第11話大の大冒険、遂に始まる

ーーあれから一週間が経った


いまだに僕は村長さん家にいる。


村長さんが、もう少しゆっくりしていけとうるさいので、お言葉に甘えてしまった。


村長さんは魔族に対して後ろめたさがあるので、せめて関係ありそうな僕に何かしてあげたいのだそうだ。


「ていうか魔族なんていたんですね。」



「何を言っておる。何度も説明しただろう。」


村長さんは話が長いので、僕は八割がた聞き流している。


ちょくちょく大事な話が混ざっているので困りものだ。


ーーこの世界には、人族・魔族・獣族が存在している。


どれも人族との違いは殆んどなく、魔族は魔法が得意で獣族は身体能力が高い。


魔族はみんな黒髪でスタイルがよく長生きで、獣族は毛深くて体格がいい。


しかし、人族にも黒髪はいるし、スタイルがいい人も、体格がいい人もいる。


他にも違いはあるようだが、混血もいるのでパッと見わからないそうだ。


モンスター等の魔獣と言われる存在は、魔族とは関係ないらしい。


この世界には魔素があるので強力なだけで、ただの野性の動物達だ。




「取り敢えず、今日こそ出発しますね。お世話になりました。」


「マリオ達も来月またこの村に来るのだ。用があるならここにいた方が確実じゃろ。」




「いえ、僕の余命がどれくらいなのかわからないので。時間を無駄にしたくないんです。」


正直マリオ達の事はもうどうでもいい。



目の前にいたら必殺技のレイガンを頭に撃ち込む自信はあるが、一週間が経ち、そんなことの為に使う時間が勿体なく感じてしまった。



「何があったかわからんが、大事な用事なのではないのか?」



村長さんには詳細を話していない。

計画を止められる能性もあったし、何より性病持ちだとばれたら同じ風呂を使わせて貰えなくなる可能性があったからだ。


「もう、いいんです。これから大きい町に行って、冒険者になろうと思います。」



どうせシェリーも長くは生きられないだろう。

地獄で苦しみを味わうのに、わざわざ僕が殺す必要もない。


「そうか。ならばこれを持っていけ。」


村長さんは自分の部屋に戻ると、持ってきた銅の剣を僕に渡した。


「それから、そんな格好で外をうろつくと物乞いにしか見えんぞ。」


僕は白シャツにトランスしか装備していない。

マリオに金貨一枚で制服を売ったからだ。



「昔着ていた服をやろう。物は古いが素材は悪くないはずじゃ。」


僕は布の服と皮の胸当てを装備した。


パツパツだ。


「ありがとうございます。」


着ているうちに服が伸びてくれることを祈ろう。


「最後にこれを。冒険者ギルドに行くのならこれを渡すといい。」


一通の手紙を貰った。


「それでは、お元気で。」



「気を付けるんだぞー!」



村長さんが村の入り口まで見送ってくれた。手を振っている。


僕も手を振り返し、村を出た。

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