第30話ゴメちゃん

「それじゃあマイちゃん、今までありがとね。」


「こちらこそ。今までとても助かったわ、ゴメちゃん。」



「ダイ君、あとは頼んだよ。」


「はい、任せて下さい! お疲れ様でした、ゴメスさん。」

僕たちは握手した。

感動の別れである。


ーーゴメちゃんというのは、マイさんのパーティーメンバーだ。

今日からは元が付くが。

この人は僕と同じEランクの冒険者だが二つ名持ちだ。


ーー禿頭ゴールデンメタルヘッド


そう、ゴメスさんは頭がツルツルなのだ。

マイさんはゴメちゃんと呼んでいたが、本名と二つ名、どちらのあだ名だったのかは本人のみぞ知ることだ。

そのゴメスさんは今日で冒険者を引退する。

なんでも実家のお母さんの介護をしないといけないそうで、明日にはこの街をたつそうだ。

マイさんとルームシェアし始めてから、一週間が経った。

僕はその間ゴメスさんの仕事の引き継ぎをしていた。

明日からはゴメスさんはいない。

僕はこれからマイさんのパーティーメンバーとして、荷物持ちをするのだ。

ちなみに元のパーティーメンバーはマイさんとゴメスさんの二人だけだ。

前は四人で組んでいたらしいが、みんなマイさんについていけず辞めてしまい、残ったのは荷物持ちのゴメスさんだけだったそうだ。

当初僕はパーティーの現状を見て、二人はそういう関係かと思ったが、ゴメスさんに笑われてしまった。


ーーそう、ゴメスさんの心は女の子だったのだ。

ゴールデンメタルヘッドなんて二つ名をつけた奴は本当に最低だ。

「じゃあ、行くわよ!」


「あ、はいっ!」

僕たちは、街の入り口でゴメスさんを見送ってから冒険者ギルドに向かった。



「それにしても助かったわ。ゴメちゃんがいなくなった後、どうしようかほんとうに悩んでたの。」


「成る程。そして僕はまんまと嵌められた訳ですね。」


「嵌めるなんて言い方、やめてくれる? あんただって了承したじゃない!」


知ってたら断ってましたよ……


僕がマイさんとルームシェアしてからは、僕に対する当たりが幾分か柔らかくなった気がする。

まだあんた呼ばわりされてるけど。


ーー冒険者ギルドについた後、僕たちは掲示板を見ていた。

Cランクで職業戦士のマイさんは受注出来る依頼が多い。

美味しい依頼が出てないか確認する。


「こんにちは、ダイくん、マイ。パーティー組んだらしいね?」


「あ、アナさん、こんにちは。こんな時間にギルドにいるなんて、珍しいですね。」

今はまだ午前中だが、日が出てから大分経っている。

僕たちはゴメスさんを見送っていたため、いつもより遅い時間にギルドに来た。

「ああ、依頼を受けていて今戻ったんだ。」

アナさんの後ろをみると、彼のパーティーメンバーがいる。魔法使いのナタリーさんとシーフのパドさんだ。

二人とも美女で、アナは女子二人と日を跨いだ依頼を受けていたことになる。

ちなみに二人とも、パイパイがデカい。


僕は心の中で二人をデカ美とデカ江と呼んでいる。

アナさんはオッパイ星人だったようだ。

星に帰ってオナ禁してろ。

僕はマイさんのパイパイを見た。


うん、小さくはない、決して小さくは無いが垂れる心配は無さそうだ。


よかったね、マイさん!


「なに? 言いたいことあるなら、はっきり言いなさい!」


「いえ、マイさんは今日もキレイだなと思って。」


「え!? ちょっと、急になに!? ビックリしちゃうじゃない!!」

照れてる。チョロい。


「うん、大分仲良くなったみたいだね。」


「お陰様で。」

最初はいつか殺されると思っていたが、最近はマイさんの機嫌が良いのか、殴られるような事は無い。

部屋には大剣が手入れもされず、ずっと放置されている。


「それじゃ、僕たち昨日は寝てないんだ。依頼の達成報告もしたし帰って寝るよ。」


「はい、お疲れ様でした。」

僕は三人に頭を下げた。

アナさん達が歩いて入り口の方に向かう。

しかし、アナさんは思い出したように僕の前に戻ってきた。


「そうだ、ダイくん。今度二人で食事でも、どう?」


「え……?」

まさかアナさんはオッパイ星人の上に男の気もあるのか。業が深い。


「ほら、この前言ったじゃないか。キミの病気のこと、詳しく教えてあげるよ。」


そうだ、忘れてた。自分の命に関わる話なのに忘れているとは。

僕もお気楽なもんだ。


「はい、お願いします! 出来るだけ早く知りたいです!! 今晩はどうですか?」


「ごめん、今日はパーティーで打ち上げする予定なんだ。それに急がなくても大丈夫、その病気は直ぐにどうこうなる物じゃないからね。」

そう言うとアナさんは今度こそギルドを出ていった。

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