16章 宣戦布告計画

第128話 帰国準備

 ピクシーの森より帰ってきた健太は、ハイムやメルー達と直ぐに解散し、家路へと戻った。

 とはいえ、イルグルの家は居候の身。本来なら何処かしら遠慮がちにするのが当たり前ではあるが・・・


「・・・てください!!」


「ん〜〜〜〜〜」


「起きてください!」


 本来イルグルの寝るフカフカベッドで健太はいつも通り寝ていた。健太が居候してからのイルグルの寝所は、台所兼、寝床となっていた。


「うるさい・・・な・・・黒助」


「何寝ぼけているんですか!いい加減に起きてください!流回矢るえしがもう少しで3周目に入りますよ!」


 流回矢が3周。

健太はなかなか開かないまぶたを開け腕時計を見る。


「まだ12時か・・・黒助!まだ昼前じゃないか!!もう少し寝させろ!!俺は昨日はかなり疲れたんだぞ!!」


「健太君!何言ってるんですか!一昨日の夜に寝始めて、昨日は1日中寝てたじゃないですか!!毒に侵されたって聞いていたから心配しましたが、全く元気そうに寝てたし!

 それよりも、エルマさんって言う人間の偉そうな人が訪ねて来てますよ!!」


(何!?1日以上寝てた?あの年増ヤローが来てる?)


ゴン!


 健太はいきなりイルグルにゲンコツをお見舞いしたのだ。


「馬鹿野郎!黒助、もっと早く教えんかい!!」


 気に入らない事があると、つい黒助の頭を叩くのは、もうクセになっている。そしてそのまま服を着替えようと寝衣を脱ぎ始める。


「痛っい!いきなり何をするんですか!!」


「服、服、服、黒助、俺のいつものズボンはどこにやったんだ?」


「え?何言ってるんですか!一昨日帰ってくるや、プーンとかなり臭かったから昨日洗濯しましたよ!!まだ干して乾いてません!!」


「なにぃ〜!もっと早く洗濯しろよ!まったくもー!」


「さっきから何て酷いことばかり言うんですか!昨日は1日中雨だったから直ぐには乾きませんよ!」


「馬鹿野郎!知恵を絞れ!!」


「健太君、あなたって人は!」


「なんだ黒助、文句あんのか?」


お互いがイライラした時であった?


「あなた達!!いい加減にしなさい!!」


なんと、エルマが勝手に家に入り込んできた。


「エルマ、何勝手に人ん家に入ってるんだ!」


「健太君!人ん家って・・・ここは僕の家ですよ!」


「口喧嘩してるから、止める為に勝手に入らさせてもらったまでよ?

 そして起きたのならそんな事どうでもいいわ?早く準備なさい。ピカトーレンに帰るわよ?」


「へ?」


「へ?じゃないわよ、あなた忘れたの?バドームからの圧力があった時に、援軍要請に来たあなたに出した条件を。」


「・・・ああ、そうだったな・・・」


 条件、それはピカトーレンに戻る事というのは、健太は覚えている様だ。


「さあ、早く準備なさい、ウェルザ様があなたを待っているんだから。」


「うぇるざ様?誰だ?」


「・・・あなた、凄いわね・・・ウェルザ様を知らない人間なんて、あなただけよ?」


「いやいや、マーズで少しくらいは聞いた事がある名前だわい!まあ待ってくれ、シエルのじじいやメルー、バッド王やフクとハイムには出かけて来るって行っておかないと。」


「出かけるじゃないでしょ?"今までお世話になりました"って言うのが礼儀じゃないの?」


「な、なあ、エルマ外交官、本気で俺ピカトーレンに帰らないとダメか?」


「約束は約束よ?」


 ダメだ、エルマに何を言っても無駄な様だ。仕方がない、とりあえず帰ろう、シュールの施設に。


「ピカトーレンに帰ったら私があなたをピカトーレン国防衛大臣に就任出来る様にウェルザ様に提案するつもりよ?悪い話じゃないでしょ?」


 ピカトーレン国防衛大臣。その言葉を聞いた健太は自然と身体が重くなるのである。


 (ま〜た難しい言葉を言い出した、やなこった!防衛大臣とやらになってたまるか!帰ったらリョウとまた魚を捕って遊ぶぜ!)


「一応バッド王と、フク隊長には私から言っておいたわ?健太を再びピカトーレンに戻すと。」


「戻すなんて言わないでくれよ、俺の国はは、日本って言うんだ、に・ほ・ん!!ピカトーレンも俺にとっては他国なんだよ!」


「あなたが言っている"にほん"は存在しないのは知っているわ?あなたも知っていると思うけど、ピカトーレン以外で人間はいないのよ、このバピラにいる限り、ピカトーレンがあなたの国と思いなさい。それを嫌がるのは単なる我儘なだけよ?」


(こ・・・このババアの言ってる事に何も言い返せなくなってしまった・・・やはり、人生長く生きているだけあるぜ・・・)


「それと、フク隊長はこう言っていたわ?"健太がピカトーレンに帰っても、ラマ国の外交官なのは変わらない!"ってね。そこは私も了承したわよ。あなた、良い友達を持ったわね。」


「フクが、そんな事を・・・」


「話が逸れたわね、早く準備なさい、ウェルザ様に失礼よ?」


 エルマも、ウェルザ王も、ピカトーレンの国自体も決して悪い国ではない事は健太は理解していた。


(そうだ!俺がピカトーレンも、ラマもコントロールすればいいんだ!

 直ぐに出来るわけじゃないかもしれないが、少しずつ、少しずつ変えていけば、ピカトーレンもラマも居心地良くなるだろう。

 よし!やったるか!!)


「エルマ!直ぐに準備する。暫し待ってくれ!」


「・・・疲れる子ねぇ、やっと行く気になったか・・・」

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