第4話森にいる僕は森ガールではなく、森マンなのかな?

目を開けると森の中にいた。


急いで周囲を確認するが誰もいない。


「今回は物騒な事にはならなそうかな?」


油断は出来ないが、どうせ夢の中だ。


たとえ死んでも目を覚ませば現実に戻るだけ。



「しかし、自分の意思で動ける夢って初めてかも。」




そう、今回の夢は自分の意思で体を動かせるのだ。


自分の体を確認すると、僕は制服を着ているようだ。


ポケットの中には渡邉からもらったゴムが入っている。


僕は獣道の上にいる。


「とりあえず、進んでみようかな。」


自分の夢とはいえ、こんなにリアルな世界には興奮する。


「夢の中なんだし、もしかしたら魔法とか使えたりして!」


我ながらいいことを考える。


自分の潜在意識が造り出した世界なら、何でも自分の思い通りになるのではないか。



両手を前にだす



僕は体の中に流れる気を探り、それを両手に集めた。



「マダンテ!!」




しかし、何も起こらなかった。




「あれ?最後のファンタジーの方だったかな?」




気を取り直してもう一度



「グラビガ!!」


しかし、何も起こらなかった。



そもそも体の中の気なんてもの、感じられはしなかった。


どうやら僕の潜在意識は魔法使いにはなれないと決め込んでいるらしい。



「逆に今最強呪文発動したらヤバかったし、世界滅ぼしちゃうかもだし。結果オーライだね!」


一人納得して歩き出した。




少し進むと、初めてのモンスターとエンカウントした。




獣道の横から急に飛び出してきた。




「にゃお~」

黒猫だ。



「ひぃっ!! ポマード!! ポマード!!」




黒猫は逃げ出した。




「まさか魔法の発動条件がモンスターとのエンカウントだとは。迂闊だった。」


そう、ゲームでも平時に使える呪文は限られている。



恐らくその時の状況に合わせた魔法しか発動しないようになっているのだろう。




「さすが僕、夢の中でもちゃんとしたシステムを作っているとは。」


僕は天才だった。もっと自分に自信を持つべきなのかも知れない。



「ガァオオォッ!!」

モンスターが現れた!


「えっ? まだ移動してないよ!?」



今度は大型犬くらいあるオオカミ型の魔獣だ!


「ヤバい、今のレベルでは勝てない!」


僕は見た目で判断した。人は見た目が9割と聞いたことがある。恐らくこいつは強い。


松本は逃げ出した。



しかし、まわり込まれてしまった。



「ど、どうしよ……」


オオカミは牙を剥き出しにして、今にも飛び掛かって来そうだ。





闘うしか、ないーー




しかし、平和な国ですくすくと育った僕は喧嘩すらしたことがない。


「ガゥゥゥッ!」

オオカミの攻撃



素早く近づき、僕の足に噛みつこうとする瞬間ーー



僕は横に飛んだ。




両手を上げて横っ飛びしたので、無様に地面に倒れたが噛みつき攻撃は避ける事が出来た。



「あれ? もしかして運動能力上がってる?」


これはいけるやつやーー


素早く立ち上がり、次の攻撃に備える。


怖がらずにオオカミを観察すると、なんてことはない。


集中したら、思ったより動きは遅い。


「違うな。僕が速くなったんだ」



世界がゆっくりと動く。



オオカミの攻撃




僕は懲りずに近づいてきたオオカミの右前方に踏み込んだ。


すかさずサッカー蹴りをオオカミの腹に叩き込んだ。


「キャウン!!」



オオカミは地面にぶつかる瞬間に回転し、そのまま逃げ出した。


まさかの俺TUEEE世界だった。




ん? モンスターは倒さないと経験値が入らない?



死んだら気持ち悪いしいいよ、俺TUEEEだし。


僕はびっこを引いて懸命に逃げるオオカミに向かって叫んだ。





「速く逃げないと殺しちゃうよぉ、子犬ちゃん? さん、にぃ、いち、バンッ!」


グチャッ


オオカミの体が爆発した。



グロい。


脅しのつもりだったのに、まさかの魔法が発動してしまった。




「えっ? 僕は魔法使えるの? 使えないの? どっち?」




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