過ちと言葉たち

 なんだか見覚えがある。

これは旅を続け6歳になったころだろうか…。

隣にいた乗客の持ちものがなくなったらしい。盗られたようだ。

そして俺はやっていなかったけど疑われた。しかしカメラもないし証拠がない。そう思う自分に、そのとき幼い自分を見た車掌は、諭すようにこう言った。


「人の過ちは3回まで許される。1回はまだ大丈夫。でも気を付けず2回目3回目と繰り返していけば、誰も君を信用してくれなくなる」


そう言われたこのときの自分には、その言葉の意味はよくわからなかった。でもなぜか、強く心に刻まれていく。


 いくつも流れる映像。その後の俺は、幾度となく同じような失敗をしたようだ。謝りもせず逃げたことだって数知れないし、俺は人とは違うのだからと開き直ったことすらある。それを聞いた老婆は、14歳の自分へこう言った。


「人と違う所為にするな。逃げるんじゃない」


その2つの言葉は、当時の自分には全く響くことがなかったし、響くとすれば全く逆の方向であった。


 …なんだかまぶしい。世界が入れ替わるようだ。

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