第106話 本性暴露

 一方、フクやハイム達の周辺は静かになっていた。猫族達は手で顔を洗い、蒼ピクシー達は羽根を休め、トロル達は地面に腰を掛けて休んでいた。そう、ラマ国への侵入を阻止する事に成功したと言っても良いだろう。


 ハイムは辺りを見渡した。状況までの把握は出来なかったが、アルミナ平原敵陣前でボ=ギールと健太が接触しているのを確認した。


「健太!!」


思わず声が出たが届く程の声は出なかった。


「私達はここまでだ、後は健太に任せよう。」


 フクはハイムを見ながらそう言い、ハイムもまたその言葉に頷いた。





「ななな、なんなんだ!このクソガキ!なんで貴様なんぞに我らの野望を妨げる属性魔法を扱っているのだ!」


「ん?光属性の事か?俺にも良くわからないさ。ところでどうした?バピラ湖で会った時は随分と偉そうな態度だったが今はどうした!何やら怯えているようだが?」


「ぉおおお、お、俺様が、怯えているだと〜!?」


 2万の軍勢は、ほぼ0に等しい程までになっていた。ボ=ギールが怯えてしまうのも当然かもしれない。


「まぁ、いいや、俺だって今お前と戦って勝てる保証はないし、少し怖い。でも、ラマ国中央図書館に火をつけ、バピラ湖でマキちゃんをイジメて、ラマ国分裂行動を起こし、今はラマ国侵攻をしようとしている。そんな危険な奴を野放しには出来ない!ボ=ギール様よ、勝負だ!覚悟!」


 健太は再び聖スティックを持ち身構える。しかし、またまたボ=ギールは声を荒ら上げのである。


「待て待て待て!待つのだ!」


 ボ=ギールは声を荒あげると共に、両手を前に突き出して待ったをかける。その顔は必死に動き、声をかけているのを健太見ていた。


(まさか、ボ=ギールって・・・)


_______________________________

【確かバピラ湖でも・・・】


「クックック、我がバドーム国民に対し、逆らうつもりか?その努力だけは認めてやろう。」


「何が努力よ!あんたもねぇ、アタシの不意打ち攻撃を喰らいなさ・・・・」

「待て待て待て!!!」


_______________________________


(なんて事があったけど、今わかったぜ!)


「あっはっはっははははは!ボ=ギール様ってもしかして、1人で戦うのが怖いんじゃないのか?」


 以前、バピラ湖調査をした時、メルーが攻撃しようとした時に、ボ=ギールは待ったをかけた。そして今も待ったをかけた。その他の立ち振る舞いからして、健太はおそらくボ=ギールは弱い存在なのかもしれないと思った様だ。


「ななな、何を言ってやがる!きき貴様如き怖いわわけななかろう!」


 明らかに動揺していた。ニヤリとした健太は、ジワリジワリとボ=ギールに近づいて行く。しかしボ=ギールは離れていく為、距離は縮まらない。

そして更に、エルマが思い出したかの様に話し始めた。


「そういえばそうねぇ、ボ=ギール、あなたの弓技術は素晴らしいと思うけど、1vs1となると私は記憶にないわ?あなた、1人では何も出来ないエルフなのね?」


「グ・・・グヌヌヌヌヌヌヌヌ・・・」


 歯を食いしばり、なんとも言えない表情をしているボ=ギール。全てが図星であったと言っても良いであろう。


「バピラ湖で蹴られたお返しだ!」


ピーーーー!


 健太はレーザービームをボ=ギールにお見舞いした。ビームは右腕に命中する。


「ウギャーーーー!!」


右腕を負傷したボ=ギールが、もがき苦しむ。


そして僅かに生き残っているエルフ数名から響めきが聞こえる。矢を射る構えを止め、戦意を失っている様に見える。


「グググググ、や、やはり本当に光の魔法所持者だったのか!俺様が探していた光属性魔法の使い手は・・・」


「探し出して俺を殺そうとでも思ったんだろ?残念ながら、お前にそれはできない、よ!」


ピーーーー!ドドーーーン!!


次は左腕をレーザービームで貫通させる。


「ぎゃぁぁあああああああ!!」


「さあ、次は足だ、じわりじわりと・・・」


 その時だった。健太の後ろから何かがボ=ギールを包んだ。


「コレは・・・ヒール!!なぜボ=ギールに!」


ボ=ギールの腕が回復していく。俺は後ろを振り返ると・・・


「健太!あんた残虐すぎるわよ!なんでそんな酷い戦い方するのよ!!」


メルーだ、メルーが戦場に来ている。


「メルー、なんでここに?」


「健太が援軍を連れて来たって、研究所にいたら伝令の人が言いながら走ってた。だから様子を、見に来たけど・・・バカ!魔法で酷い事をしないでよ!!」


「何しに来たんだ!危ないから避難所に行ってるんだ!」

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