第108話 一つ眼の幻獣

 なんと!エルマとフクの間に、いつの間にか入り込んで語ったピクシーがいた。カイトだ。


(コ・・・コイツいつの間に・・・)フクは驚いた、まさか気配を消してこんな近くにまで接近された屈辱感を味わってしまうとは、思ってもなかっただろう。


「はじめまして、私はピカトーレン外交官のエルマ。紅いピクシーで尚且つ紅と蒼の光粒子を放つ・・・そうか、あなたジョーカーね。」


「そうだよ?今日は本当は、光属性を使う者を殺しにボ=ギールが来たと思うんだが、まさかこの人間だったとはな。ちょっと誤算だった。」


 フクは感じた。おそらく図書館を焼き払った犯人はこのピクシーだと。


「俺の名前はカイト、これでも第3部隊隊長だ。今はピクシー5000人率いているんだけど、今回は退却する。いつかその小僧をバドームの軍人にする為に今は生かしておく事にする。また会おう。」


「待ちなさい!あなた、カイトと言ったわね。健太を軍人にって、もしかしてスパイにさせるつもり?」


エルマがカイトに訪ねると、カイトの返事は、


「アッハハハハハ、スパイなんかだと勿体無い、連隊長補佐官が理想かな。

まぁ、そんな事なんかはどうでもいい!さらばだ!」


 カイトはもう振り向く事なく飛び去りっていった。フクとエルマはカイトとピクシー軍をただ退却していく姿を黙って見ていた。





 次の日の朝、健太は目を覚ました。


「ハッ!ここは!!」


「やっと目覚めたようじゃの」


「あっ!じじい、あら!ここは研究所」


「後でゆっくり話をしてやる。起きたなら飯を食べてこい、イルグルが作っておる。」


「ああ・・・」


 健太は食事をしながら大丈夫なのか?ボ=ギールは?メルーは?ハイムは?等少しずつ昨日の事を思い出していくが、やはりハイムが倒れたところからの記憶がない様だ。


「ご馳走様!」


「あら?健太君、もう食べないのですか?」


「ああ、もう十分だ、ありんこありんこ!」


(やはり思い出せない、メルーが邪魔しに来てハイムがメルーをカバってそれから・・・ハッ!!ハイム!!)


「じじい!じじい!!」


「なんじゃ!大声でじじいって!」


「なあ、じじい、ハイムは、ハイムは何処にいるんだ?」


 そうだ、ハイムは羽をやられて・・・俺のせいだ!


「ハイム?あの上層部国王補佐官様の事じゃな・・・あの方は今は上層部の特別治療室と思われる。」


 健太はそれを聞くなり上層部に行こうとするが・・・「待てい!健太!」


「なんだよ!俺は急いでるんだよ!!」


 つい、イラッとしてしまい、じじいに怒鳴ってしまった。


「すまねぇ・・・じじい」


「健太!お主おそらく召喚魔法を呼び出そうとしたな?」


「召喚魔法?」


「お主が呼び起こしたのは、ワシですらわからぬ一つ眼光幻獣、初めて見たぞい。とはいえ怒らせるとバピラ3ヵ国全てを飲み込む究極の召喚獣じゃ。ワシも噂でしか聞いた事はなかったが、まさか本当に存在する召喚獣とはのう・・・」


 シエルが言っている一つ眼幻獣は、健太には全く覚えがない。何か国民に迷惑な事をしたのだろうか?と心配になる健太であった。


「健太よ、安心せい。幸い幻獣機嫌は良かった様での、バドームのボ=ギールのみ葬っただけと聞く。しかしあの魔法はお主にはまだ早い!召喚獣魔法は幻獣との契約が必要なのじゃ」


「契約?すみませーん一つ眼さん、ボクと契約してくださいな。そうしたらボクも一つ眼さんも強くなれるよ?

 みたいな事をするのか?」


「・・・まぁ、ある程度正解じゃ、しかしそれは図書館で見た古書に書いてあっただけの伝説の話。伝説が事実ならば、契約は必要となるじゃろうのう。そしてそんな凄い魔法をこのバピラ3ヵ国で使う物はおそらく・・・健太、お主だけじゃ!」


(!!俺だけ・・・か、じじいはおそらく俺に警告をしているんだろう。そういう恐ろしい魔法を使うと、国民が俺を見るのに恐怖を覚える・・・って事をじじいは言いたいのだろうって事がなんとなく分かる。)


「じじい、分かってるさ、あの魔法の事は実際覚えてないんだけど、忘れるよ。契約しない限り呼ばないよ。だから安心してくれ!」


「・・・うむ、身を守る時や命に関わる時以外は考えるでないぞよ!?」


全て言いたい事を伝えたシエルは安心した顔つきに戻った。それを見た俺も心のモヤモヤが少しだけ取れた気がする。


 やはり自分の魔法コントロールも必要かもしれないが、今はやはりハイムの事が心配だ。心のモヤモヤが消えないのは、ハイムの安否確認をしていないからだろう。


「健太よ、行ってこい!」


「え?」


「国王補佐官様が心配なのであろう?」


「・・・ああ、行ってくる。」





第13章 ピクシーの森へつづく

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