第107話 ボ=ギールの最期
どれくらい仰向けで寝ただろう、健太が援軍を連れて来てくれた安心感だろうか・・・思わず疲れがドッと出てしまった。今の戦況はどんな感じなんだろう?
フクも近くで横になっていた筈だが・・・
「ハイム、起きろ!大変だ!あれを見ろ、ラマ国民のピクシーじゃないか?」
「何!!むむ!!あれはメルーちゃん!何故ここに!」
「ハイム、知り合いか?」
「健太がいた研究所の人だ!いかん、せめてラマ国内に連れ戻さなくては!」
ハイムは飛び出し、健太とメルーのいる戦場へ移動する。
★
「あたしはそんな残虐な事をさせる為に魔法の練習を付き合ったわけじゃない!健太!もう少し考えて戦いなさい!」
「な、なんだよ!今までのコイツの悪事を知らないのか?コイツは死刑で良いくらい酷い奴なんだ!邪魔をするな!」
「・・・敵でも味方でも家族はいるのよ・・・だから・・・お願い・・・」
(な、なんだ?メルーの奴いつものオラオラモードじゃない。あの嘘泣きメルーが本当に泣きそうじゃないか・・・)
その意外な素振りを見せたメルーに気を取られたのが、最悪な結果を招いてしまった。
「甘い!!甘いんだよ!!ラマ国民は!!俺は家族なんて捨てたわ!!死ねい!」
シュシュ!!
ボ=ギールは負傷した腕とはいえ、何かを胸から取り出し、その場に落とす・・・いや、蹴り投げた、
「メルーちゃん!危ない!!」
横から矢の様に素早く動く物体、よく見るとハイムだ。ハイムはメルーを背後から抱き抱えそのまま匕首を避けた・・・
かに見えたが・・・
ハイムとメルーはそのまま横流れに倒れた。
ズザーーーーーー!!
「キャッ、ハイム様すみません?え?ハ・・イム・・・様?」
ハイムが動かない、何か嫌な予感がする。
「ハイム!大丈夫か!」
健太はハイムに近づいた。
「・・・ハイム・・・」
ハイムに意識はなかった。疲れ果てた中で思いっきり力を振り絞り、メルーを助けたのだろう。ハイムの体は無事だったが、ハイムの右側上の羽は匕首により切り刻まれ、羽を失っていたのだ。
「キャアアアアアアアア!!ハイム様!ハイム様!ハイム様〜!うわぁぁぁあああああああん!ハイム様〜〜」
メルーは泣きじゃくっている。ハイムの意識は戻らない。リサもエルマもピカトーレンの援軍全員が、ボ=ギールの
しかし、健太は・・・プツン
「ククククク、希望が・・・生き残る希望が見えて来たぞ!ラマの国王補佐官のハイムじゃないか!コイツを討ち取った事はきっとアル=バード様もお喜びになる。しかもカイトにはこの女ピクシーのお土産付き!」
ボ=ギールがハイムの羽を仕留め、喜んでいる最中、辺りが白く明るくなった。
「ん?なんだ?辺りが明るいぞ?」
ボ=ギールは空を見上げると直ぐ様腰を抜かした。
「ななななな、なんじゃありゃ〜〜!!眼、天に眼が!」
空全体曇っていたが空の中央だけ明るい何かが見える。
後々で駆けつけたフクがメルーとハイムに近づいた。
「さあ、私の肩に乗りなさい。一旦下がります。」
メルーはフクの言葉に泣きながらうなずき、フクはハイムとメルーを安全な場所まで移動し、フクは呟いた。
「あれはまさか光の幻獣!こ、ここ小僧!貴様もマキ=オースガと同じ別時代の幻獣使いなのか!」
1番驚いているのはボ=ギールだった。右へ左へどちらに移動しても天の眼はボ=ギールから眼を離さない。
健太は天を仰いだ状態で硬直していた。ボ=ギールの行動にプツリとキレたと言ったところであろう。
そして何やら独り言を呟く。
「我が心の底に眠る我が聖獣よ、力を借りる!」
「まっ待て!俺様が悪かった!だから、だから見逃してく・・・」
ボ=ギールが反省してない返答をしている中、健太は魔法を発動した。
「行け、シャイニングアイズ!!光のチリにしてしまえ!!」
天の眼は、ボ=ギールを狙い光を当てる。そしてそのまま苦む事なく光の、チリになってしまった。
そして光の魔法は今まで何もなかったかの様に姿が無く、夕暮れ時の景色に戻ってしまう。フクが気付いた時には健太はアルミナ平原に1人して倒れていた。
とはいえ、一瞬でボ=ギールを葬った。ここで遂にバドーム帝国の第4部隊は崩壊したという事になる。
ラマ国の勝利、ラマ国の防衛成功である。
バピラそれぞれの兵士はもう戦おうとはしない。バドームの生き残りの兵士数人は武器を捨ててバドームへと引き上げ始めた。
20000人いた兵士は結局15人にまで減少し、総大将のボ=ギールまでいなくなってしまったバドーム帝国ではあるが、氷山の一角である。
「健太!大丈夫か!?」
フクが倒れている健太に詰め寄る。しかし健太は眠っていた。
「・・・やれやれ、全くお前は大した奴だよ!!」
フクも気が抜けて健太のそばで腰を下ろした。そこに、エルマがやってくる。
「お久しぶりね、フク隊長。」
「エルマ・・・今回だけは礼を言っておこう。」
「!!・・・いや、礼を言うのはまだ早いかもね。何か邪悪な気配を感じるわ?」
フクは確かに何か感じた。一体何処から・・・答えは直ぐに分かった。アルミナ平原の1キロ奥に何かがいる。夕暮れ時からさらに薄暗くなってきた為、その何かが紅く染まっている。紅ピクシーの大軍だ。
「何かしら、あのピクシーの大軍は。」
「まさか、私が気づかなかったとは・・・」
フクとエルマは遠くのピクシー達を見ながら呟き、そして眺めていた。しかし・・・
「あれはね、俺の部下達なんだよ?」
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