第23話チン毛を採る。そして、女子校生を貰う。

「大ちゃん、こっちこっち!」


イオンの中にあるファミレスの『無我夢中』に入ると、すぐに声をかけられた。


「おお。久しぶり!!」


「久しぶり! なんか大ちゃん、昔と全然変わんないね!」


「そうかな? でも、渡邉は雰囲気変わったね。」


ーー渡邉は昔黒ぶちメガネをかけていた。


今は赤い物に変わっている。


しかし、一番変わった事と言えば会話の導入が下ネタじゃないことだろう。


ーー渡邉と会うのは実に十年ぶりである。


高校を卒業したあとの数ヶ月、僕たちは連絡を取り合っていたが段々と頻度が減り、大学二年に上がる頃にはまったく連絡をとらなくなっていた。


「色々あったからね。」


「そっか…でも、元気そうで安心した。」




『世は大学歴時代、そこにはマンピーズが存在している。合コンで王様に、俺はなる!』


ーー高校時代の渡邉がよく言っていた。


ちなみにマンピーズとは、女子大生達の事だ。

しかし、大学という大海原に出航した彼は、大学での生活に絶望していた。


ーー合コンに誘って貰えない。


電話で話した際に彼がよく言っていた。


受け身だからいけないんだよ。なんて思っていたが、陰キャの僕たちに出来ることは限られている。


ーー僕たちは夕飯を食べながら、昔話に花を咲かせていた。


「そういや大ちゃん、中学の頃余命がどうのって言ってたよね? 普通にまだ生きてるじゃん。」


「あの時は本当に死ぬと思ってたんだよ。性病の知識もなかったし。あと、シェリーさんの件もあったしね。」


ーー僕は中学三年の夏、インキンを患い股間が痒くてしょうがなかった。

当時の僕は本気で性病にかかっていると思い込んでいたのだ。


「え? シェリーさんって誰? そんなAV女優いたっけ?」


「えーと。当時の夢の話し。」


そうだ。

渡邉は僕の夢の事を知らない。



僕は中学三年時、七夕の前日から変な夢をみるようになった。

いや、寝たのが前日だから、夢は七夕当日にみたのか。


ーーそういえば今日は七夕だ。


パチンコを覚えてからは7が二つ付く日って思うようになった。


「そろそろ本題に入ろうと思うんだけど、いい?」

渡邉が真面目な顔になる。


「なんだよ改まって。そんなに大事な話しなの?」

僕は軽い気持ちで答える。


「ああ……お前の家、行っていい?」



ーー僕と渡邉は現在公務員宿舎にいる。


僕の借りている部屋だ。


最初は渡邉に掘られると思っていたが、大事な話しだからと真面目に答えるので、仕方なく連れてきた。


渡邉にコーヒーを出し、ちゃぶ台の反対側に座る。


「それで、大事な話しってなに? 明日も仕事だから早く寝たいんだけど。」


今は夜の十時だ。


長いことファミレスで話してしまった。

明日も仕事がある。


ネズミを沢山狩らなくては。

僕は松風の分も稼がないといけないのだ。


「ああ、すまない……きみの髪が欲しい。」


「いいよ。」


僕はパンツの中に手を突っ込み、チン毛を一本抜き渡邉に差し出した。


「いや、なんでチン毛なの……?」


ーーただのジョークだ。


渡邉なら喜んで乗ってくれると思ったのだが。


「まあいいや。」

そう言いながら渡邉は僕のチン毛を液体の入った試験管に入れ、キャリーケースの中にしまった。


「それから、この子を預かって欲しい。」


そう言うと渡邉は、試験管をしまったキャリーケースの大口を開けた。


「おまっ、それ犯罪じゃっ!?」


なんと中には小学校低学年くらいの女の子が丸まって入っていた。

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