第131話 愛着心

 食卓より移動し、外に出た健太とエルマ。外はすっかり真っ暗になっており、夜風が涼しい。お腹いっぱいでこの風を感じたら最高なんだろうなと感じる健太だったが、あの雰囲気ではいつまでも食事をするのは無理であろう。

 エルマも夜風を顔に浴び、スーっと深呼吸をしている。やはり彼女もウェルザ王とディアネイラの関係や夫婦喧嘩には抵抗があったのだろう。


そして直ぐに健太を見て言い出した。


「健太、じゃあ私は帰るわよ!?明日の朝、迎えに行くわ、明日はピカトーレンとラマ国の極秘緊急会議をする事になったのよ。」


「へ!!ごくひきんきゅー・・・」


ゴン!!


「痛って!!」


「バカ!!小声で話しなさい。いい?あなたはピカトーレン防衛大臣兼ラマ国外交官として、明日の会議に参加よ?」


「はぁ!?いつの間に防衛大臣になってるんだよ・・・ムググ!」

再び健太は自然と声を荒上げてしまうが、エルマに口を手で抑えられてしまう。


「静かにしなさいて言ってるでしょ!とにかく今日は帰って寝なさい。明日の会議は長くなりそうよ?」


「ムググググ、プハー!」

エルマは抑えた手を離し、ハンカチを取り出して手を拭き始める。


そして健太は声を荒上げない様に意識をしながら応える。


「また仕事かよー、ピカトーレンに付いた次の日くらい休みくれよー・・・」


「休みたいのは私も同じ。でもね、国の為なのよ?わかってちょうだい!!じゃあね。」


 国の為。その言葉に対し健太は腕を組み考え始めた。


(むぅ・・・確かに俺が国に関わる仕事をし始めてから、大きな事件ばかり起きる。日本じゃありえない、命に関わる仕事もあった。バピラにいる限り休息なんて言ってられないのかもしれないな・・・バピラは・・・バピラは・・・いつか俺が平和な日本の様に変えてやる!ピカトーレンもラマも他国と思っていたが、流石に愛着があるし・・・)


「わかったよ、エルマ。明日の緊急会議とやらで俺がバピラを変・・・あら?」


エルマは既に帰っていた。


「あのババア・・・」


 ハッ!いかん、ここでイライラしてしまうと、ますます腹が減ってしまう。とりあえず家に入ろう。

 それにしてもあのじゃじゃ馬娘、毎日あんな美味い飯を食ってやがるのか!クゥ〜、羨ましいぜ。


 と、そんな事を考えながら健太はエルマに紹介さた家へ入った。


ところが


「あ、お邪魔してるよー!」


「え?じゃじゃ馬!」


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