第13話冒険者ハンドブック
今日は月に一度のエイオンの日だ。
この日に商店街で買い物をすると、ポイントが2倍貰える。
僕は肉屋で保存の効く干し肉を買いだめすると、レジの横に設置されている石盤に冒険者カードをかざした。
「パオン」
僕の冒険者カードにポイントが加算された。
「今日も疲れたな……明日も早い、帰って寝よう。」
僕は宿屋に戻ることにした。
ーー冒険者になってから、二ヶ月がたった。
仕事の方も、軌道に乗ったと言っていいだろう。
最初は全てが上手くいかなかった。
その日の稼ぎが、一日の食費で無くなってしまうこともあった。
ーー冒険者ギルド登録した日の事だ。
「これで登録完了です。最後に当ギルドで登録して頂いた方全員にエイオングループ加盟宿泊施設で使える商品券をお配りします。」
そう言ってミロさんは金券を七枚くれた。
金券には、一日宿泊無料券と書かれている。
「あの、この店の前の宿屋でも使えますか?」
「この街の店は基本全てエイオングループに加盟しています。闇営業の露店以外なら殆んど使えるはずですよ。」
よかった。これで一週間は宿泊出来る。
「あと、どうやったら依頼を受ける事が出来ますか?」
「はい。必要な事はこの冒険者ハンドブックに書かれています。時間のある時にお読み下さい。」
僕は手のひらサイズの冊子を受け取った。
結構分厚い。
紙を惜し気もなく使っている。
この世界には印刷技術もあるようだ。
「それでは、末長くどうぞよろしくお願いします。」
ミロさんは90度にお辞儀をした
「はい。よろしくお願いします。」
僕も頭を下げると、ギルドの端に設置されている、休憩スペースという場所の椅子に座ってハンドブックを読んだ。
ーー目次を見ると、冒険者ギルドの生い立ちから稼ぎ方、冒険者のマナーまで事細かく書かれているようだ。
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~冒険者の生い立ち~
今からおよそ1000年前、この世界には高度な機械文明が栄えていました。
その機械のおかげで肉体労働が減り、飢えることもめったにありませんでした。
人々は趣味というものを持ち、色々な娯楽施設があり、体を動かす為にスポーツという遊びに熱中していました。
ーーしかし、それは必ずしも幸せな時代ではなかったのです。
ニートと呼ばれる特権階級の者達が現れました。
彼らは仕事をしなくても生きていくことが出来ます。
親の収入だけで生きていけるため、一日中家の中で過ごしていました。
ーーしかし、その生活は長くは続きませんでした。
医療技術が進んでいるとはいえ、当然親の方が早く死にます。
彼らは親が死んでから働こうとしましたが、若い頃に何もしてこなかったため、体は弱り社会性を失っていました。
また、その時代の人は機械に仕事を奪われ、多くの人が職を失いました。
ーーこの時代を歴史書ではストレス時代と言います。
現在私たちは体の中に魔素を蓄えています。
しかし、ストレス時代の人々は魔素ではなく、ストレッサーというものを蓄えていました。
また、その時代はストレッサーの研究が難航しており、許容量以上にストレッサーを蓄えている人が多くいました。
この世界の常識ですが、魔素を蓄え過ぎると体に不調が出ます。
ストレス時代の人々はストレッサーの放出方法を知らなかった為、たくさんの人が体の不調を訴え初めました。
そこで登場するのが、私たち冒険者ギルドです。
当時はハローワークと呼んでいました。
「どげんかせんといかん。」
私たちの創業者、タロウ ワタナベの口癖です。
こうして機械文明が滅んだ後も、冒険者ギルドだけは残り続けているのです。
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「なるほど。冒険者ギルドの高度な技術は、機械文明からの長い歴史の賜物って事か。」
しかし、まだハンドブックの1ページ目だ。あと百ページ近くある。
一週間で読み終わるのだろうか…
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