第4話

あれ、やっぱり俺のオフクロだったのかな。

目の前で母親が死んでしまったのかな。


「母親という言い方が正しいか分かりませんが、アナタを産み出したモノでは有るでしょう。

 あれは真性竜、この惑星そのもの。惑星の持つ意識、無意識の集合体。

 純粋な意味での生物では有りません。数億年を生きた物体が新しい個体を産み出し全ての知識を引継ぎ消えて行ったのです」


んじゃ俺はその真性竜の個体に転生した日本人サラリーマン。


「マスターの自意識が己を日本人オッサンと規定するならそう受け止めるのもいいでしょう。

 しかしアナタの意識、異世界から現れた日本人の意識という外的存在が真性竜、女媧と触れあい何らかの化学変化を起こした。その上で産まれた新たなる存在がアナタ。日本人オッサンと女媧の子供がアナタの意識と記憶を引き継いだ。

 客観的に見るとその方が正しい観方と思われますね」


えーと。

つまり俺は本当は俺の子供ってコト。

そして俺の妻は女媧。

あのデカイ竜。

俺あんなのと結婚して子供作ったの?!


だからかな、所々記憶が無い。

俺は日本人としての名前も思い出せない。

何故死んだのかも覚えてない。

中年で死んだのかな。


「いえ、マスターは老人という年齢まで生きてましたよ。

 その記憶が有ります」


ホントだ。

思い返すと皺くちゃになった俺の顔が思い出せる。

身体が思い通りに動かなくて大変だった覚えもある。

結婚した記憶が無いな。

そうか。

俺、一生独身だったか。

それが何のはずみか。

こんなところで竜と結婚して子供を作るとはな。


「マスターの意識がオッサンなのは、人生の中間辺りを選んでるか。

 それとも自分が生き易そうな意識の自分を選択してるのかもしれませんね」


ふーん。

確かに若い頃は楽しくも有ったけど、苦しい事も多かった。

中年位が一番生き易かったかも。


にしてもオッサン、オッサン五月蝿いな。

俺はロゴス知恵ちゃんにツッコミを入れる。

と俺の手にハリセンが現れる。

紙を折り曲げ扇子状にしたアレだ。



「おい、何時まで我を無視する」


目の前の黒いのが言う。

闇の様な黒。

一切光の無い物体。


それが俺の目の前にいる。

地表に降りようとする俺の進路妨害だ。

なんだよ、ジャマ。

陸地が見えないじゃんか。


「我こそは邪神アンラ・マンユ。

 貴様は今この場で消えて貰う。

 恐ろしいまでの神聖値。

 目障りだ」


「抗っても無駄だ。

 我に攻撃は一切通用せぬ。

 我にダメージを与えられるのは闇の攻撃。

 邪悪属性のみ」



そう。

『黒き殺戮者』は一人思う。

「アンラ・マンユを倒せるのは世界に俺だけ。

 俺が邪悪なる存在としてこの世に生を受けたのは

 あの邪神を討つ為なのかもしれない」



俺、地上に降りたいんだよね。

ジャマ。

そんなカンジで俺はハリセンで打つ。

黒いやつを。

パコンっと。


「グゥワアアアアアアアアあああああ!!

 馬鹿な、これは邪悪属性の攻撃!!」


一瞬で黒い雲が消える。

良かった。

これで地上に降りられる。



英雄達。

大聖堂に集まった英雄達は全員背筋を跳ね上げる。

凄まじいまでの邪悪なエネルギー。


「これは、これは…」


『未来を見通す唯一の聖母』が言う。


「この邪悪値は!」


「この邪悪値は…」


「およそ、4億!!!!!!」


『黒き殺戮者』が膝を曲げる。

腕を上下にする。

そして叫ぶ。


「シェーーーーーーー」

「シェーーーーーーー」

「シェーーーーーーー」


もちろん全員がシェーポーズを取っていた。

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