第3話 蠢く真なる黒

俺の母親だったのだろうか。

巨大な存在が消え、俺はぼうっとしていた。

眼下には惑星が回ってる。


あれは女媧、何かが教える。

俺の中にある知識。


女媧。

聞いた事が有る。

中国の伝説だったかな。

神様みたいな存在じゃ無かったっけ。

『封神演義』にも出て来たよな。

もっとも俺はジャンプマンガの『封神演義』しか知らんが。


宇宙空間に居る俺。

地上に降りる事って出来るのかな


可能だ。

そのまま地上に意識を向け動けばいいだけ。

俺の中の何かが教える。


なんかこれ、落ち着かねーな。

もうちょっと温かみ持たせらんない。

サポートロボットとかPCのアシスタント、コルタナちゃんみたく。


「分かりました。

 最適化します。

 ……、……、……。

 はーい、わたしロゴス知恵ちゃんよ。

 よろしく、ア・ナ・タ」


ロゴス知恵ちゃん。

ダサイような、ダサ可愛いような、単にダサイような。


「アナタの知識、脳裏に有った記憶から探ったセンスで命名してるのよ。

 これに突っ込んだらヒトリボケヒトリツッコミ、悲しき一人漫才よ」


……まーいーか。

そのうち慣れるだろう。


俺は少しづつ地球へと降りる。

そういやこれ地球なのかな。


「アナタの知ってる地球じゃないわね。

 日本も無いし、アメリカ大陸も無いわ」


「最大の大陸はあれ、ゴンドワナね」


ロゴス知恵ちゃんが指差す。

実際に指を伸ばした訳じゃ無いけど、その大陸が俺の視界にクローズアップされる。

確かに大きい。

この惑星の半分くらいは占めてるんじゃないのか。


俺は徐々に地表に向かい降りて行く。

しかしその俺に近付いてくるモノが有る。


黒い雲。

普通なら雲が暗いと言っても白が暗くなった程度。

灰色だ。

でもその雲は真っ黒だった。

闇そのものを煮詰めた雲の様な物体。 




「これは一体なんだ」

「間違いなく邪悪な気配」


ヒト族の英雄たちは騒ぐ。

恐ろしく邪悪な気配が彼らの頭上に現れ蠢く。

その前に有った強大な力とは別物。


「これは……この気配を俺は知っている」


『黒き殺戮者』が独り言のように呟く。

堕天使ルシファーに育てられた少年。

その性は生来邪悪。

しかし生死を掛けた戦いの中で目覚めた少年。

育ての親ルシファーを斬り英雄となった。

邪悪を斬る邪悪。

呪われた闇の戦士。

その真名は誰も知らない。

黒き殺戮者とだけ呼ばれている。


「この気配……。

 これは悪の中の悪。

 ヒトの持つ全ての悪の根源」


「アンラ・マンユ!」

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