第20話生物の垣根を越えたナンパ師

悪魔の馬はメスだった。


ならば、手懐けられる可能性は高い。



僕はゆっくりと悪魔の馬に近づき、声をかけた。


「やあ、君ひとり?」


悪魔の馬は草を食べるのに夢中だ。


「僕さ、美味しい草が生えてる場所知ってるんだけど、一緒にどう?」

そう言いながら馬との距離を詰める。


「君、毛並みがすごいキレイだね。ツヤツヤしている。」


そう言って僕はたてがみを撫でた。


人間の女の子を愛撫するように、優しく、ゆっくり、ネットリとした手付きでーー


「それにしてもしなやかな身体をしているね。」

ちょっとづつ馬の後方に手を這わせていく。


悪魔の馬は草を食べるのをやめ、僕を見つめてきた。

僕は彼女に目を合わせると、優しく微笑んだ。


「つぶらな瞳もキレイだ。」

やがて僕の手は、馬の尻尾の付け根まで辿りついた。


ーーこの馬は僕の罠にはまった。


相手を誉めて機嫌が良いうちに、自然にスキンシップをとり、警戒されずに大事なところまで触らせてしまう。


僕の作戦勝ちだ!


僕は馬と見つめ合ったまま、身体強化した指をウニャウニャと動かし始めた。


しばらく続けた後、今度はトントントンと一定のリズムで刺激を与える。

そこから発生する音に魔力を乗せて、馬の大事なところに振動を加える。


ーー堕ちたな。


僕は確信した。





「……あいつ、何やってるの?」

眉間に皺を寄せてマイが言った。


「さあ……でも凄いね。あの悪魔の馬にあんなに近づくことが出来るなんて。これはもしかするかも知れないよ?」




そろそろフィニッシュかと思った頃、悪魔の馬は僕を振り払うようにして歩きだし、少し離れて足をたたみ、休む体勢になった。


僕はまた悪魔の馬に近づいた。


「照れなくて良いんだよ。全部、僕に委ねて……」

そう言って僕は悪魔の馬に触れ、優しくたてがみを撫でた。


悪魔の馬は目を閉じている。

悪魔の馬は体勢が低くなっているので、今なら乗れそうだ。


「怒るかな?」

そう言って僕は悪魔の馬に乗った。


「ヒヒーン!!」


「うお!?」

悪魔の馬は目を開けて、急に立ち上がり、前足を上げて暴れ出した。

僕は振り払われないよう懸命にしがみつく。


悪魔の馬は僕を落とそうと身体を振りながら走り出した。

僕は馬の首に手を回して、密着した。


悪魔の馬は身体強化して密着した僕を振り払う事が出来ず、首を振っている。


僕は馬の耳元で優しく言ったーー


「暴れないで。キレイな君にそんな姿は似合わないよ。」


なおも馬は暴れている。


「それにほんとは、もう我慢出来ないんだろう?」

そう言って僕は馬の耳にフッ、と息を吹きかけた。


実は先ほどから耳元でささやきながら、僕は僕の息子を馬の背中に擦りつけていた。


馬のイチモツには負けるが、ドラゴンの紋章が浮かんでからというもの、勃起時の息子は今までの倍の大きさまで成長するようになった。

セックスアピールってやつだ。


悪魔の馬は一通り暴れた後、諦めたようにおとなしくなった。


「ふふ、良い子だ。」


やがて悪魔の馬は暴れること無く僕を乗せて草原を駆け回った。



「それにしてもなんて速さだ! そうだ、お前は風のように速い松本大の馬。今日からお前は松風だ!!」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「まさか、ほんとうに手懐けてしまったよ!」

アナは子供の様な笑顔で手を叩きながら言った。


「あいつ、ほんとうにサイテー……」


獣人は目と耳がいい。マイにはダイの先ほどからのやり取りが全て聴こえていた。



⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐

次回、ヒロイン(松風)の回想です。

⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐

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