第17話討伐依頼

「大ちゃん、卒業しても、連絡取り合おうね。」


「気が向いたらね。」


今日僕たちは高校を卒業した。


僕と渡邉は地元の同じ高校に進学した。


ちなみに大水さんも同じ高校だが中学の夏から話していない。


ーー僕たちは頭が悪かった。


みんなが勉強しているときにオナニーばかりしていたからだ。


渡邉の中学の時の夢はミュージシャンだった。


よく僕の携帯に自分の弾き語り動画を送って来たが、練習してるだけ上手いがなんか気持ち悪い歌声だったのを今でも覚えている。


しかし、渡邉は東京の医大生限定の合コンがあることを知り、高校に入ってから必死に勉強した。


そしてなんと目標の医学部に現役で合格した。


僕はというと、公務員の親の力で私立の金さえあれば誰でも入れる地元の大学に入る予定だ。


聞いた話だと、大水さんの親は大手ショッピングモールの代表取締役であり、高校を卒業したらそこの幹部候補として働くらしい。



「帰りにさ、TATUYA寄ろうよ。これからは堂々と18禁コーナーに入れるよ!」


「それ、良いね!」


僕たちは高校最後の日にTATUYAに寄った。


まだ、高校生であるので本当は駄目である。しかも制服を着ている。



「よし、TATUYAまで競争だ!」


「大ちゃん、待ってよ!」

そう言って2人で笑いながら走り出した。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「はようごぜえやす!」


目が覚めた。


今日は悪魔の馬を手懐ける日だ。


「剣は置いていこう。こんなの持ってたら賢い馬は逃げてしまう。」


そう言って、手ぶらで宿を出た。


ーーギルド前には既に二人が立っていた。



「おはようダイくん、調子はどうだい?」


「おはようございます。ぼちぼちです。」


「……はよ。」


「おはようございます。」

二人に挨拶する。



「じゃあ、行こうか。話は歩きながらって事で。」


三人並列になって歩き出した。


「ちょっとあんた、なんで後ろからついてこようとするのよ。話しづらいじゃない!」


「すみません、歩行者の邪魔になると思って。」


「そんなにこの道はせまくないわよ。それにまだ人もほとんどいないじゃない!」



「はい、すみません。」



ーー実は昨日の夜、マイさんをおかずに一杯やったのだ。



一杯じゃなくて、いっぱい。



そのせいで、隣で会話するのが気まずい。



ここ何ヵ月かは色々あって、そんな余裕は無かったのだが、昨日マイさんと握手した時に僕の息子が長い眠りから覚めた。



公衆浴場ではちゃんと身体を洗ったが、部屋でマイさんの手の感触を思い出しながら息子を撫でていたら完全復活した。



僕の射精出来る回数は限られている。

どうせ近いうちに死ぬのだから、やらなきゃ損だ。



「まあそう怒らずに。こんなんじゃ依頼失敗しちゃうよ? キミも違約金を払いたくは無いだろ?」


「……ふん!」


腕くみをしてそっぽを向くマイさんも可愛い。



「それで、報酬の件なんですけど……」



「ん? それは昨日三人で均等に割るって言ったはずだけど?」


「あの、出来れば悪魔の馬を手懐けたいと思ってまして。報酬はお二人で貰って下さい。」



「あの馬を手懐けるか。面白い、本当に手懐ける事が出来たらそうしよう。ただし……」



「ただし?」



「出来なかったら、あの馬は殺す。報酬が良い分、違約金も高いんだ。これだけは譲れない。良いね?」


「はい、わかりました。」




「あんた、ホントに出来ると思ってるの?」

マイさんが僕をにらみながら言う。


「ええ、まあ。」



「じゃあ、どやって手懐けるのか説明してよ。」


ーーそんなこと、考えて無いに決まってるだろ。

そもそも黒い悪魔をこの目で見たことも無いんだから。


「今は言えません。でも、必ず手懐けてみせます。」


「ふーん。じゃあ、出来なかったらどうするの?」


「どうするとは?」


「できなかったときの罰はどうするのってこと! パーティーメンバーに作戦も伝えないで失敗したら、責任とるのはあたり前よね?」


この女、見た目は良いのに性格が悪い。


ーーこいつはおそらく処女だろう。


「わかりました。失敗したら、マイさんの奴隷になります。契約期間は僕が死ぬまで、役割は何でもやります。バター犬でも肉奴隷でも、何でも良いです。」


「バター犬?あんた……いってる意味わかってるの?」


「もちろんです。どうせもう少しで死ぬので。何もこわいものはありません。」


「え、ダイくん死ぬの? 何で?」

急にイケメンが話に混じって来た。


「これも詳しくは言えませんが、不治の病におかされていまして。この身体には、穢れた血が流れているのです。」


「そうか……知らなかったよ。僕に出来ること、何かないかい?」


「そうですね。僕が死んだら、遺灰を海に撒いて貰えると助かります。」


「海に? すまない、いくら何でも海は遠いよ。それこそ、ここからだと往復で一年近くかかってしまう。Cランク冒険者の僕が、そんなに長いこと街を離れる訳にはいかないんだ。」


「そうですか。なら、お気持ちだけ頂いておきます。」


「……すまないね。」


「いえ。ところで……」

僕はマイさんを見る。


「……何よ?」


「もし僕が悪魔の馬を手懐ける事が出来たら、マイさんは何をしてくれるんですか?」


「はあ? なんで私があんたに何かしなくちゃならないのよ?」


「僕は自分の身体を賭けているんです。であれば、マイさんも何か賭けないとフェアじゃないでしょう?」


「……わかったわよ。奴隷はムリだけど、それ以外ならなんでもするわ!」



ーーニチャア


僕は不敵に笑った。


「二人とも、落ち着いて。そんな約束しても、誰も幸せになれないよ!」

イケメンが言う。


「いいえ、これはわたしと彼の問題よ。あなたは口出ししないで。」


「はあ……わかったよ。好きにすればいい。」



そんなこんなで件の草原に着いた。




「それにしても、ダイ君。君の笑う顔、邪悪だね……」

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