第130話 ウルフの悩み

ラマ国古代研究所では、イルグルが事実を2人に伝えた。


「ニャンじゃと!健太が!?」


「え?健太がピカトーレンに帰った?」


「そうなんです。急な事でしたのでビックリしました。」


「まぁ、国を代表するような仕事をやり始めたんだから、仕方ないわよね・・・」

メルーは意外にも自然な顔であっさりしていた。悲しそうでも、嬉しそうでもない様だ。


「うむ、メルーの言う通りじゃ!」


「あら、師匠までそう思いますか?でも僕・・・やっぱり寂しいですね。」


「ここの研究員をしていたらのう、いずれは上層部に声をかけられ、やがて国を代表する仕事をするだろうと思っていた。しかしまあ、また戻ってくる機会もあるじゃろう。」


「シエル様、健太は今後どんな存在になるんでしょう。」


「・・・さあのう、ラマとピカトーレンが大きく動く気がするわい。」





そして、再びピカトーレン王室食堂


「お、お、王女のお前がな、な、な、なんで一昨日リョウと一瞬にい、い、いたんだ?」


「ん〜〜、確かばったり出会って意気投合。そのまま緑に光る正体を探す為に一緒にあそんだんだよ?」


「リョウは?リョウはお前が王女だって知っているのか?」


「知らないんじゃない?言ってないしね。」

ま、まさかこのじゃじゃ馬が王女だったとは・・・と、健太は過呼吸になるくらいに驚いていた。


「ディアネイラよ、そのリョウとやらは一体何処の誰なんだ?」

ウェルザ王が食事を止め、娘に問いかける。


「パパには関係ないけど、リョウは強いウルフなのよ!?」

ディアネイラのこの言葉に対し、ウェルザは眉と鼻にシワを寄せ、テーブルを強く叩いた。


ダン!!


「関係ないなんて事はない!ピカトーレンの国民なら私に教えるべきだろう!一体どこのウルフだ!」


 ウェルザ王の威圧は凄まじい迫力があった。それには健太も食事の手が止まる。


(はわわわわ・・・メインディッシュが喉を通らない・・・)


「だから、パパには関係ないって言ってるでしょー!」


「ディアネイラ!!なんだその口の聞き方は!!」


 ディアネイラの反発に健太は一瞬空いた口が塞がらなかった。こんな時、エルマならどうするんだろう、そう思い彼女を見るが、至って冷静に黙々と食事をしている。まるでいつもの事だからっ、と顔が答えを出していた。

しかし健太は黙っていられる性格ではなく、ディアネイラに話しかけた。


「お・・おい、じゃじゃ馬・・・もう少しお父さんに優しい言葉でだなあ・・・」

次の瞬間、今度はディアネイラがテーブルを叩く。


ダン!!


「もういい!!ごちそうさま!!」


 ディアネイラはそのまま部屋を出て行ってしまった。

ウェルザ王はため息を一度吐き、話し始めた。


「エルマ、健太君、見苦しい所を見せてしまったな、すまなかった。王女は見ての通りだ、落ち着きが無くこの先に不安が残る。もう少し上品に生きてほしいのだが、なかなか私の思い通りにはいかない。困ったものだよ。」


「あなた、ディアネイラにはもう少し優しく接していただかないと・・・」

アキナ王妃がウェルザに注意をする。


「なんだ!またその話か!!大体お前はディアネイラに対して甘やかし過ぎなんだ!そもそもだなあ・・・」


「あなた!何言ってるんですか!私は毎日毎日ディアネイラを、見ています。あなたこそ・・・」


これは・・・王族ウルフの夫婦喧嘩だろうか・・・

かなり居づらい・・・そこをエルマのお助け発言が飛ぶ。


「私、帰りますわよ!?健太、行くわよ!」


「は、はい・・・すんまへん・・・」


健太とエルマは、メインディッシュを半分以上残して部屋を出た、

(に、肉が・・・トホホ・・・)

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