LV5 怪しきアタル、誘われる洞窟

【エッジ】 LV20

職業【忍者】

〈HP〉120 〈MP〉200

〈STR〉180(60) 〈VIT〉40 〈INT〉240(120)

〈AGI〉330(110) 〈DEX〉220 〈LUC〉C

ドライブ【神雷】

『一定時間、自身が神速になる。周りがスローモーションになり、自由に動けるようになる』

武装【疾刀】×2 STR30×2

副武装【ベレッタ】属性:火&氷 STR20×2 装弾数15発×2 リロードタイム4秒

防具【忍者装束】 AGI50

特殊防具【水龍王の籠手】×2 強化:水 耐性:火 INT40×2 AGI30×2


【あい】 LV10

職業【メカ少女】

〈HP〉200 〈MP〉100

〈STR〉200(80) 〈VIT〉150(30) 〈INT〉120

〈AGI〉150(30) 〈DEX〉120 〈LUC〉X

ドライブ【ビギナーズラック】

『LUCがXランクになる。常に発動する』

武装【ヘカート・ヘヴィカスタム】 STR50 装弾数7発 リロードタイム10秒

副武装【ベレッタ】属性:火&氷 STR20×2 装弾数15発×2 リロードタイム4秒

防具【初期装甲】 STR30 VIT30 INT30 AGI30


【リン】 LV20

職業【ナタク】

〈HP〉250 〈MP〉300(50)

〈STR〉270(70) 〈VIT〉180 〈INT〉280(100)

〈AGI〉130(50) 〈DEX〉80 〈LUC〉D

ドライブ【アルトロン】

『二頭の火龍を使役する』

武装【青龍刀・火焔】属性:火 STR70

防具【赤龍の衣】強化:火 耐性:氷 MP50 INT100 AGI50


 やっぱり他の職業のVITって高いんだなー。

 俺のHPもそうだけど、【忍者】のHPとVITの低さ、どうにかならない?


 俺は絶賛、AGIの高さを活かして囮中です。

 俺を追ってきているのは、ビッグベアだ。

 熊さん、こちら、手の鳴る方へ、といった感じで確実に誘導する。

「あいッ! こっちに誘導したぞッ!」

「わかったッ! 今、狙い撃つからッ!」

 タァン! といった銃声が響いたと同時に、ビッグベアの頭部に風穴があき、光となって消えていく。

 そんな銃声を聞いてか、ボアの群れがこちらに押し寄せてきた。

「よしッ! 群れの雑魚どもも頼むッ!」

 エッジが言ったと同時に、あいが一匹ずつ仕留めていく。

「はいはいッ! あ、ごめんッ! 一匹は倒せないかもッ!」

 群れのボアが7匹いたことに気づく。あいのライフルが7発、さっきのビッグベアに一発使ってしまった。

「わかったッ! 俺が仕留めるッ!」

 逃げから反転、攻勢に転じる。あいが最後の一発を撃った後に、残った一匹を氷の斬撃を飛ばした。

「【氷蒼刃】ッ!」

 氷の斬撃を受けたボアはそのまま突進しながら、光となって消えていった。消えたことを確認すると、ボアの進路上だった茂みからあいが出てきた。

「助かったよぉ。よかったぁ」

 今回はギリギリだった。あのままだったらあいは巻き添えになったから。

「そうだな。今手に入ったのは?」

「ちょっと待ってて――」

 俺たちはいつも通り、ドロップしたアイテムを――。

「待って待ってッ!? 今のが平常運転なのッ!?」

 今の戦闘に手を出さなかったリンが俺たちの間に入り込んだ。

「そうだけど、どうしたの、リン?」

「どうしたんだよ、あいのドライブのことは話しただろ?」

 実際、ラストアタックではなく、戦闘に参加したらそれだけでドロップが確定するからな。

「そりゃ、そうだけど……こんな簡単なのッ!?」

「簡単なものか。俺のHPとVITを見て、そう言えんのか」

 一歩間違えれば死、だからな。

「すでにエッジはともかく、あいももうビギナーじゃないんだけど……」

「いいじゃないか。お前に還元する予定だから。あ、でもレアドロップは譲らんからな」

 リンに念を押していく。リンはがっつく素振りがないことから要求しないと判断する。

「レアドロップは装備よね? あいって、ゲーム初めてからずっとその装備のままなの?」

「うん……。アタルさんから貰ったライフルとキラーたちからドロップした拳銃しかないんだよ?」

 実際一週間経って、あいの見た目、防具は変わっていない。レアドロップで装備は手に入るが、どれもあいには使い道のないものだった。まあ、初期装甲だけでもステータスを三つ少なからず上げているから仕方ないだろうが。

 俺としても【水龍王の籠手】以外に使い道がなかった。どれもVITが上がるものばかりで、興味を抱かなかった。まぁ、そのおかげで水系統のスキルや魔法が習得しやすかったがな。

 リンの特殊な防具はDEX,LUCの低さから見て、ダンジョンで手に入れたか、経済力でプレイヤーから手に入ったかのいずれかだろう。それ以上にねだる様子もないからいいが。

「【メカ少女】のLUCの低さってこういうことじゃねぇのかな?」

「なるほどね。装備自体が少ないと言いたいわけね」

 リンの言うことに頷いた。それなら、元のLUCがEなのも納得できる。もしかしたら外れ職業の可能性がある。特に、おしゃれをしたい、あいにとっては。

「いい加減、色んな服を着たいよ」

 こういうことを言うあたり、外れ職業かもしれないな。

「選んだの、あいだろ」

「そりゃ、そうだけどさ」

「頑張って探すしかないわね。どこに転がっているかわかんないけどさ」

「そっかぁ。おしゃれはできないかぁ」

 落ち込むあいの肩を何気なく叩いてみる。

「しょうがないよ。【ビギナーズラック】でなにか手に入ることを祈るしかないって」

「うん、わかってるよ。別にこの初期装備が嫌ってわけじゃないよ」

「ま、大砲も付いてるからね」

「ま、不足の事態に備えられるからな」

 実際、この大砲には何度救われたかはわからない。ダメージは高くないが、目暗ましに、陽動に、多岐に渡って運用されているからな。

「しかし、その様子だと、モンスター=金になるじゃない。羨ましい限りだわ」

「本当ですよ。僕なんて、ドロップ率が少ないんですから」

 リンに同意する男の声ッ! まさかッ! しかし、姿が見えないッ!

「ここですよ、ここ」

 声の方へ俺たちが見上げると、樹の太い枝に腰掛けている帽子とスーツ姿が見えた。

「アタルさんッ!」

「「げッ、アタル」」

 ヘカートをくれた恩人と出会って喜ぶあいに対して、俺とリンはあの黒虫を見つけたような顔をする。気が合うな。

「アタルさん、どうしたんですか?」

「いやぁ、知っている声がしたものですから」

「それでついてきちゃったのね……」

 その言葉から、アタル帰ってくれないかなあ、というリンの意思が伝わってくる。

 言いたいことはわかる。俺だって同じ気持ちだもん。

「アタルさんってもしかしてLUCが低いんですか?」

「そうなんですよぉ。だから折り入って頼みがございまして――」

「「あいッ!」」

 俺とリンはあいを引っ張ってアタルから遠ざけた。

「ど、どうしたのッ!?」

「あい、いくらなんでもお人好しが過ぎるってばッ!」

「そうよ。アタルの言うこと聞いてロクなことなんて……ッ!」

「それなら、ご心配いりませんよぉ」

 速いッ! アタルの奴、いつの間に距離を詰めて来たんだッ!?

「今回の頼みはあなた方三人へ借りにしますから」

「借り、だと?」

 どういうことだ? 話がさっぱり見えんぞ。

「僕、実はあるレアドロップアイテムが欲しくてですねぇ。そこで、LUCの高い人を探していたんですよぉ」

「なるほど、わたしのLUCが目当てなんですね」

「ええ、お恥ずかしい話、あなた方の力が必要なんです」

「わかりました。わたしたちで協力できるなら――」

「「ちょちょちょちょッ!」」

 俺とリンは快諾するあいを止めに入る。

「なんで受けることにしたんだよッ!」

「いいッ!? あいつは人を食い物にするような奴なのッ! どういうことになるか――ッ!」

「あのぅ、受けてくれるかは任せますが。せめて、僕の耳に入れないようにしてくれませんか?」

 アタルの注意に、俺たちは距離を遠ざけようとするが、あいの決断は揺るがなかった。

「いいのッ! わたしが引き受けたんだからッ! そこまで言うなら来なくていいよッ!」

 その発言に、リンと顔を合わせてガックシと肩を落とす。

 あいがこうなったら、折れることはないのだ。

「わかった。ついていくから、離れようとしないでくれ」

「ただし、充分に気をつけなさいよ?」

「うんッ! 二人とも来てくれるんだねッ!」

 リンの忠告を聞いているのか、疑っているが仕方がない。

「こっちですよ。あいさん……、おや? お二人も来てくれるんですか?」

「「アンタを信用したわけじゃない」」

 リンとはこういう時は気が合うんだよな。

「それは結構。では、ご案内しましょう。

「はいッ! アタルさんッ!」

 俺とリンは先導する二人を見逃さないように追っていった。


 しばらく追って行くと、洞窟まで辿り着いた。

 というよりかは、なんらかの遺跡のようにも見える。

 朽ちてから大分経っているのか、所々が苔や植物が生えている。

「ここはどこなんだ?」

「えぇ、命名させてもらえるのなら、忘れ去られる遺跡、としましょうか」

 ダンジョンの名前を訊いたつもりだが、アタルが命名しだしたぞ?

「名前、ないのか?」

「ええ、ここにはダンジョンと呼べた場所ではございませんので」

「じゃあ、なにがあるのよ? あいを引っ張り出してまで、何の用?」

「ええ、それはですね……」

 ごくりと固唾を飲み込んだ俺とリンは、ジッとアタルを見ていた。

 アタルはそれを見て、なにを嘲笑ったか、人差し指を立てた。

「秘密、にしておきましょうかね。今は」

 キレかけた。少なくとも俺は。

 しかし、リンの沸点が俺より低く、掴みかかろうとしたのを俺が止めた。

「なんで止めるのよッ! エッジッ!」

「よせ、リン。PK行為だ」

 今のアタルは、一般プレイヤー、なにか犯罪をしたわけでもない。

 ただ腹立つのは事実だが、ここでリンが殴りかかるほどでもない。

 事実、無害のプレイヤーであることに違いない。

「……ッ! わかってるわよッ!」

「俺が止めなかったら危なかった気がするけど……」

 まぁ、いいか。

 なんにせよ、リンの暴力行為は止められたわけだ。

 アタルの奴、誘ってきたのか?

「いえ、すいません。あれこれ言うより、ついてきてくれればわかると思ったので」

 アタルもアタルで、紳士的に謝ってるぞ。

 流石に内心焦ったのか、なんなのかは知らんが、リンの矛を収めることができた。

「フン、最初からそう言いなさいよ」

「だから秘密、と言ったんですよ」

「まったく、アンタは……ッ!」

 リンがとりあえず(?)は落ち着いたので、アタルはホッと胸を撫で下ろした。

 本当にからかうつもりではなかったようだな。

 俺たち三人がもたついていると、あいが一人で洞窟の中へ入っていった。

「おーい。はやくおいでー」

 あいは洞窟の中から俺たちに呼びかけた。

「あ、はい。今すぐ向かいますんで」

 アタルが返事をし、そそくさと向かっていった。

「……本当についてきてもらっていいのかしら?」

「だからって、マナー以前の問題を起こそうとしたお前が気がかりになってきたんだがな」

「それは……、反省してるわ」

「そう反省したら一緒に進んでいくぞ」

 リンはリンで危ない行動をとるからな、アタルと同じく気をつけないと。

 俺たち二人も遺跡の中へと進んでいくのだった。


 遺跡の中に入ってしばらく、入り口の光が程遠くなり、薄暗くなった。

 そこでアタルは器用に炎のトーチを浮かべ、遺跡を照らしていった。

 器用な奴だ。俺もできなくはないが、あのようにトーチを作るスキルは俺にはない。

「ありがとう、アタルさん」

「いえいえ、御足労戴いているんですから。それに――」

 アタルが急にあいより前に出て、目の前の床にナイフを投げつけた。

 すると床から突然槍が飛び出してきた。

「ここはトラップだらけですから」

「「それを先に言えッ!」」

 そこ、重要なところだろうがッ!

 よしんば、あいとリンが喰らってもダメージにはなるだろうが、俺が喰らったら最悪死ぬぞッ!

 俺がそう言葉を抑えていると、リンがキレそうになっている。

 そこへあいがアタルに尋ねた。

「ねえ、罠って事前に見抜けるの?」

「ええ、これでも、ここは事前調査済みですから。罠の位置は覚えてますよ」

「じゃあ、安心だね」

「ええ。ただ……」

 リンが前へ踏み出した瞬間、天井から矢が飛んできた。

 リンは咄嗟に青龍刀を円状に薙ぎ払って、矢の雨を防いだ。

 リンは怒声を放った。

「アタルッ!」

「今の罠は、僕の知らないものですよ」

「アンタ、全部の罠を記憶してるって――ッ!」

「全部なんて知りませんよぉ。僕が通り抜けた道しか」

「それを早く言いなさいッ!」

 リンが怒りの矛を剥き出しでアタルにキレた。

 代わりに俺が冷静になってアタルに訊いた。

「お前が先導してくれる、その解釈で間違いないんだな?」

「ええ。僕が踏んでいるタイルを目印にすれば、間違いないですよ」

 そうだろうね。やけに一歩一歩が大きいからね。

「これほとんどが罠なのか?」

「さあ? 確実に言えるのは、罠を踏んだら、VITの低いあなたは十中八九死ぬかもしれませんね。僕も調査で何回死んだことか……」

「そうまでして欲しいものってなんだ?」

「あいさんのLUCが必要と答えたはずですが」

「それでも一度は踏破したんだろ?」

「ボスまで来ればわかりますよ」

 本当だろうか。ところどころあらかじめ罠を発動させて確認を取っているようだが。

「安心してください、とッ!」

 またナイフを床に投げ、罠を発動させる。

「一々、罠を発動させないといけないんですか?」

「いえ、こういうのはクリアした方法で進んだ方がいいんですよ」

「なるほど」

 クリア時と同じフラグを立てる、つまり、罠を発動させることで進めるようにしているのか。

 取り越し苦労になる可能性だってあるのに、よくやる。

 ま、あいつと同じとこ踏んでたら罠なんて早々――。

 カチッ。

「あ」

 リンの踏んだタイルから音がした。

 事態を察したリンから一言。

「ごめん」

 すると、入り口側の天井から機械仕掛けのようになにかが開いた。

 どうしようッ! いやな予感しかしないッ!

「逃げますよッ! 全力ダッシュですッ!」

「罠はどうすればッ!?」

 そう言っているそばからあいが、カチッ、と罠のタイルを踏んだ。

 するとあいの頭上から槍が降ってきた。しかし、運よく槍を躱した。

「各々、自力でなんとかしてくださいッ! でも、巻き添えは勘弁してくださいねッ!」

「わかってるよぉッ!」

 入口の天井穴から、ゴロゴロとわかりやすい音が聞こえてきた。

「ねぇ、エッジッ! あたし、凄くやな予感が――ッ!」

「だったら走れえぇッ!」

「あたし、AGIが低いから助けてッ!」

「ああ、もうッ! 次から次へとッ!」

 俺はリンの手を引っ張って走っていった。

 俺の速さは減ったが、リンを引っ張った甲斐があったか、リンが速くなった。

 しかし、その後ろにはわかりやすい定番の罠、大岩がこっちに転がってきた。

 予想通りで嬉しくないの、こういう時。

「「「出たあぁぁぁぁぁッ!」」」

「後ろを振り返ってはいけませんッ! 下敷きになりますよッ!」

 今回ばかりはアタルの言う通りだッ! 走って逃げるしか生き残る道はないッ!

「「「うおぉぉぉぉぉッ!」」」


 しばらくして、大岩の転がっている罠エリアの突き当りを曲がって、難を逃れた……。

「こればかりは……あたしの……せいだわ……。ごめんなさい……」

「はぁ、はぁ、はぁ……。僕、この世界で必死に走ったの初めてですよぉ……」

「意外、だなぁ……。お前がこんなに……必死になってるのって……」

「ボスまで……、ずっと……こんな調子……なんですか……? アタルさん」

 全員満身創痍だ。無理もねぇか。

 リンを引っ張って速さが落ちたとはいえ、速度ギリギリになったのは初めてだ……。

「あの、エッジ……」

「なんだ、リン?」

「あたしと、まだ、手を繋いでるんだけど……」

「あッ、ごめん……」

 俺とリンはずっと手を繋ぎっぱなしだった。慌てて手を離す。

 同世代の女子はこういうこと気にしそうだもんな。あいを除けば、だけど。

「別に、謝られても……」

 リンが顔を赤くして否定する。

 無理もないか、俺が引っ張ってスピードを上げたからハイテンポ過ぎたんだな。

「それでは、一休みしてから、進みますか……」

 それはそうと、気になった点があるんだよな。

「ここのボスモンスターって、どんな奴だ?」

「話しておきますね。大きな毒蛇ですね」

「毒蛇……」

 俺はそれを聞いて、あいと目を合わせた。

 これは事前に知らせてほしかった。

 あいが首をブンブン振っている。

「おや? どうしましたか?」

「アタル……俺ら、状態異常の対策なんてしてねぇぞ」

「その点はご用意しておりますが?」

 アタルがそういう準備をしているだろうとは思った。

 けど、そうじゃないんだ。

 なんでかって……そりゃ……。

「毒の状態異常って、VITに影響するだろ? それで結構HPが持ってかれるんだよ」

「それなら、すぐに回復すれば――」

「その間、俺が隙だらけになっちゃうだろ?」

「ああ、話が読めました……」

 そう毒の回復中に攻撃を喰らうのだ。

 一応、ソロの時に状態異常の回復魔法は会得しているが、使用中にやられるので使う機会がない。敵がいなくなってから使っていた。

 あいとの二人での冒険の際に役立つだろ、と思われるかもしれないが、初めて一週間のあいに、俺をフォローできるとは思えない。

 これまでのダンジョンで後方に立ってもらったから全滅は免れたものの、一度状態異常を受ければ、一時撤退をしている。

 それを聞いたリンが提言をする。言うことは大体わかる。

「アンタらが回復アイテムを持てば――」

「リン、その手はもう使った。使って死にかけた」

「あ、そですか」

 リンはそれ以上言わなかった。

 でも、ここまで来てしまったし……。

「安心してください。あなた方はいつも通りにやってくれてかまいませんから」

「アタル、お前……」

「ま、この手のモンスターには強くてですねぇ。期待してくださいよ」

「そこまで言うなら、後方支援に入っていいんだな?」

「ええ。ボスモンスターですから、手助け戴くと心強いです」

 ここまで腰を低くされるとなんか気持ち悪いな。

「ここから先に罠はありません。落ち着いたところで移動しましょう」

「はーい」

「わかった」

「……」

 リンだけ返事がない。未だ体調が治っていないのだろうか?

「リン?」

「ひゃいッ!?」

 甲高い声出して、いったいどうしたんだ?

「行くってさ、歩けるか?」

「だ、大丈夫、よ」

 これ、もしかして……。

「お前、風邪でも引いた?」

「……そんな風に見える?」

 顔を赤くしたまま、俺と目を合わせないリン。

 そういや、今日はだるそうにしてたような……。

「無理ならログアウトしていいんだぞ?」

「……余計なお世話よ」

 リンがやっと立ち上がり、ツインテールの髪を振って俺に攻撃しようとする。

「あたしはピンシャンよッ! 文句はないでしょッ!?」

「そ、そうか……」

 リンは俺と一瞬目を合わせ、フン、と鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

 元気なら問題はないだろう。空元気じゃなけりゃ、だがな。


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