第111話 閃かない考え

「なあ健太、一体図書館で何を?」


フクは少し頭を斜にして尋ねる。


「それを今から考えるんだよ!図書館には色んな情報がある宝庫だ!1度燃やされちまったから本の数は少なくなったが、きっと何かあるはずだよ!」


「そ・・・そうか・・・も、もしかして、こんなたくさんある本の中から探すのか?」


フクはあんまり良い案とは思ってなさそうだ。


「健太、あんたさぁ、もし探して何もなかったらどうするのよ!?」


メルーは半分怒っている様子。


「いや、絶対に何かある。絶対に探してみせる!とにかくピクシーに関する本を探し、そこから調べる。手伝ってくれ!俺は1人で時間かかってでも探してみせる。待ってろよ、ハイム!」


 健太は本を探すことにした。フクもメルーも結局は手伝ってくれていた、ブツブツと2人して文句を言っている様にも見えたが・・・




 ラマ国中央図書館入り口に備え付けてある流回矢るえしが4週目に間もなく入る。第2太陽は沈み、夜となる時間帯だ。


「ん?もう18時か・・・・」


 健太が左腕につけている、マキ=オースガから貰った時計を見ながら呟いた。


「じゅうはちじ?あのハーフエルからもらったその特殊流回矢ってキラキラして素敵よねー。」


「へ?ハーフエルフ?」


「あっ、ん〜ん!何でもない何でもない」

(危ない危ない、シエル様からも健太には言うなって言われてるし。)


 ついついメルーは健太の知らない事を漏らしてしまう。健太に真実を知らせると、色々と大変なスケジュールを健太は抱えている為、そっと話を濁した。


 しかし健太は、特にマキ=オースガの事に触れず、時計を見つめ、何やらニヤニヤとしているだけだった。


 そして図書館スタッフが当然ながら声をかけてきた。


「ずいまぜん、べいがんでず!!」


「はいはい、直ぐにでますよ!!」


(18時なら仕方ない、また明日来よう。それにしても、この図書館はトロルを雇っているのか?

言葉がもう少し上手ければ・・・ん?)


「あら?ドズラ?ドズラじゃないか?」


「べ!げんた!いまぎづいたのが?」


「何でここで働いているんだ?いや〜しかし久しぶりだ。ドズラがまさか図書館で働いていたとは。」


「健太。あんた何も知らないの?」


「へ?」


メルーの言葉に対し、俺は何も言えなかった。


「シエル様が国を象徴する施設図書館が火事でなくなってしまった事に対し、何か役に立ちたいと、研究所からドズラを代表に、図書館復興のお手伝いしてもらっているのよ?」


(そうだったのか、最近見なかった理由がわかったぜ!)


「げんた!べいがんだ!」


「わかったわかった!帰る帰る!」


 ダークルカンによりバピラに連れ去られた後に、ドズラと出会い驚いて気を失ってしまった事があった。

しかし今は共に共存し合う仲間だとお互いが無意識に思っている。

 そんな2人は、規則を守って働いているドズラに対し、健太は応えなきゃならないと判断し、図書館を速やかに出る事にした。


(結局は収穫なしか・・・やはりピクシーの森には強行突破しかないか・・・ラマ国上層部の体力と精神が回復したら全軍で・・・)


 ピクシーの森への強行突破をイメージトレーニングをしながら、図書館の出口に移動中、丁度出口の手前にある小ホールに張り出してあるバピラの地図が目に入った。


「えっと?現在地がここで?あーなってこーなってて?ふむふむ」


健太は一人で地図を見ていた。意外と子供の頃から地図を見るのが好きだった。


「健太!図書館の方に悪い、出るぞ!?」

とフクが、


「健太、いい加減にしなさいよ!」

とメルーが、


そんな2人の言ってる事は耳に入らずジッと地図を見た。


そして・・・・


「・・・フフフフフ、アハハハハ、見つけた、遂に見つけたぞ!ピクシーの森へ行く作戦!フク、悪いんだけど明日はバッドの側にいてもらってもいいかな?」


「ん?何故だ?」


「恐らく、エルマ外交官がバッドと接触しているはずだ!あの女は抜かり無い。俺をピカトーレンに引き戻そうとバッドに言葉攻めする筈だ。サポートしてやってほしい。」


 決してピカトーレンが嫌いな訳ではない。でも、ハイムを助ける迄は戻る事はしないと健太は考えている様だ。


「健太、一体どうやってピクシーの森へ行くつもりだ?」


「ああ、実はな・・・」


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