第132話 前兆の予感

 ピカトーレン国王、ウェルザとその妃のアキナ婦人により、健太とエルマは食事会に招待された。

しかし、その娘であるディアネイラが現れた事により食事会どころではなくなってしまう。

王宮から去り健太はエルマに与えられた住処へと帰ったが、なんとそこには既にディアネイラがいたのだ。





「え?じゃじゃ馬!どうやって入った?」


「そこの窓からよ?それにこの家はボクの基地みたいなもんだし。」


「はあ?待てい、ここは俺の新居でだなあ、エルマ外交官様から与えられた貴重な部屋なんだぜ?お前がこの部屋にいる事が知られたら・・・」


「あなた健太だったよね?食べる?」


 なんと、ディアネイラは何やらもぐもぐしている。

さっきの食事会場からくすねて来たのが明らかにわかる。


「キ、キマイラステーキ!」


「正解!あはは、半分あげるわよ!」


 ディアネイラはパクリと食いちぎり、半分にしてくれた。そして咥えた部分の肉を健太に手渡してきた。


(おおお!ステーキ、しかし犬が一度咥えた食べ物をそのまま自分が食べるみたいな気分が・・・)


「ん?どうしたの?せっかくあげたのに、いらないんならオイラが・・・」


バク!!クチャクチャクチャクチャ


(う・・・美味いんだと思う、そう思うんだけど、やっぱり犬の食べた物の間接キスが食欲を変えてしまう・・・)


「う〜ん、オイラこれ好きなんだけど、健太はあんまり美味しそうに食べないなー。泣きながら食べてるし。」


(お、お前のせいだよ!ちくしょう・・・)


「さて、パパにイライラさせられたし、オイラは寝るね。」


「お、おう・・・ってまさかここで寝るんじゃないだろう?」


「え?ダメ?」


「おいおい、自分の部屋で寝てくれよー。それにまだ風呂入ってないだろ?」


「お風呂〜?2日前に入ったから今日はいいよ、明日入る。」


(・・・ウルフ族は風呂を嫌うのは知っている。リョウもラルフもシュケルのじじいも風呂の時間は5分とかからなかった。このじゃじゃ馬はその更に上をいく不潔ヤローって事か・・・)

 

「なあ、せめて風呂に入ろうぜ?俺今から風呂の準備するからさ。」


「ん?準備してくれるなら勿論入るよ?」


「よっしゃ、でも俺の家だからな!俺が一番風呂な!」


「はいはい、わかったよー」



 健太は風呂を準備し、そして入った。


ザバーーン


「ふぅぅ〜〜」

今日もいろいろとあった、疲れた〜っと思いながらくつろぎ、いろいろな事を考える。

 風呂とはいえ、身動きの取れない言わばドラム缶式風呂だ。今思えば、バピラに来てから、シュケルのに風呂の掃除の仕方をゲンコツされながら覚えた健太。

でも、ラマ国では全てをイルグルに家事を任せていた。


と、そんな事を考えながら湯に浸かっていた。


「楽してだんだな、俺・・・ははは。」





「え?緊急会議ですか?」


ラマ国玉座の間で、フクはバッド王が言った言葉に驚いていた。そしてハイムも、


「しかし一体どういった内容ですか?」


バッドは一度深呼吸した後、2人に話しかけた。


「この緊急会議はお前達も参加してもらう、エルマの提案でな。バドーム帝国からの使者は無しの極秘会議だ。ピカトーレンは、ウェルザ様、王妃、エルマ、そして健太が会議に参加する。場所はピカトーレン王室会議室だ。」


フクとハイムはお互い顔を見合わせてた。その後、フクがバッドに質問する。


「わかりました。明日に備えて休ませていただきます。ハイム、行こう。」


「おう、ではバッド様、失礼致します。」


2人は王室から出て、またお互いに顔を見合わせ、フクは何かを悟った。


「ハイム、これってもしかして・・・」


「ああ、間違いない。バドーム使者無しということは、バドームの圧力に対しての緊急会議、おそらく戦争になるぞ。」


「ああ、俺もそう思う。しかしバドームに勝てるのか・・・」


「・・・健太次第だと俺は思ってる」


2人は歩きながらその会話を家に着くまで話をしていた。

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