても嬉しくないです……」


ーー百合が目覚めてから、少しした時の事。

百合は少しずつ言葉数が増えていった。

当初百合は僕の事を「父さん」と呼んでいた。

しかし僕は「あのね百合。僕はまだ二十代だよ? 君みたいな子供がいるのは、少し無理がある。せめてお兄さん呼びしてくれないかな?」と言った。

そして、百合は僕の事をこう呼んだのだ。


「大お兄ちゃん……」


大お兄ちゃん


だいお兄ちゃん


お兄ちゃん


おにいたん


ーーか、かわええ!!


実際は「おにいたん」なんて呼ばれてはいないが、僕には百合の周りにキラキラが見えた。

ちなみにお兄ちゃんと呼んでくれたのはその一回きりだ。

それからは毎日百合の気を引こうと努力している。

その一環として、僕は百合に貢ぎまくっているのだ。

百合と一緒に居たいのでパチンコに行く事はなくなったが、お金はプレゼントに消えていった。

最初は何をあげれば良いかわからなかったので、ジュエリーショップでダイヤのネックレスを買って来たら百合に「だいさん、重いです……」と言われてしまった。


「そっか、百合にはまだ重かったか。じゃあ今度は指輪にするね。」


「あの、重量のはなしではなくて、気持ちのはなしなのですけど……」

「百合ちゃん、難しい言葉を知っているね! 将来はお医者様かな? そしたら僕のこの胸の高鳴りがなんなのか、百合ちゃんに調べて貰いたいな!」

僕たちは親睦を深めて行った。

しかし、なぜか敬語を使われるようになってしまった。


ーーやがて百合は料理を覚えた。

百合は毎日高価なものを買ってくるのを見て、ずっと安いものを欲しいものリストにして渡して来た。

その中の料理のレシピ本を見て毎日ご飯を作るようになった。


「だいさんに何かあると、私の生活にもししょうをきたすので……」

そう言って百合は僕にお弁当まで作ってくれた。

「百合……生まれて来てくれて、ありがとう!」

泣いた。涙が止まらなかった。

僕はこんなに幸せでいいのだろうか。

それからというもの、仕事にも精を出した。


「松本、最近頑張ってるな! 彼女でも出来たか?」

課長も僕を評価するようになった。

「最高のパートナーが出来ました。二人の家を買うため、これからも頑張ります!」

今の僕の目標はマイホームを手に入れることだ。

一日中家にいる百合が少しでも快適に過ごせるように頑張らないと!


「僕、愛する人が待ってますので先に帰ります! お疲れ様でした!」


「おい待て! 明日までの資料、出来てるのか!?」


「明日の朝やりまーす!」

僕は定時で帰る事にしている。朝もギリギリまで家にいて、少しでも百合との時間を多くしているのだ。


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