13章 ピクシーの森

第109話 楽観的なハイム

 ラマ国中央に建つ塔とその周りに建つ上層部エリア。その塔の入り口付近に様々な施設がある。中でも1番注目されるのが図書館だ。


 一度火事になっとはいえ、人気は衰えてはおらず、1日の利用者は1000人以上だそうだ。その他、ブランドウェア店等ラマ国1代目ラマ・フクロッシ時代に培った苦労を共に経験し、乗り越えてきたブティック店が並ぶ。


 その様々な施設の中に、ハイムがいる特別治療室がある。


 健太はハイムのいる治療室へ急いだ。治療室へ近づけば近づく程、足はいつの間にか速く歩いていた。


そして・・・健太は到着し、ハイムのいる治療室へ案内された?


コンコン、ガチャ


「失礼します。」


 中にはフクとメルー、そしてピクシーのドクターだろうか、ハイムの羽をいじっている。


「フク、ハイムは・・・」


「ああ・・・見ての通りだ。ちょっと厳しそうだ・・・」


 ハイムはうつ伏せで寝ている。その隣でメルーが飛ばずに椅子に座ってじっとハイムをみている。かなり目が腫れている。今まで泣いていたのであろう。あまりにも可哀想な姿に、声をかけ辛い。


 そして羽を見ていたピクシーのドクターが独り言の様に呟いた。


「う〜〜〜ん・・・再生が厳しいか・・・」

その呟きをフクは聞き逃さなかった。


「厳しいとは何だ!それを何とかするのが治療隊、お前達の仕事じゃないのか!」


 珍しくフクが声を荒上げた。それもそうだろう、今までハイムとの付き合いは長いだろうし、ハイムとの連携も抜群だ!本当は健太自身も似た様な事をあのドクターに言ってやろうと思ったが、フクが言ってくれたので健太は何も言わなかった。


「ですがフク隊長、羽に1番大事な部分の結節がちぎれて無いとなると、どうしようもないんですよ。私もピクシーですが、多少の羽の怪我は自然と再生されますが、再生される源の部分である結節が無いとなると再生はおそらく・・・」


「・・・そうか・・・怒鳴って悪かった・・・」


 それから暫くは沈黙が続いた、フクは何か言いたそうだったが、グッと堪えた。そしてハイムが重傷だという事を改めて実感した為か、メルーが再び声を出さず泣き始めた。


 健太はそんなメルーやハイムの辛そうな顔を見るのも胃が痛い。健太もドクターに聞いてみる事にした。


「なあドクター、ハイムの羽が治る方法はないのか?」


「・・・君はさっき私の話を聞いていたのかな?ピクシーの羽にある結節が無い限り、再生は不可能だ。」


 同じ事を2度言われ、2回も空気を重たくしてしまった。


(すまん、フク、メルー・・・)


と、そこに聞いた事ある声が聞こえる。


「・・太・・・健太」


「・・・え!」


「健太、俺だ、ハイムだ」


「あ・・・」


 ハイムが目を覚ました、あの時、ボ=ギールの匕首を貰ってからやっと目を覚ましたのだ。突然の目覚めにフクは感情高まったのか、部屋を飛び出した。又、メルーは声を出して号泣した。


「ハイム、気分はどうだ?」


「気分?いつも通りだけど?なあ、健太、一つ質問していいか?」


「ああ、何でも言ってくれ!」


「治療室にいるって事は俺が重傷なのか?フクは何で泣きそうな顔して部屋から出て行った?なんでメルーちゃんがここで大泣きしている?」


 ん?ハイムの奴もしかして自分がまだ重傷だと、気付いてないのか?


「なあハイム、お前昨日の事どこまで覚えてる?」


「ん〜〜〜、たしかエルフのバカタレが匕首ひしゅ(飛びナイフ)を投げてきて・・・あ!!そこから覚えてない・・・

 あ、そうそう、メルーちゃん!ダメじゃないか!戦場なんかに1人で来るなんて!」


???意外とハイムの元気の良さにドクターも健太も、何故ハイムはこんなに普通なんだと思い、2人で顔を合わせたり首を傾げたりしてしまう。


「なんかいっぱい寝ちゃったみたいだから喉が渇いた、お水でも貰ってこよっと。」


ハイムは立ち上がり飛んで移動しようとした・・・しかし上手く飛ぶ事が出来ず、コントロールを失い壁に飛びぶつかってしまった。


ダン!!


「っ痛ぅ、何だ?」


 ハイムは不思議そうに自分の身体を見渡した。しかし何処にも異常が無さそう・・・と最初は思ったのだろう。左後ろを振り向いた時、自分の羽の異常に気がついた。


「あら?ない!羽がない!!なんでだ?」


ハイムはあまり驚いていなかった。ただ、なんで羽を失ってしまったのかを腕を組んで考え始めた。


「うわぁぁああああああぁん!!ハイム様〜、ごめんなさい!ごめんなさい!あたしが・・あたしが・・・」


 号泣のメルーがハイムを後ろから抱きつき、そして泣いた。しかしハイムはまだ考えている。


「ん〜〜〜、結節までやられてる・・・まっいっか!ドンマイドンマイ!」


と、楽観的な発言をしていた。



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