第18話ビッグマウスのファンタジスタ

草原では、馬達が草を食べていた。


悪魔の馬らしきものは見当たらない。


「今のうちに、僕たちの戦闘スタイルを確認しようか。まずは僕から。僕は風魔法で速度を上げ、レイピアで戦う。」



そう言ってオナ禁さんはレイピアを抜き、二、三度素早く空を突いた。


ーーカッコいい。


噂に聞いていた通りだ。


「私はこれよ。」

マイさんは2本のダガーを取り出した。


「あれ? 大剣を使うって聞いてたんですけど。」



「ああ、あれはイライラしたときに使うの。普段はおもいし、持ち歩いてないわ。」


確かにマイさんは獣人だと噂で聞いたが、見た目は華奢だ。

身のこなしで戦う方が向いてそうだ。


「そうなんですか。」


「次は、ダイくんの番だね。」


「僕ですか? 僕は前に言った通り暗黒竜騎士で、戦闘スタイルは……」



ーー僕は考えた。



いつもはネズミ狩りをしているが、その時は指ぱっちんして素手で首の骨を折るだけだ。



その前はオオカミを狩っていたが、サッカーキックでダメージを与え、最後に銅の剣で首チョンパしていた。


しかし、今日は何も持って来ていない。




「戦闘スタイルは、サッカーキックと指ぱっちんです。」



ーーそう言って僕は、昔テレビで見たビックマウスさんの無回転フリーキックを意識して空間を蹴り、最後に指ぱっちんして笑顔で二人の方を見た。


「……あんた、私をなめてるの?」

マイさんがダガーの剣先を向けて来る。


「ひぃっ!!」


「落ち着きなよマイ。だいたいわかったよ。キミはまだ戦闘スタイルが定まっていないんだね?」


「ははは……」

僕は愛想笑いをした。



「なんにせよ、まずはキミのお手並み拝見と行こうか。期待しているよ。」



「任せて下さい。」



「それじゃあ今から日が完全に真上に来るまで時間をあげよう。それまでに手懐けられなかったら。わかるね?」



「もちろんです。」



今から正午まではおよそ三時間位だろうか。



「キミが助けてと言わない限り僕達は手を出さない。ここで見守っているよ。」



「はい。では行って参ります。」

僕は馬達が草を食べている方へ歩き出した。



はた迷惑な黒鹿毛を

退治せよとの命を受け

己が乗馬にせんが為

刀も持たずにいざ、参る!


ーーここが一番緊張する場面だ。

失敗したら、今までの苦労が全て水の泡となる。


しかし、パチンコをやらない人にはなんの事かまったくわからないだろう。



「あれ? なんで僕、パチンコの事なんか知ってるんだろう。」


どこか腑に落ちないが、賽は投げられた。



ーーやるしかない。

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