第110話 ハイムの長い話
羽を失ってしまったとはいえ、まぁいっか・・・で済ませてしまうハイム。
(単純な奴だ、もう二度と飛べないというのに、なんでそんなに普通なんだろう。)
と、健太は思う中、再びハイムは言い出した。
「実は羽の再生って可能なんだよね。」
「え?」「え?」「え?」っと3人がハモる。
「ん?知らないの?」
コクッコクッっと、3人が肯く。
「なあ健太、人類の誕生って今から1億年前って知ってるかな?勿論、45億年前の健太の時代に隕石衝突?っていうよくわからない言葉だけど、一度人類は崩壊した。けれども長い時間をかけて、地球は再び大気を取り戻すと共に、生命は復活したんだ。とはいえピクシーやエルフ、人間もそうだけど存在しない。つまり、それぞれの種族って大昔から存在していないって事は知ってるだろ?昔はさ、進化前は別の生き物だったって事なんだけど、意味わかるかな?」
ハイムの説明には健太の小学校で習った事そのものであった。社会の授業で似たような事を教わった気がする。授業中はボーっとしていた健太でも、それくらいの事は理解している様だ。
「ん〜、俺達人間は猿が進化して人間になった。リザードマンはトカゲの進化、オークは豚みたいな意味か?」
「その通り、じゃあ俺やメルーちゃんの進化前って何か知ってるかな?」
「ピクシーの前世は蝶だよ。」
「そう、我々の前世は蝶・・・と考えられていたんだけど、研究所長の、シエルさんやメルーちゃんもかな?ラマ国古代研究所の人達の研究で、前世は蝶じゃない事が新たに分かったんだ。」
(なんだなんだ?ハイムの奴一体何を言って、何を考えてるんだ?)
「俺やメルーちゃんのピクシー族は生まれて約30年は水の中で過ごす。そして30年経った頃に羽が生えて今の私達のピクシーになるんだ。稀に俺みたいに、24年だけ水の中っていうケースもあるけど、逆に50年近く水中で過ごす子供もいる。紅も蒼の一族もこれは共通さ。」
「そうか!カエルが進化してピクシーになったんだな!」
健太がそう言うと、ハイムはガクッと頭が斜めになる。メルーはメルーで寒気を感じた顔つきになっていた。
「やだ〜健太、気持ち悪い〜。」
どうやら違ったみたいだった。ハイムは1度ため息か深呼吸か分からなかったが、一息ついた後に、
「ピクシーの前世はまだはっきりされてないが、トンボと考えられているの!」
と述べた。
「あ・・・そう・・・でも、それと羽とどういう関係があるんだ?」
ハイムは自分が寝ていたベッドに腰をかけ、話し始めた。
「ピクシー族は子を産む時は水の中で産む。産んだものは子供の成長を見届ける事なくその場を去るんだ。
産むのは卵ではなく、普通に生命体を産むんだけど、約10人程度生命を誕生させるんだ。
水の中で20年くらいで足が生え、30年近く羽が生えるのを待ち、羽が生えたら地上へ出てきて大人になるわけだが、水の中から出てくるのは・・・平均僅か3人なんだよね。水が汚なかったり、エルフ達の奴隷目的で行う密猟等によって生命を落とす事もあるのさ。」
「あのさハイム、長々と説明してもらって悪いんだけど、それと羽との繋がり。それだけを話してほしいんだが、つまりその故郷に行ったら羽が元に戻るって事でいいのか?」
「まっ、そういう事。ピクシーの森にある泉、あそこの源となる湧水を飲めば、3か月はかかるだろうけど、羽は完治する。」
それを聞くとずっと残っていた心のモヤモヤがほぼ完全に消えた。そしてメルーも、
「うわ〜〜い!やった〜〜!やった〜〜ハイム様〜〜うわ〜〜い」
「わわわ!メルーちゃん!ぐるじい!強く抱ぎづがないで!」
今まで魂が抜けていたメルーも復活した。
部屋を飛び出していた地獄耳のフクも駆けつけ、4人で喜んだのだが・・・
「無理です、ピクシーの森には行く事はできません。」
そう言ってきたのはドクターだった。ハイムはドクターに尋ねた。
「無理とは一体どういう意味かな?」
するとドクターは目を瞑り、眉間にシワを寄せ考えながら答えた。
「あれは確か10年くらい前でしょうか、今まではピクシーの森はピカトーレンとバドームの国境の境にあったはずですが、その後のバピラ会議でピクシーの森はバドームの領地になりました。これって単に蒼ピクシーの絶滅計画なんだと思います。今あそこから成人するピクシーですが、紅とジョーカーはそのままバドームの兵士となります。そして断言は決して出来ないのですが、蒼はそのまま捕まり殺処分にされてしまうとか・・・」
それを聞いた健太はまた殺意を覚えた。なんて奴らなんだ!バドームの連中の考える事はよくわからない、と。
きっと悪い事を考えている事に間違いはないであろう。いつかその森を取り戻さないといけないと考えた。今はハイムの羽を再生させる為にも、ピクシーの森へ行かないといけない。例えそれがバドームの国だろうと。
「困ったなー、バドームに占領されてるって事になると、こっそり森に行かないとなー・・・」
腕を組み、ハイムは考えながらそう言った。
確かにハイムの言ってる事が今一番的確な判断なのかもしれない。とはいえ、もう少し何か良い手はないのか?
皆が考えた、ずっと沈黙した。しかし誰もが声を出さない。そしてドクターが・・・
「あ、一応ハイム様は栄養剤と魔力補給薬を今から使用しますので、申し訳ありませんが、皆さん部屋から出て下さい。」
結局皆んな何も思いつかない。健太とフク、メルーは治療室を後にした。
「なあ健太、やっぱりピクシーの森に強行突破するべきなんだろうか・・・」
フクにしては珍しい質問が俺に飛んできた。
「おいおい、敵国とはいえ部隊長様がそんな悪どい事を勝手にやっちまうと、バドームの連中とやってる事は同じだ!って国民の信用を失ってしまうぜ?」
「だよな・・・」
健太達3人はそのまま歩いて上層部エリアを移動中、図書館の横を通っていた時、健太は何かを閃いた
「あ!ここだ!ここだよ!!フク、メルー!図書館だよ!!」
健太は図書館に入った。
「???健太?」
フクは意味はわかってないが、図書館に入る。
「あっ!待ってよ〜!」
と、メルーはもっと意味がわかってないだろうが、図書館に入った。
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