第22話ペットは最後まで(死ぬまで)責任を持って飼育しましょう
「それにしても、ほんとうに手懐けちゃうとはね……いったいどんな魔法を使ったんだい?」
僕は草原を一周して二人のもとに来て松風から降りた。
松風は僕に顔を擦り付けてくる。
「うーん……恋の魔法、ですかね?」
沈黙が続くーー
松風はまだスリスリタイム中だ。
「……じゃあ、目的も達成したし帰ろうか。」
そうして僕達は歩きだした。
ーー帰り道にて
「そういえばマイさん。約束、覚えてますよね?」
「ええ。モチロンよ。」
凄い不機嫌そうだ。
「それで、何でもやってくれるんですよね?」
「……そうね。で、私に何をさせるつもりなの?」
顔が怖い。
「……僕が死ぬ時、手を握っててくれませんか?」
「は?」
「だから、僕が死ぬ時に手を」
「ちゃんと聞こえてたわよ!」
この人怒ってなさる。どうしよう。
「私がいいたいのは、そんなことでいいのかって!」
「ああ、そういうことですか。」
ーー僕も色々エッチい事を考えた。しかし、性病持ちの僕にやれることは限られている。
であれば、冥土の土産に美女の手を握らせて貰えればそれでいい。
「前に話した通り、僕は長く生きられません。死ぬ時に手を握って貰えるだけで、僕は幸せな気持ちで旅立つ事が出来ます。」
「そう……わかったわ。約束はかならず実行される。私が死ぬこと以外でその約束をたがえることは無いわ。我が一族の名誉にかけて。」
「はい。よろしくお願いします。」
僕はマイさんと固い握手をした。
「あ! あと、僕が死んだ後、松風の面倒をみてやって下さい。」
「別にいいけど、そっちの方が大変そうね……」
「あのさ、盛り上がってるところ悪いんだけど。松風だっけ? ほんとうに街に連れて帰るの?」
アナさんが僕に聞いてきた。
ーー松風は僕の横を歩いている。何故こんなに懐いているのだろう。
「そのつもりです。僕たちは固い絆で結ばれているんです。な? 松風」
「ブルル(勿論よ、ご主人!一生離さないんだから!)」
松風が顔を擦りつけてきた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
僕たちは無事エイオンに着き、冒険者ギルドに向かった。
ギルドの中に入ろうとすると、松風もついてこようとするので、僕はギルド前でお留守番だ。
「報告は済んだよ。もう一度聞くけど、報酬は三人で分けないかい? 実際僕たちは何もしてないのだから。」
「いえ。誘って貰えなかったら、松風と出逢う事も出来なかったので。僕は報酬以上のものを手に入れました。」
松風を撫でる。
「あんた、知ってるとはおもうけど、馬の維持費は大丈夫なの?」
「え?」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「はあ。今日は疲れたな。」
あの後、二人と別れて宿に戻った。
宿には馬小屋があり、料金を払えば餌も与えてくれる。
しかし、思ってたより高い。
一泊三食付きで金貨一枚、食事無しだと、銀貨五枚する。
僕の一日の稼ぎは、ネズミ狩りで金貨二枚と銀貨五枚くらいだ。
僕の宿代が銀貨八枚と食事代が銀貨二枚なので、松風と合わせた一日の出費は金貨二枚となる。
蓄えもあるし、どうにかなるだろう。
と、その夜までの僕は思っていた。
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