第117話 マキ=オースガの存在

 一方、健太達はチャント高原のバピラ湖に到着していた。


「よし、地図だと、向こう側の一部がバドームの領地だよ。ピュアドローを使って早速向かおう。」


 と言ったが、ハイムは未だだ半信半疑であった。生まれ故郷であるピクシーの森には飛んで行けば直ぐに行ける。しかし羽が無い。

メルーに頼んで持ち抱えて移動する手段もあるが、メルーが苦手であり、健太まで飛んで行く事が出来ない。


 本当に健太を信じて良いのだろうか・・・とハイムは一人で魔法を詠唱し、あっさりとピュアドローを完成させた。

 以前、健太が利用したピュアドローは、メルーとイルグルの2人で時間をかけて作り上げた。しかしこうも簡単にピュアドローを作るハイムは、やはり国王補佐官だけある。


「ハイム様・・・すごい・・・」


「さあ健太、玉の中に入ってくれ、今はお前を信じるよ。」


 こうして健太はピクシー2人と共に湖の底へと沈んでいった。



 前回沈んだ時の街並みが広がる。健太の街である。まだはっきりとは言えないが、健太がダークルカンに飲み込まれた時、街の一部もバピラへと時空を越えてきたのであろうと健太は考えながら街並みを通り過ぎていく。


 3人は黙々と目的地と思う方面へ進んでいく。ボ=ギールとここで出会い、マキ=オースガにも出会った。健太は現在、どの様な想いを込めているのであろうか。


「生きているわよ。」


突然、メルーは健太に対し話しはじめた。


「・・・・・」


「あの子はね、光属性を操り幻獣とも契・・・」


「いいよ、メルー、何も言わないでくれ。わかるんだ、何となく。」


「う・・・うん・・・」


 再び沈黙が訪れる。健太は事実を知って得するのか、それともしないのか、結果を聞くのが怖かった。だからメルーの発言を誤魔化して阻止したのだ。


 少し空気が重くなりそうと悟ったハイムが何か会話をしないといけないと感じ、話しはじめた。


「健太、この辺りからバドームの敷地だぜ?」


「わかった!このまま真っ直ぐだ。」


 健太は特に真っ直ぐ進む理由はないが、突き当たりの壁沿いを探索した方が良いと判断した。


「なあ健太、道を歩いていて十字路に大抵あるこの建物は一体何なんだ?」


ハイムは信号機に指を指して質問してきた。


「あの建物は信号って言うんだ。進め!と止まれ!を建物自身がやってくれる。」


「へぇ、あたし初めてしんごうってのを見たよ。シエル様もしんごうに関してはあまり分かってなかったしな〜」


とメルーが興味深く見ているが・・・


「進め?止まれ?大昔はかなり文明が発達していたんだな。とはいえ、そんな無意味な物を発明しても仕方ないだろうに・・・」


(・・・車を知らない君らしい発言だ。)


「あたしもハイム様と同じ考え〜♪しんごうの発明よりも、人間も羽とかを発明して空を飛べる様に考えれば良かったのに!」


(・・・無茶言うな!それに飛行機があるわい!)


そんな話をしているうちに、少し重たい雰囲気が和んできた。そしてどうやら壁沿いに着いた様だ。浮上すればバドーム国の領地だ。


「俺の予想では、ピクシーの森へと続く水路がある筈だ!それを探そう。」


健太達は浮上せず、周りを見渡して怪しい場所を捜索する。

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