目まぐるしき旅路
一体どこまで来ただろうか。季節はいくつも過ぎていった。
その間ずっと、蛇のように連なる列車に乗り、数万数十万もの転轍機を渡り、硬直した座席にぎしぎしと揺さぶられ、常に真っ黒な煙を浴びてきた。
思い出してみれば、目まぐるしい旅だ。
押し寄せる土砂や山を駆ける風吹、郷の麦秋か山裾の代掻き、眠い目を擦り窓を開け浴びる朝日や、甍の波に灯がともる薄暮・・・。
人波を過ぎ隧道をくぐり、切通を越え鉄橋を越え、停車場では油をさし炭水を補給し、罐を磨きまた走る。
落ち葉ですべり息が切れる登りも、制動レバーの扱いに手に汗握る凍てついた下りも、ひと時も気を抜くことができない。
お世辞にも乗り心地がいいとは言えないこの列車は、それでいてどこか生き生きとして、豊かな列車でもある。
そんなことを思い出し、ぼーっと考えながら辿り着いた凍てつく朝の停車場で、つかの間の停車時間に行きかう人の会話を聞いた。
それによるとどうやら、この旅にもどこか終着はあるらしい。でも誰もがそこを知らない。ただそれまで、ひた走ることだけはわかっているとのこと。
だとするとこの旅に、目的はあるのだろうか。
帳が下りた汽車の中、夕闇をひた走ると決まってそう思うようになった。
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