第31話魔獣駆除

「ヤバい、追い付けない…」








僕とマイさんは、ギルドの掲示板に良さそうな依頼が無いのを見て、魔獣駆除に向かう事にした。

その際松風も連れて来たのだが、台車を牽引している。

最初松風は台車を引くのを嫌がったが、僕が甘い言葉で説得すると、渋々応じてくれた。

その為今日は帰ったら松風のブラッシング120分コースが待っている。

いつもの倍だ。


「これ、キツすぎだよ。ゴメスさん、よくついていけたな。」

マイさんは、魔獣を一太刀で片付けてしまう。

正確に魔獣の急所をついていく。

ダガーを二本持っているが、一本で充分なのではないか。

僕は急いでオオカミの頭を銅の剣で切り落として台車に載せる。

身体強化しているため簡単に切り落とせるが、普通の人ならもっと時間がかかる。

ちなみにゴメスさんはバトルアックスで首を切り落としていた。

台車も引きながら良く一人でこなしていたものだ。

「ちょっと、待って下さい!」


「遅いわよ! はやくしなさい!」

この人は鬼か。

こんな事をしているから皆パーティーを離脱していくのだ。

マイさんはひょうの獣人だと聞いた。

豹は猫科の中でも単独で行動する。

この人は遺伝子的に集団行動が出来ないのだろう。

急いで追い付くと、マイさんが立ち止まった。

目の前をみると、大型の魔獣がいる。


熊だ!

しかし、あの熊はおかしい。普通の倍の大きさをしている。

普通熊は大きくても体長二メートル位だが、あいつは四メートル近くある。


「ダイ、大剣を貸して。」


「持ってきてませんよ、自分でいらないって言ったじゃないですか!」


「……ちっ!」

マイさんは舌打ちした。

おそらく、あの魔獣は変異種だ。

魔獣の中には稀にとても強い個体が発生することがある。

そいつらは総じて大きく、強く、そして賢い。

ちなみに松風も馬の魔獣の変異種だ。

熊は立ち上がり、こちらの様子を伺っている。

「マイさん、逃げた方が良いんじゃないですか? 熊も襲って来る気配ありませんし。」


「いいえ。あいつは必ず襲って来るわ! わたし達が逃げ出そうとしたら、後ろから引き裂かれるわよ。」


こわっ!

いきなり詰んでるじゃん。

だから魔獣駆除は嫌だったんだ。

大人しくネズミ狩りにすれば、こんな事にはならなかったのに。

ーーマイさんはジリジリと魔獣に近づいていく。

リーチは熊の方が長い。

やがて熊の間合いに入ろうとした瞬間、マイさんは姿勢を低くして一気に熊に襲いかかった。


キィン!!

しかし、熊の爪に弾かれてしまう。


「グオァァァッ!!」

今度は熊の攻撃だ。

先ほどダガーを弾いたのと逆の手を振りかざす。


「ぐっ!」

マイさんもすかさずダガーで防御する。

しかし、熊の力に負け、後方に弾き飛ばされる。

「マイさんっ!!」

ヤバい!!

マイさんはすかさず立ち上がるが、熊が既に間合いを詰めていた。


「レイガンッ!!」

僕はすかさず右手を銃の形にして音魔法を熊の顔目掛けて放った。


ブシャアッ!

熊の頭が吹き飛んだ。


辺り一面熊の血で真っ赤に染まる。


よかった。間に合った。


「マイさん、怪我はありませんか?」


マイさんは熊の血を浴び立ち尽くしている。


「あんた、今のまほう……」


そういえばマイさんに音魔法の事言うの忘れてた。

僕は荷物持ちだから関係ないと思っていたので、戦うという選択肢が消えていた。


「ああ、僕の必殺技です。グロいんであんまり使わないんですけど、中々の威力でしょ?」


「そんなの隠してないで、最初から使いなさいよ!!」


「ひぃっ! ごめんなさい!!」


マイさんが返り血が気持ち悪いからと、その日はこれで帰る事になった。

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