第118話 3種のピクシー

「何度も言っているけれど、ダメよ!?健太はピカトーレンに連れて帰るわ。今から研究所に行くわ!?邪魔をしないで!!」


 バッド王室の間ではエルマが何やら声を荒上げていた。


「あの子の身元がこの時代ではない。人間なのに伝説光属性魔法及び究極召喚を使用できる、そしてまだ未成年。これらの事からまだ彼を、保護者のいない他国で生活をさせるわけにはいかないわ!?」


 エルマの発言に対し、フクはムッとした表情で応え始める。


「待て、エルマ!健太にしてはピカトーレンですら他国だ!それに古代研究所長のシエル殿が責任を持って保護者としていらっしゃる。健太は自分の時代に帰る為には自分の世界だった古代の研究員になる事が近道と判断したんだ。

 ピカトーレンに戻る戻らないは、健太の判断に任せるのが一番じゃないか?」


「フフフ、あなた達は健太からまだ何も聞いていないようね!?

 彼がバドームからの圧力があって援軍要請に来た時、条件を出したのよ?ピカトーレンに戻る事、それが援軍要請の条件だったんだから、約束は守らないといけないし、彼の判断に任せるのならば、彼は必ずピカトーレンに戻ってくるわ!?」


この2人の会話をずっと聞いていたバッド王が口を挟んだ。

「2人共、健太に関しては、俺が無理矢理ラマ国外交官に任命したんだ。責任は私にある。やはり健太自身がどう考えているか分からないが、健太が戻りたいと言うならば、ピカトーレンに戻ってもらう。」


「バ・・・バッド王!本気ですか!!このラマ国が復興していく立役者は間違いなく健太ですぞ!!」


 フクは驚いた表情となり、暫く普通の顔に戻りそうになかった。


「人間も・・・健太も・・・これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。私まだピカトーレン国民にまだ図書館火事問題の謝罪をしていないしな。」


バッドはそう言い、窓から遠い空を眺めた。


「バッド王、あなたは子供の頃から変わってないわ!?ウェルザ王や私があなたの子守をした事もあったけど、世話の焼ける子じゃなかったわ!?

 子供の頃から礼儀正しかったあなたなら、謝罪して許さない人間なんていないはずよ?ガイもそう思っているはずよ?」


「・・・ガイは・・・元気か?」


「健太が援軍要請にリサと来たのは驚いたわ!?まさかガイの娘であるリサが生きている事が分かって以来、ガイは毎日泣いているって聞くわよ!?」





 ピクシーの森へと続く経路が見つからない。ハイムは健太の右肩で座ったまま。メルーは健太の左肩で座って捜索していたが、途中で飽きたのか寝ている。ピクニック気分じゃこうなるわけである。


 しかしバピラ湖の底で捜索してもう1時間だろうか、遂にヒントを見つけた。何やらガヤガヤ喋り声が聞こえる。健太は岩場に身を隠し、声を出しているのは誰か確認をする。


 「あれは・・・3・・4・・5人、5人いる。なあハイム、あれって」


「羽が生えていない蒼ピクシーの子供の様だね、なんでバピラ湖に・・・」


「でもこれではっきりした。ピクシーの森とバピラ湖は間違いなく繋がっている。」


 ピクシーの子供5人の後ろを尾行し、後を追う。しかし直ぐに健太に気付いて近づいてきた。


「おーきないきものー」

「ほんとだ、おーきないきものー」

「おーきないきものー」

「ちーさいのもいるー」

「ちーさいのもいるー」

「パパとママかなー」

「パパとママかなー?」

「きっとパパとママだ」

「きっとパパとママだー!」


 子供達のガヤガヤした声により、メルーは目を覚ましていた。そして今の言葉を聞いて何やら顔が赤い。


「え?ママと・・・パパ?」


と、チラチラハイムを見ながら嬉しそうな顔をする。

又、ハイムも顔が真っ赤になっている。


「ねぇ、君たち、なんでここにいるの?ピクシーの森が君たちの居場所じゃないの?」


 ハイムが問うと5人が急に健太達の周りをグルグル周り始めた。


「こわいー」

「こわいー」

「追い出されたー」

「追い出されたー」


 追い出された?もしかして、医療スタッフがハイムの治療しながら言っていた蒼ピクシー絶滅計画の事か?


「あかいのこわいー」

「あかこわいー」

「あかいじめるー」


 紅ピクシーが、蒼ピクシーをいじめるって事なのだろうか?意味がわからないがハイムは、


「そっか・・・今でもまだ蒼イジメがあるんだね。」


しかし、子供達は次に妙な発言をした。


「あかよりもみどりがこわいー」

「うん、みどりがこわいー」

「みどりこわいー」

「みどりがあかにめいれいしているー」

「みどりがあかにあおをおいだせいったー」


「何!!!」


ハイムが何やら表情がおかしい。どうしたのだろうか。

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