第15話コスパ最強
僕はギルドを出て、下水道へと向かった。
エイオンの街ではたくさんの人が生活している。
そのため、生活排水も多く、下水道にはネズミが大量に生息している。
「それにしても凄い臭いだ。」
鼻がおかしくなりそうだ。
「渡邉なら、この臭いでも抜けるんだろうな。」
排水の中には、人間の排泄物も混じっている。その中には当然女性のものもあるだろう。
ネタにするには十分だ。
ーーしばらく歩いていると、生き物の気配がした。
「そろそろかな?」
そう言うと、気配のした方に意識を向け、指ぱっちんをした。
「パチン!」
すると平衡感覚を失ったネズミ達が出てきた。
ーーそう、僕の新必殺技だ。
声を出す方が威力は高いのだが、小動物や耳の良いやつにはこれで十分だ。
何より指ぱっちんで敵を倒すのは格好いい。
暴れ狂うネズミにとどめをさすと、それを大きな布袋に積めた。
ネズミ狩りの最大の利点は一体あたりの賞金にある。
魔獣はものによって賞金が決まっており、熊などの大型獣は一体あたり銀貨五枚、オオカミなどの中型獣は一体銀貨二枚、ネズミなど小型のものは一体銅貨七枚である。
つまり、ネズミ三体でオオカミ一体の賞金を越えるのだ。
ーー駆除証明の為には獣の頭を持ち帰る必要がある。
オオカミ狩りをした時は頭を切り落とす作業が気持ち悪いし、時間がかかッた。
その点ネズミは小さいのでそのまま持ち帰っても良いし、首の骨を折れば血で汚れる事もない。
ーーネズミがコスパ最強なのである。
僕はネズミを乱獲していく。
こいつらは他の魔獣と違い放っておくと直ぐ増えるので、いくら狩っても問題ない。
本来は臆病ですばしっこく、捕まえるのは大変なのだが、僕の音魔法とは相性がいい。
おかげで稼がせてもらっている。
「今日はこのくらいでいいかな?」
袋はだいたい一杯になった。
僕は冒険者ギルドに戻ることにした。
ーーギルドのセルフカウンターに向かう。
ここでは最大四人が同時に精算をすることが出来る。
カウンターの前には物置台があり、そこに冒険者カードの差し込み口がある。
ーー冒険者カードを差し込む。
まずは魔獣の種類を選択する。台の前には魔獣の名前が書かれたボタンがあるのだ。
魔獣の種類を選ぶと、一匹ずつ台に載せていく。
全てのネズミを載せると、決定ボタンを押す。
すると冒険者カードに勝手に今回の報酬が加算されるのだ。
台に載せた魔獣の死骸はセルフカウンターにいるお兄さんに渡すと処分してくれる。
ーー不正出来ないのかって?
聞いた話だと、セルフカウンターのお兄さんがちゃんと見ているらしい。
前にも魔獣の数と報酬が合わないという苦情や、同じ位の重さの石ころを載せた人がいた。
しかし、魔獣の死骸はその日の閉店まで保管されているし、お兄さんが目を光らせている。
僕の知る限りでは、計算間違いなど見たことがない。
それに、疑うのなら最初から正規のカウンターに並べば良いのだ。
そういうわけで精算を終えるとギルドを出ようとした。
ーー入り口の扉に手をかけた時、後ろから声をかけられた。
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