第14話冒険者ランク

ーー目を開けると、宮殿のような場所にいた。


僕はその宮殿の一番奥の豪華な椅子に座っている。


目の前には階段があり、ここからは部屋の内部を見渡す事が出来る。


「ケン王様、して、いかがなさいますか?」

僕に宰相のジャギーが聞いてきた。


「うぬはどうしたい?」

僕は答えた。



「もちろん、憎き人族どもを皆殺しにしたく存じ上げます。」



「であるならば、やることは決まっておろう。みな、戦の支度をせい!」



「「はっ!ケン王様、万歳!!」」



ここは玉座だ。

僕の名前はケン マツモト


ーー魔族領の王、つまり魔王だ。



「楽しくなりそうね。」

隣に立っていたユリアンヌが長く美しい黒髪を掻き揚げながら言った。



「ふん、ごみ虫共をどれだけ殺そうと、ワシの気が晴れる事はない。」




「あら、そういう割に口がにやけてるわよ?」



「気のせいであろう。」




これから魔族と人族の戦が始まる。


これが最後の戦い。おそらく数年がかりのものになるだろう。

今度こそやつらを根絶やしにしてくれる。



ケン王が強く拳を握ると、手の甲に青く光るドラゴンの紋章が現れた。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「おはようさん」


部屋には誰もいないが、最近言葉を発する機会が少ないので、そう呟く。

ボケの防止だ。

人は1日五百単語以上発しないと言葉を忘れていくらしい。

英語を練習して喋れるようになっても、使わないと忘れてしまうのと同じだ。


「さあ、とっとと朝食を済ませて仕事にいかなければ。」


そう言って、僕は支度をし朝食を食べに宿の一階に向かった。


宿の一階には食堂が併設されてあり、朝は六時から、ラストオーダーは夜十時だ。


食堂のおばちゃんたち、お疲れ様です。



「おばちゃん日替わりエイセット一つ。」


「あいよ。」



僕は朝と夜この食堂で食事をしている。


中でも日替わりエイセットを頼む事が多い。


このエイセットは、銅貨5枚で食べる事が出来る。


しかもパオンポイントがいつも2倍貰える。


ーーこの世界の通貨は金貨、銀貨、銅貨の三種類ある。

日本円に換算すると、金貨一万円、銀貨千円、銅貨百円といったところだ。


ここエイオンでは、パオンポイントカードなるものがあり、電子決済機能のようなものも付いている。


持っているとポイントが入ったり、何よりお金が嵩張らないので持っている人も多い。



エイオングループは冒険者ギルドと姉妹提携を結んでおり、ギルドカードのポイントをエイオンで使う事も出来る。

金貨一枚一万ポイント、銀貨一枚千ポイント、銅貨一枚百ポイントだ。


「日替わりエイセットおまち。」

おばちゃんが朝食をお盆にのせて持って来た。


「頂きます。」

今日は米に焼き魚と漬け物、野菜のスープだ。

銅貨5枚でこのボリュームは凄い。

僕はペロリと朝食を平らげると、レジに向かった。

「ご馳走さまでした。ポイントでお願いします。」


石盤に冒険者カードをかざす。



「パオン」



昨日はエイオンの日だったので、カードには1万ポイント近く入っている。


「またお願いします。」


その足で僕は冒険者ギルドに向かった。



ギルドに入ると、既に多くの人が受付カウンターに並んでいる。



僕は入り口横の石盤に冒険者カードをかざし、一日一回の来店ポイントの十ポイントを受け取り、受付カウンター横の掲示板を見に向かった。


ーー特に変わった依頼は無いようだ。


僕は基本的に受付には並ばない。


依頼は個別依頼と常備依頼の2種類あり、個別依頼は個人が依頼カウンターで受け付けし発するものであり、報酬も依頼主が払う。ギルドは手数料を貰う仕組みだ。


常備依頼はギルドが発するもので、常に出ているので受け付けする必要がない。


主に魔獣駆除や薬草採取がこれにあたる。


ーー僕はいつも魔獣駆除をしている。


個別依頼は報酬は良いが、職業指定やランク指定があるのでなかなか受ける事が出来ない。

それに、この列に並んで受け付けなくてはいけないので、倍率が高いし、失敗すると違約金が取られてしまう。


その点魔獣駆除は失敗しても稼ぎが減るだけなので、まだ気楽だ。


しかし、魔獣駆除はランクが上がり辛い。



冒険者には、S~Eランクあり、最初はEから始まる。



例外として王都の学校を卒業した人は、Cランクから始まるが、卒業生は冒険者より稼ぎの良い職に就くので滅多にいないそうだ。



ちなみに僕はまだEランクだ。


この辺の魔獣は比較的弱く、何体倒してもDランクに上がることは出来ない。


魔族領の近くだと、もっと強い魔獣が多くいるので、直ぐにEランクになれるそうだが、そちらの冒険者は死亡率が高い。



ランクといっても、ただの名誉みたいな物であり、特典も指名依頼が入る事がある位で、無理に上げる人も少ないそうだ。


この街の冒険者は殆んどがEランクだ。



僕はギルドを出て、早速魔獣駆除に向かった。

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