第122話 知られざる真実前編

 ユニコーンの角を手に入れたイズミは直ぐに研究所に戻った。

戻って早々に、メルーがユニコーンの角に興味を示す。イズミは優しく微笑みながら経緯を話した。


「すご〜い!イズミさん!そんな事があったんですね〜!」


「バドーム帝国が何を考えているのかわからないけれども、ユニコーンは一度体調不良や怪我等をして、それが完治した際は角も生え変わる習性があるのよ、だから今はきっと元気よ!?」


「で、万能薬はどの研究をするのですか?」


「実は10年くらい前からザックス隊長に、翠種の毒を治癒するには、古代の文明ではどうしていたのかを研究する様に言われていてね、いろいろ調べたら、古代にはシカと言う生き物がいたみたいなんだけど、そのシカの角の成分がユニコーンの角の成分と似ていると言われているの。つまり、翠種の毒を抑制できる成分を持っているはずなのよ。」


 メルーはあっけらかんとした表情になった。イズミはメルーとは違い、かなりの知識を身につけており、イズミが研究所を去った後に、自分が仕事をしていく事が可能なんだろうか、心配になってきたからである。

 しかし、そう思うと共に、尊敬するイズミへの目標が増えたという事でもあった。


「イズミさん!あたし、手伝います!」


「うふ♪ありがとうメルー!」


 結果は想像以上に早く出た。ユニコーンの角を手に入れて僅か2日で万能薬の研究に成功したのだ。


「ハッハッハ〜!イズミ、よくやってくれた!これならピカトーレンの未来は更に進化するぞ。」


 ザックス所長も上機嫌?だろうか、イズミの頭をなでなでしている。


「ハッハッハ〜、イズミ、お前は間もなく産休に入る。その万能薬のレシピをメルーに教えといてくれい!」


「わかりました♪」


 次の日にメルーは万能薬のレシピをイズミより教わる事になるといった予定で決まった。



「なるほど!わかりました!イズミさんありがとう!」


「ウフッ、メルーはなかなか仕事を覚えるのが早くて助かるわ~!?あ、そうだ、今夜さ、二人で飲みにいかない?」


「え?だめですよ!お腹の赤ちゃんに毒ですよ!?」


「ウフフフ、私は水しか飲まないわよ。実は昨日店をやり始めた飲み屋さんがね、すごい評判がいいのよ、うるおい屋って言うんだけど、なかなか美味しいらしいわよ?」


カツカツカツカツ(シエルの歩く音)


「あ、シエル、仕事終わったらメルーとうるおい屋に行ってみようと思うんだけど、一緒にどう?」


「おお、あの昨日開業したあの店か!いいねぇ、行ってみよう!所長は誘わないの?」


「所長は人間とピクシー間での会合出張らしいわよ?だからお誘いしてないの」


「そっかそっかんじゃあ3人で飲むか!!」



そしてその日の夜


翠種毒の万能薬書類を作成しながらイズミは独り言をつぶやく。


「いけない!もううるおい屋に皆んなが集まる頃ね。急がなくちゃ!」


パタタタタタタタタタ(羽の音)


(ん?ザックス所長まだ研究所にいたのかしら)


「所長?私そろそろ帰りますから、戸締りを・・・ハッ!!あなた・・・誰?」


 イズミが見た人物は、同種の小さな小人、自分と同じ羽、ザックス隊長と同じ光粒子、ザックス隊長以外で見るジョーカーをイズミ初めて見た。


「俺か?俺はカイト、探し物をしている。」


「探し物とは何かしら?」


「しらばっくれるなよ?我がバドームから逃げたユニコーンを追っているんだ、我が国のオークの嗅覚を甘く見るなよ?」


 (バドームだって?しまった、ユニコーンの匂いがそのまま研究所にまで・・・)


「しかし珍しいな、ピカトーレンにもジョーカーがいるとは思わなかった。」


「え?ザックス所長、あなたザックス所長と会ったのね?」


「あんな貴重なジョーカーをピカトーレンに居させるわけにはいくまい。抵抗しやがったから眠ってもらった。今はオーク達がバドームに搬送中だ。」


「・・・こ・・・こ・・・」


「ん?何だい妊婦の蒼ピクシー!?」


「コノヤローーー!!!!」


イズミは研究所内にも関わらず力一杯魔力をカイトに向けた。

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